東京・ミニシアター生活

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台湾南部のろう学校で実際に起きた、性暴力・セクシャルハラスメント事件を題材に、ろう者である少年少女たちの、あまりに苦しく切ない青春を描いたヒューマンドラマ。本国では、教育者や政治家をはじめ多くの観客が事件の深刻さを問題視し、台北の週間興行収入1位を獲得。勢いはとどまることなく、第57回金馬奨で8部門ノミネート、チェン・イェンフェイの最優秀新人俳優賞など2部門を受賞した。台湾の話題作が日本上陸。

2022年1月14日（金）シネマート新宿ほか全国順次公開

ろう学校で起きた性暴力、その真実を明らかにする

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本作が長編初監督作となるコー・チェンニエンは、ろう学校という閉鎖された施設内で起こったこの性暴力事件について、綿密な調査を行った（しかし、あえて実際の加害者や被害者へのインタビューは行わなかったという）。特に「被害者を受けた生徒が、なぜ学校をやめなかったのか？」という疑問について深く調査し、作品に反映させている。

そして、事件を一人でも多くの観客に伝え、問題提起をするため映画化に踏み切った。この深刻な社会問題を投影する作品作りに挑戦したコー・チェンニエン監督を、敏腕プロデューサーのユー・ベイファ（『悪との距離』）、チュウ・ヨウニン（『君の心に刻んだ名前』）らがエグゼクティブ・プロデューサーとして支え、本作を完成させた。

また、監督やスタッフ想いに応えた年若い俳優たちが作り出す強力なキャラクターは、本作の核心と言えるだろう。陰惨な感情や体験を再現しながらも、奇跡のような美しい世界も垣間見せて、観客の心を打つ。

「健常者の作った社会」を前提に生きていく、ろう者たち

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手話や筆談という伝達ツールがあっても「健常者の作った社会」で、ろう者たちが自らの思いを健常者に完璧に伝える事は非常に難しい。ましてや子どもたちであれば、彼らの訴えは事あるごとに、健常者に黙殺されてしまうだろう。

本作では、性暴力を見て見ぬ振りをするろう学校の同級生たちにも、過去様々な体験があるという事情も明らかにされる。弱者を食い物にするような大人たちが、この世には存在する……そんな大人から傷を受け、理不尽さへの怒りを抱えた弱き立場の子どもたちは、怒りの矛先を自分よりさらに弱い者に向けてしまうこともある。

“純度”もまた凄まじい若者たち

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あまりにつらいストーリーの中に垣間見える、主人公たちのピュアな心。その“純度”もまた凄まじく、鬼気迫るものを感じる。まだ学生であるろう者の彼らは、行動範囲や生活圏も限られ、狭い世界で生きているので、逃げ場がない。精神的な純度が高いゆえに、理不尽な暴力を受けた我が身を抱え、ある者は憎しみを募らせ、ある者は自分自身を歪ませようとする……つくづく、本来決して起こってはならないことが、現実に起こっていたのだということを思い知らされる。

観終わった後に、1本の映画にこれだけの情報やエネルギーをよくぞ込めたものだと、その深さに驚く。問題の根深さをとことん伝える本作は、冒頭から観客を「ろうの世界」に引き込んでいく。観客は最後までスクリーンから目を離せなくなるだろう。

作品ニュース

本国で最優秀新人女優賞を受賞

映画『#無聲』本ビジュアルが解禁されました。

ビジュアルにもなっている、ベイベイ役の #チェン・イェンフェイさんは、本作品で第57回 #金馬奨の最優秀新人女優賞を受賞。
また、今年10月に行われた #台北映画祭でも、最優秀新人俳優賞を受賞されています。

2022年1月14日(金)～全国順次公開 pic.twitter.com/1h1Hbl9zkb
— 映画「無聲(むせい )The Silent Forest」 (@silentforest_jp) 2021年10月26日

オススメしたい『無聲 The Silent Forest』

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ろう学校で起きた現実の事件を映画化
社会的に弱い立場の子どもやろう者への共感を呼ぶ
若き俳優たちが創り出したキャラクターの魅力
人間の複雑な心理を繊細に描く

唯一、ろう学校の生徒に寄り添う大人、ワン先生を演じるリウ・グァンティンは、実際に教員だった経験があるという。つらい展開の中に、澄み切った輝きと、さらに濃い闇が見えてくる稀有な作品だ。

『無聲 The Silent Forest』作品情報

【あらすじ】
普通学校から台湾南部のろう学校に転校してきたチャン (リウ・ツーチュアン)。この学校の生徒たちは、皆が幸せそうに過ごしている。同級生のベイベイ（チェン・イェンフェイ）と他愛もない話ですぐに打ち解けたチャンは、新たな生活に期待を抱いていた。ある日チャンは、ベイベイがスクールバスで複数の男子生徒から性暴力を受けている現場に遭遇してしまう。ところが、その後もベイベイは、生徒たちと何事もなかったかのように遊んでいる。困惑し、みんなと離れて行動するチャン。

異変に気が付いたワン先生にチャンは真実を打ち明け、ベイベイを救ってほしいと嘆願する。当のベイベイは「友達を裏切りたくない」と頑なに話したがらなかったが、それは大人たちが変わらなければ、どうにもならないとわかっていたからだった……。