長年、謎に包まれていた「自閉症」という発達障害。しかしある日本人の少年によって執筆された『自閉症の僕が跳びはねる理由』という1冊の本が、自閉症の世界に革命を起こした。この本は、自閉症の人の内面に何が起こっているのか、彼らが何に悩み、どのような体験をしているのかを、初めて明確に伝えてくれたのだ。
本作は、自ら自閉症を抱えた1992年生まれの東田直樹が13歳で書き上げた原作を元にしたドキュメンタリー。自閉症の世界を再現した、見事な体験型映像もあり、大きな驚きに満ちた作品だ。
2021年4月2日(金)角川シネマ有楽町、新宿ピカデリーほか全国順次公開
自閉症とはどんなもの?
「自閉症」とは、生まれつき中枢神経機能に障害があると考えられている発達障害の1つ。多くの場合、自閉症の二大特徴と言われる「対人関係が難しく集団に馴染めない」「強いこだわりがあって変化を嫌う」という傾向が現れる。
症状の程度により、日常生活が不自由になったり、本人に苦しみがあったりする場合に、医療や福祉のサポートを必要とする「障害」であると考えられている。
世界中に存在する自閉症は、さまざまな謎を孕んでいた。口頭での会話が成立しない人も多く、コミュニケーションをとるのが難しいから、親や家族は困惑してしまう。
また、何かのきっかけで症状が強く現れた場合、大声で叫び続けたり、パニックで暴れる発作を起こすこともある。そんなとき、どう接したりどう対応したりすればいいのかわからず、周りの人は悩んでしまうのだ。
13歳の東田直樹が「自閉症」の世界にもたらした革命
「自閉症」は長年、謎に包まれていた。しかし、東田直樹著『自閉症の僕が跳びはねる理由』という1冊の本によって自閉症に関わるすべての人たちに革命が訪れる。1992年生まれの東田が13歳のときに執筆したこの本は、「どうして〜なの?」という自閉症の人への疑問に答える、Q&Aの形式で書かれている。
「どうして急に大声を出すの?」「どうして同じ言葉を繰り返すの?」といった、健常の人からの問いかけられるであろう事項に1つずつ明確に答え、自閉症の人たちの内面で何が起こっているのかを明らかにしている。
「どうして言葉が出てこないの?」という疑問には「人と話そうとすると僕の言葉は消えてしまう。口から出る言葉は本心とは違う」と説明する。何かに気をとられ言葉が出てこなくなる現象は、誰にだって経験があるだろう。それに似てはいないだろうか?
東田の著書が広まるまで「会話ができない自閉症の人たちは知性がない、感情がない」などと、大きく誤解されてきた。話し合いこと・伝えたいことが、その内面に溢れかえっているのに、それを伝える手段がなかったのは、自閉症の人たちにとって、どれほどのストレスであり恐怖だっただろう。
しかし、現在では、口頭で言葉を交わす代わりに、文字を記したボード(文字盤)を指差す方法で、会話を成立させることが一般的になってきたようだ。この方法には、集中力や努力が必要だというが、コミュニケーションの手段を得たことが、自閉症の人たちに大きな喜びをもたらせたことは想像に難くないだろう。
驚きに満ちた映像、発見の連続である本作
本作はドキュメンタリーだが、東田の著書の内容と価値を伝えるため、さまざまな工夫が凝らされている。
東田本人は、映画への出演を希望しなかったので、執筆時13歳だった東田をイメージさせる年頃の少年を登場させ、その少年が自閉症の内面へと観客を誘ってくれる。
また著書の中で、自閉症の感覚的な説明が、みずみずしい詩的な文面でも綴られているのだが、本作ではそれを丁寧に映像化されている。例えば「まず断片が飛び込んでくる、そのあと全体像が浮かんでくる」という一節を。あるいは、雨が降ってきたときに自閉症の人にはどうやってその情報が入っていくか。音・光・カメラワークで表現することで、観客が自閉症の世界をリアルに体感できるように作られている。
さらに、自閉症の登場人物たちが、唐突な言葉を発したり、なんの脈絡もなくパニックと起こしたりといった特徴的な行動を見せたとき、そこに一致する東田の「こんなとき、僕の中ではこんなことが起こっている」という説明を照らし合わせて引用している。すると、当事者の中で何が起こっているのかが、私たちにも無理なく理解できる。
作品を観ている間中、このような驚くべき体験が連続する。こうして作品を観進めていくうちに今まで「全く理解できない」と感じてきたような、顕著な症状のある自閉症の人たちに対しても、私たちとなんら代わりないという感覚が現れてくる。
さらに本作に登場する自閉症の人たちが、素晴らしい才能を持っていたり、友情を育んでいたり、優しさや豊かな感性に溢れていることも紹介している。
その一方で、いまだ偏見に晒されている自閉症の人と家族が、特に発展途上の地域に存在していて、その環境を打ち破る為に闘うべきだということも訴えている。だから、多くの人、多くの国でこの作品が体験されることを願いたい。あなたがもしこの作品で感動や驚きを体験できたら、周りの人にも観ることを勧めてみてはどうだろう。
作品ニュース
4月2日は自閉症啓発デー
本作公開は4月2日から。4月2日は「自閉症啓発デー」。
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— 映画『僕が跳びはねる理由』公式 (@bokutobi_movie) 2021年4月1日
🎊いよいよ明日🎊
㊗4/2(金)公開#僕が跳びはねる理由
📢掲載情報📢
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▶️本日4/1(木)付
✔️#産経新聞
✔️#東京新聞 (夕刊)
にドーン🎯と大きく、#東田直樹 さんのインタビューが掲載✨✨
いよいよ明日4/2 #自閉症啓発デー に合わせての公開です! pic.twitter.com/tuE54lB87P
オススメしたい『僕が跳びはねる理由』
- 東田直樹の著書の内容と価値がわかる
- 感動の中「自閉症はどんなものか」理解が深まる
- 自閉症の内面を表現した驚きの映像体験
- 発展途上国を含む、世界での自閉症の現状を知る
『僕が跳びはねる理由』作品情報
【ドキュメンタリー概要】
会話のできない自閉症という障害を抱える作家・東田直樹がわずか13 歳の時に執筆した作品『自閉症の僕が跳びはねる理由』(エスコアール、角川文庫、角川つばさ文庫)。今まで理解されにくかった自閉症者の内面の感情や思考、記憶を分かりやすい言葉で伝えた内容が大きな注目と感動を呼び、30か国以上で出版、現在117 万部を超える世界的ベストセラーとなった。この書籍をもとにドキュメンタリー映画化。
「普通とは?」「個性とは何か」という普遍的な疑問、「会話(=コミュニケーション)の大切さ」「多様性の重視」など…本作を通して、他者と分断されている今を生きる誰もが共感し、問いかけることができるような感動の“体感”ドキュメンタリー。
監督:ジェリー・ロスウェル
原作:東田直樹『自閉症の僕が跳びはねる理由』(エスコアール、角川文庫、角川つばさ文庫)
翻訳原作:『The Reason I Jump』(翻訳:デイヴィッド・ミッチェル、ケイコ・ヨシダ)
原題:The Reason I Jump
配給:KADOKAWA
<2020 年/イギリス/82 分/シネスコ/5.1ch>
字幕翻訳:高内朝子
字幕監修:山登敬之
2021年4月2日(金)角川シネマ有楽町、新宿ピカデリーほか全国順次公開
© 2020 The Reason I Jump Limited, Vulcan Productions, Inc., The British Film Institute
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