東京・ミニシアター生活

主に都内のミニシアターで上映される新作映画の紹介をしています。

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【2/8公開】『ちいさな独裁者』敗戦直前のドイツで起きた恐怖の殺戮パワハラ騒動…軍服が若き脱走兵のすべてを変える

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偶然見つけたナチス将校の軍服と尊大な態度で周囲を欺き、恐怖政治をエスカレートさせていく若き脱走兵の、狂気の進撃を描く。実在の人物・事件に基づいた驚愕の物語。
「2017年サンセバスチャン国際映画祭」撮影賞受賞、「ドイツ映画賞2018」音響賞受賞・作品賞ほか4部門ノミネート。

壮絶な描写の中に、人間の残忍さ、愚かさ、弱さが浮かび上がり、1945年敗戦間近のドイツが舞台でありながら、現代の社会にも警鐘を鳴らす、優れた心理サスペンスだ。

2019年2月8日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町新宿武蔵野館YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次ロードショー

 
わずかな偶然が、雪だるま式に恐ろしい独裁者を作り上げる

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若き脱走兵・ヘロルトが逃げ惑うどころから始まる本作。殺されるかもしれないという恐怖、寒さと空腹、孤独。そんな中で偶然見つけた軍服は、当初彼が、寒さから逃れるツールに過ぎなかった。

ところが、泥だらけのヘロルトがナチス将校の軍服に着替えたところへ、偶然1人の上等兵が出くわしたとことから、新たな方向へ運命は転がりだす。ヘロルトのつじつま合わせの舌先三寸の言葉に、軍服の威力が魔法のように効いてしまうのだ。
ナチスの圧倒的な権力を知る者であるからこそ、そして初めに出会った上等兵が生真面目だったからこそ、心理的に軍服の威力は強く働きかけてくるのだろう。

権力に弱いという人間の心理は、ときとしてコメディにもなりえる。おそらく、ヘロルトが、初めて残虐行為に及ぶ瞬間までは、彼に好感を持つ観客も多いだろう。
しかし、バレたら死と隣り合わせである嘘をついているヘロルトが、初めて残虐行為に手を染めるまではあっという間だ。それをきっかけに、ヘロルトの行動は歯止めの効かぬ「権力の進撃」へと加速していくのだ。

人を欺き、自分すら欺くようになっていくヘロルトのテクニックが、悪魔的な才能に満ちていることは確かだが、やがて大きな事件となるこの惨劇は、ヘロルト1人によって起こされたわけではない。ヘロルト親衛隊をはじめ、それを支えた膨大な数の人々が存在する。権力者にすがる者、権力者を利用する者、権力者を崇める者。恐るべき独裁者は、多くの権力を取り巻く人々によって、形を保ち、育ち続けるのだ。

権力の象徴である”軍服”を身にまとう影響とは

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コスチューム、中でも軍服・制服は、一定の組織によりその人物の立場を明確化する。軍服や制服を身につけることによる影響の力は、自分にとっても他人にとっても大きい。本作でも、実際の事件でも、何より若き脱走兵・ヘロルトという若い男の中身を豹変させたのは、高官を表す丈の長い軍服や、仰々しい階級章の力だろう。

軍服や、立場を明確化するコスチュームを身につけることにより、人は中身がガラリと変わってしまうという。これはある”特殊な人”に限ったことではない。1971年に米国で行われた心理実験の「スタンフォード監獄実験」を思い起こす人もいるだろう。

「スタンフォード監獄実験」は、一般市民を看守役・囚人役に無作為に振り分けることから始めた心理学的実験で、それぞれの制服を着用し、実験開始の入り口に多少の演出を加えることで、看守役になった善良な一般市民が、みるみるうちに「処罰」の名のもと残虐行為に染まっていくという恐ろしい展開に。この実験は『es [エス]』(2002年日本公開/オリヴァー・ヒルシュビーゲル監督)として映画化されている。

危険すぎるこの実験は、わずか7日で中止となり、現在は禁止されているという。看守服と囚人服、これもまた大きな影響力があるコスチュームなのだろう。権威や立場を示すコスチュームは、ときとして人を狂わせるような威力を見せるのだ。

「罰のない残虐行為」の誘惑はいつの世にも存在する

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罰せられないことが分かっていれば、罪に手を染める可能性は誰にでもあると言われている。もちろん可能性、ということであり、いつなんどき、誰もが必ず犯罪に走るわけではないだろう。

しかし、死の危険を味わった直後や、今後の人生がまるで読めないときであればどうだろう。人が犯罪に手を染める可能性は、ぐっと高まるのではないか。本作における、戦時下で自国の敗戦が色濃いとき、混乱に乗じた暴力が横行される世相というのも、十分その可能性を高める要因になり得るだろう。

権力を手にした人間の、歯止めの効かない危うさは、いつの世にも存在する。もちろん今現在もどこかでその闇は、そこここで渦巻いていて、日々、人の生き死にに結びつくような信じられないパワハラ・いじめのニュースが耳に入ってくる。本作は、そんな現代の権力にまつわる問題を考えるきっかけにもなりうるだろう。

作品ニュース

マイケル・ムーア監督もコメント

過去の出来事では片付けられないテーマである本作は、時代を見つめ、鋭く切り込むマイケル・ムーア監督も注目の作品だ。

 
トークイベント付き試写開催

公開に先立ち、津田大介氏、藤えりか記者のトークイベント付き試写が開催予定されている。試写申込は、1月21日いっぱいまで受付。

 

オススメしたい『ちいさな独裁者』

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  • 実在の人物に基づいた物語
  • 迫力と緊張感ある戦時下の異様な空気を体感
  • 逃げ場なしの現場で戦ったキャスト&スタッフ
  • 現代に通じる「権力」についての気づき
  • 「主人公・ヘロルトとは何者か?」答えは観客に委ねられている

監督は徹底して歴史、心理学についてリサーチ。一方、セットや演技、映画としてのトーンは思い切って自由に演出をしたそうだ。しかし、軍服についてはその存在に重きを置いて、忠実に再現している。

悪夢のようなシーンを撮るにあたり、俳優も監督も、ショック状態に陥りながらの撮影になったという。心理的に衝撃を受ける濃厚な作品には見る側にも逃げ場はない。

権力の怪物になる前に立ち止まれ。 人間が正気を保ちながら、まっとうに機能している社会を生きていくためには、常に自戒が必要だと思い出させてくれる作品だ。

『ちいさな独裁者』作品情報

【あらすじ】
終戦間近の1945年4月。ドイツは敗戦色濃厚で、兵士の略奪も頻発し混乱していた。命からがら逃げまどっていた若き脱走兵・ヘロルトは、道端に打ち捨てられた車を見つける。そこにはナチス将校の軍服があった。
軍服を身につけて大尉を名乗り、架空の任務をでっち上げながら、出会った兵士を次々と服従させていくヘロルト。強大な”借り物の権力”の快楽に酔いしれ、傲慢な態度をエスカレートさせていき、やがて人間の生死にも無頓着になっていく……。

 

監督・脚本:ロベルト・シュヴェンケ(『RED/レッド』『きみがぼくを見つけた日』)
出演:マックス・フーバッヒャー、ミラン・ペシェル、フレデリック・ラウ ほか
原題:Der Hauptmann
英題:The Captain
配給:シンカ/アルバトロス・フィルム/STAR CHANNEL MOVIES
<2017年/ドイツ=フランス=ポーランド/ドイツ語/119分/カラー/シネマスコープ/5.1ch>
日本語字幕:吉川美奈子
提供:ニューセレクト/シンカ/東北新社

2019年2月8日(金)
ヒューマントラストシネマ有楽町新宿武蔵野館YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次ロードショー

© 2017 - Filmgalerie 451, Alfama Films, Opus Film

dokusaisha-movie.jp

 

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