東京・ミニシアター生活

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【10/6公開】在日ミャンマー人家族を描く『僕の帰る場所』

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難民申請が下りず、日本で苦しい生活を送るミャンマー人家族。映画『僕の帰る場所』は、そんな実話をモデルに制作。俳優ではないミャンマー人を多数キャスティングし、まるでドキュメンタリー映画のような、独特の風合に仕上がっている。

 

何と言ってもタイトルの「僕」にあたると思われる、長男カウンを演じる少年の演技が素晴らしい。天才子役かと思ったら、今回が初めての演技だとか。少年目線で描かれる作品後半は、ミャンマーのエキゾチックな風景と相まって、特に心に焼きつく印象深いシーンがいっぱいだ。

日本での両親の苦悩を描く前半

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作品前半は、厳しい環境に置かれた父・母・2人の兄弟の一家の日本での生活が描かれる。一家をじっと見守るような目線で観ることになるだろう。

違法に働かざるを得ない父。公的機関に踏み込まれたトラウマを抱え、怯え続ける生活のストレスから、いつも心身の具合が良くない母。しかし、父親は日本に留まらなくてはならない。どうやら、政治的な主義主張ゆえ、ミャンマーから離れざるを得なかった背景があるようだ。

 

一方で息子たちは日本語を話し、日本の学校に通っていて、まったくミャンマーで暮らしたを経験したことがない。まるっきり日本人のように暮らしている。母は、息子2人を連れてミャンマーに戻ることを決意するのだが・・・。

後半は異郷のようなミャンマーへやってきた少年の葛藤

f:id:kappa7haruhi:20181002125826j:plain後半になると、舞台はミャンマーへと移る。

ミャンマーで暮らす人々の日常を垣間見ることができ、観客にとっては、旅気分が味わえて、わくわくしなくもない。しかし、多くの日本人にとって見慣れぬ異郷の風景であるわけだから、ずっと日本で暮らしてきた子どたちにも、ミャンマーは異郷に感じられてしまう。移民一世と二世ので起きる確執が、まだ幼い兄弟の身にも訪れる。

 

母は水を得た魚のように母国語で会話をしているけれど、子どもたちは日本語しかわからない。そして、日本人学校への入学も「現状で受け入れは難しい」と断られてしまう…。孤立した兄・カウンのフラストレーションは炸裂する。

そんな心がむき出しになった少年を演じるカウン君(本名=役名)。「うっせえ、ババア!」の悪態に潜む、その哀愁にグイっと心を掴まれる。

本作で主に注目を浴びているのは、兄のカウン君。しかしまた、弟のテッ君も、ラストシーンで、素晴らしいリアルな演技を見せている。

『僕の帰る場所』見どころポイント

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  • 「在日ミャンマー人の厳しい現実」という社会的テーマ
  • ドキュメンタリータッチのリアルな空気感
  • 無名なミャンマー人キャストの中に、突然登場する映画界の顔・津田寛治
  • 少年たちの心を打つ演技 
  • ミャンマーの風景・日常の味わい深さ

本作は、在日ミャンマー人の現状と、ミャンマーの文化に触れることができる稀有な作品。日本のみならず、現在世界が関心を寄せる「移民問題」を取り上げ、その過酷な生活を身近なものとして感じることができる。

 

「まるでドキュメンタリー」という感覚で観ていると、日本映画の顔ともいえる津田寛治さんが登場するので「おっと、劇映画なのだった!」と我に帰る感じも。

作品のモデルとなったミャンマー人家族にも出演オファーを行ったものの、本人たちの出演には至らなかったそう。

母ケイン、カウン・テッ役の兄弟は実の家族。そして父アイセ役は、普段は通訳を生業としている男性で、しっくり馴染んでいるものの、彼だけは実の家族ではない。本来は日本語も堪能ながら、役作りとして、あえて片言の日本語をしゃべっているとのこと。メインキャスト演技未経験とは言っても、今回が長編映画監督デビューという、藤元明緒監督は、さまざまな演出をこらしているようだ。

 

作品ニュース

豪華な初日舞台挨拶

10/6(土)公開初日の舞台挨拶には、メインキャストが集合! 俳優として他では活動していないミャンマー人キャストには、これを逃すと、なかなか会える機会はなさそうだ。

映画賞を受賞後、さらに注目度アップ

東京国際映画祭「アジアの未来部門」W受賞を始め、いくつかの映画賞を受賞。以来、アジアの話題作の⼀つとして、今、注⽬を浴びている作品になった。

  • 東京国際映画祭「アジアの未来」部門で「作品賞」&「 国際交流基金アジアセンター特別賞」
  • オランダ・シネマジア映画祭「最優秀俳優賞」(カウン役)
  • バンコクASEAN映画祭「審査員賞」

さらに9月には、文科省「特別選定作品」にも選出された。

おすすめしたい『僕の帰る場所』

ミャンマー人キャストは、全員演技未経験ながら、胸を打つ素晴らしい演技を見せている。中でもやはり注目すべきは、兄カウン。今まで世界で注目された名子役たちの演技と比べてもなんの遜色もなく、とても魅力的。

カウン目線になる後半では、子どもの頃の感覚を思い出すとともに、作品にグッと引きこまれてしまう。

10月6日公開の本作、ぜひ劇場でお楽しみください。

 『僕の帰る場所』作品情報

【あらすじ】東京の小さなアパートに住む、母のケインと幼い二人の兄弟、カウン(6歳)とテッ(3歳)。入国管理局に捕まった夫アイセに代わり、ケインは一人家庭を支えていた。日本で育ち、母国語を話せない子ども達に、ケインは慣れない日本語で一生懸命愛情を注ぐが、父に会えないストレスで兄弟はいつも喧嘩ばかり。ケインはこれからの生活に不安を抱き、ミャンマーに帰りたい想いを募らせてゆくが…。

 

監督・脚本・編集:藤元明緒
キャスト:カウン・ミャッ・トゥ、ケイン・ミャッ・トゥ、アイセ、テッ・ミャッ・ナイン、來河侑希、⿊宮ニイナ、津⽥寛治
プロデューサー:渡邉一孝 吉田文人
共同プロデューサー:キタガワユウキ
<2017 年/⽇本=ミャンマー/98 分/カラー/ステレオ/1:1.85/⽇本語・ミャンマー語/ドラマ/DCP>
2018年10月6日ポレポレ東中野ほか全国順次公開

©E.x.N K.K.

passage-of-life.com

 

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