東京・ミニシアター生活

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【3/9公開】『たちあがる女』アイスランドの自然と音楽を愛し、弓を片手に戦うミステリアスなヒロイン

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たっぷりな皮肉とユーモアに愛嬌を盛り込んだ作風で、アキ・カウリスマキやロイ・アンダーソンに続く北欧の才能として注目を浴びる、ベネディクト・エルリングソン監督。その最新作はコメディードラマであり、音楽と自然に彩られた、強さと優しさについての物語。音楽講師と活動家、2つの顔をもった魅力あふれる新たなヒロイン像が誕生。彼女はアイスランドから世界を救う!

2019年3月9日(土)YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開

 

土にまみれて弓を引く、ハットラの孤高の戦い

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アイスランドの自然を強く愛するため、環境を破壊する工場に対し、過激な戦いを挑み続けるコードネーム”山女”と呼ばれる謎の存在…それが地元合唱団の指導をしているヒロイン・ハットラの、決して知られてはならないもう1つの顔だ。

美しい風景を背景に、1人奮闘するハットラの戦いはヘビーでハード。泥にまみれ、川に突っ込み、荷物を背負って大自然の中をかけ抜ける姿は、戦場の兵士のよう。弓を絞りながら、固い意志が浮かぶ表情は、狩りの女神・アルテミスのようなタフな美しさもたたえている。

正体を知られぬように、ハットラは体力とともに頭脳も使う。その賢さと抜かりなさもかっこいい。そして大胆な作戦には、ときおりクスッと笑わせるようなユーモアのセンスも光っていて、私たちを楽しませてくれる。

ハットラの決心を彩る楽隊

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「音楽に満ちた作品」との評判も高い本作は、劇判が特徴的。演奏するブラスバンドの楽隊とウクライナ合唱隊が、実体化して映像の中に登場する。

劇伴ミュージシャンが劇中に登場、というと『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督・2014年公開)を思い出す人もいるだろう。

ドラマーが劇中に現れることで、現実と幻想が錯綜する主人公の状況を表した『バードマン』に対し、本作は、楽隊たちが戦うヒロイン・ハットラの前向きな決心や心情を表しているかよう。

ハットラが何かを成し遂げる背後で見守るように演奏していることもあれば、スッと音もなく楽隊が登場すると、何か大きなことが起こる前兆であったりもする。彼らが登場することで、何かしらワクワクさせてくれるのだ。

ハットラは愛と優しさに溢れた女性

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とびきり過激な行動で度肝を抜くハットラは、強くはあるが無骨な戦士ではなく、音楽が好きで、愛に満ちた女性。自然を愛する気持ちが強く、環境を守るために、もう1つの顔をもつようになったのだ。

そんなハットラには、夢があった。それは、養子を受け入れて母親になるということ。だが、なかなか養子縁組の申請は受け入れられずに、時が過ぎていた。そしてついに、その申請に許可が下り、養子を迎えられることになるとハットラは焦る。

活動家としての行動し続けることは、身を危険にさらすことになる。もし正体が公になれば逮捕は免れず、当然夢は破れることになる。

しかし、これからの子どもたちのためにも、自然を守らねば、という思いは本物。1人の女性にのしかかる重すぎる責任感…。本作は環境破壊、地球温暖化という現実への警鐘を、強く鳴らしている作品なのだ。

作品ニュース

ヒロインは双子の姉妹

本作のヒロイン・ハットラは、双子の姉妹がいるという設定。だから女優・ハルドラ・ゲイルハルズドッティルは、2つの顔もつハットラ役を演じながらも、さらに見た目も中身も正反対という姉アウサ役、もう1役を演じ分けるという大役を担っている。

 

劇中歌をアイスランド大使館で披露

本作の試写会がアイスランド大使館で行われた際、国立音楽大学出身の3人組ボーカル”あされん”が、劇中歌「Vorvisa」を見事な歌声で披露した。その動画が配信中だ。

 

オススメしたい『たちあがる女』

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  • アイスランドの自然の美しさ
  • 頭脳と体力を絞り出す”山女”の戦いっぷり
  • 母親になる夢と危険な責務にゆれるハットラの葛藤
  • 2つの顔+姉役を演じる分ける演技力
  • 画面に登場する劇伴奏者が奏でる音楽

脚本や演出、ストーリー性も素晴らしいが、なんといってもアイスランドの美しい自然があってこそ映える作品。風景の素晴らしさも、ぜひ堪能してほしい。

ハットラ役(さらに姉役も)は、演じ分けが必要で演技力を要する難役。だからこそか、ジョディ・フォスターが惚れ込み、自ら監督・主演でハリウッドでリメイクが決定しているそうだ。小柄なジョディ・フォスターは、また別のヒロイン像を生むだろう。

『たちあがる女』作品情報

【あらすじ】
風光明娼なアイスランドの田舎町で、謎の環境活動家”山女”として、地元のアルミニウム工場に対し、孤独な闘いを繰り広げている女性がいた。その正体は、自然と音楽を愛するセミプ口合唱団の指揮者である女性・ハットラ。”山女”は周囲に知られざる、もうーつの顔なのだった。そんな彼女の元に、養子申請受け入れの知らせが来る。長年の願いだった母親になるという夢のため、ハットラはアルミニウム工場との決着をつけるべく、最終決戦の準備に取り掛かる…。


 監督:ベネディクト・エルリングソン(『馬々と人間たち』)
出演:ハルドラ・ゲイルハルズドッティル、ヨハン・シグルズアルソン、ヨルンドゥル・ラグナルソン、マルガリータ・ヒルスカ、ビヨルン・トールズ、ヨン・グナール ほか
音楽:ダヴィズ・トール・ヨンソン
英題:Woman at war
配給:トランスフォーマー
<2018年/アイスランド・フランス・ウクライナ合作/101分/カラー/5.1ch>
日本語字幕:岩辺いずみ
後援:駐日アイスランド大使館

2019年アカデミー賞®アイスランド代表作品/2018年カンヌ国際映画祭 批評家週間 劇作家作曲家協会賞受賞/2018年 モントリオール・ニューシネマ映画祭 最優秀女優賞受賞/2018年 バリャドリッド国際映画祭 最優秀女優賞/2018年 ラックス賞 最優秀作品賞受賞/2018年 ハンブルク映画祭アートシネマ賞 最優秀作品賞受賞/2018年 ノルディック映画賞 受賞/2018年 セヴィル・ヨーロッパ映画賞 観客賞受賞


2019年3月9日(土)YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開
©2018-Slot Machine-Gulldrengurinn-Solar Media Entertainment-Ukrainian State Film Agency-Köggull Filmworks-Vintage Pictures

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