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【6/20公開】『はちどり』1994年韓国、小さくても、力強く羽ばたき続ける14才の少女・ウニの青春

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世界各国の映画祭で50冠を超える映画賞を受賞した話題作で、自身の少女時代の体験を基にしたキム・ボラ監督、初の長編映画。経済破綻直前、1994年の韓国。男尊女卑傾向が強く生きづらい世の中で、自分に無関心な家族や学校とうまく折り合うことができない中学2年の少女・ウニ。思春期特有の揺れる気持ちや、忘れられない出会いを繊細に描いた、普遍的な青春の物語。

2020年6月20日(土)ユーロスペースほか全国順次公開

1994年の韓国に生きる14歳の女の子

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今回、自身の少女時代の体験を基にした、というキム・ボラ監督は1981年生まれ。今話題の韓国小説『82年生まれ、キム・ジヨン』の主人公と近い世代ということになる。この世代の女性の立場が、今語られるべき時代なのだろう。本作も、同じ世代の女性から特別な共感を得ているという。

経済成長の中で必死に生きる大人たちは、男尊女卑の風潮も相まって、14歳の女の子から見れば冷たく理不尽に映る。大人に失望した思春期の少女は、自分の価値すらも見失いそうになりながら、健気に世界を見つめている。

ウニたちとは若干時代がズレるが、日本でもかつて圧倒的な男尊女卑の時代があった。親が昭和生まれであれば、ウニの親と同様、子どもを男女の違いで分け隔てながら育てていた家庭も多いだろう。つまり本作は日本にも通じる世界観だ。

90年代の韓国は、急激な発展を持続する中、1994年に漢江の大橋が崩れたり、翌年には百貨店が崩壊したりと、相次いで大事故が起こり、韓国市民に衝撃を与えた。

ちなみにその後、1997年には金融危機が起こり、韓国経済が破綻。韓国はまた新たな時代に突入していくことになる。1994年の韓国の人々は、激動の予兆を感じながらも前へ前へ進もうと生きていた時代だろう。

思春期の女の子が味わう、数々の理不尽な体験

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14才として生きる日々はかなりシンドい。もう少し子どもなら知らずにすんでいたことが向こうからドッと押し寄せてくる。時が経てばもう少し経験値が上がり、うまく立ち回ることができるかもしれない。賢い子ならわずかな経験を応用して、あらゆることにうまく対応してしまうかもしれない。

しかし14才、中学2年生。初めて体験することが重なり、どうにもできずに「理不尽な思いの詰め合わせ」状態になることもある。

信頼して心を許した相手から、驚くような仕打ちを受けることもある。自分の力ではどうしようもないことでねじ伏せられたりもする。しかし、そんな中でも、エネルギーは湧いてきて、好奇心は決して消えない。痛い目に合おうと、打ちのめされようと、前へ前へと突き進もうとする。それもまた14才なのだ。


小さく生命力にあふれた“はちどり”という存在

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「はちどり」は蜂と見間違えるほどに、小さな小さな鳥だ。高速で羽を羽ばたかせ、長時間飛び続けて遠くまで移動できる飛行能力をもち、ホバリング(空中で停止状態になる)も得意。小さく、愛らしくも、力強く羽ばたくエネルギッシュな「はちどり」は、希望や愛、生命力の象徴されている。

本作のタイトルが『はちどり』なのは、主人公の中学2年生・ウニの姿を重ねてのこと。力強く生き抜こうとするウニの姿はまさしく「はちどり」。このタイトルをチョイスする素晴らしいセンス……その輝きは、作品の随所から感じ取れるだろう。

作品ニュース

上映開始前から話題に!

さまざまなメディアからこぞって紹介されている本作。その評判の一部をユーロスペースにて展示中です。

 

 オススメしたい『はちどり』

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  • 「弱者ながら懸命に生きる」少女の視点で世の中を見つめられる
  • 90年代の韓国に生きる一般市民の生活がわかる
  • 理不尽なことばかりだった思春期のほろ苦さを振り返る
  • 生涯影響を受ける“運命の出会い”に思いを馳せる

思春期に女性であることや弱者として孤独を感じていたある人、あるいは今現在、孤独を感じている人に、特におすすめしたい作品。

『はちどり』作品情報

【あらすじ】
1994年、経済成長期の韓国・ソウル。中学2年のウニは、父・母・兄・姉と大きな集合住宅に暮らす。学校にはなじめず、同じ漢文塾で過ごす他校の女生徒・ジスクだけが親友で、彼女とばかりつるんでいる。

世間一般同様、男尊女卑の傾向がある父は、生徒会長も務める兄・デフンにばかり期待を寄せている。そんな兄は、親の目を盗んでは、すぐにウニに手をあげる。大人から関心を寄せられないウニは、兄に殴られても抵抗できず、家族の中でも孤独を募らせる。

そんな中、漢文塾に新しい風変わりな先生、ヨンジがやってくる。身の回りの人々や家族との摩擦で傷つくウニの話に耳を傾け、理解してくれるヨンジ先生に、ウニは少しずつ心を開いていくのだが……。

監督・脚本:キム・ボラ(初⻑編作品)
出演:パク・ジフ、キム・セビョク(『ひと夏のファンタジア』)、 イ・スンヨン、チョン・インギ(『チェイサー』『ノーボーイズ、ノークライ』)、パク・スヨン、キル・ヘヨン ほか

原題:벌새
配給:アニモプロデュース
<2018年/韓国=アメリカ/カラー/138 分/ビスタ/DCP/韓国語>
2020年6月20日(土)ユーロスペースほか全国順次公開

animoproduce.co.jp

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※公開日は4/25から変更されました

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(本ページの情報は2020年6月時点のものです。最新の配信状況は U-NEXT サイトにてご確認ください。)

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