主演、監督とも女性という、女性が牽引するインドネシア西部劇が誕生。屈強な男たちを相手に、正義と”自分の明日”をかけて剣ナタを振るう、美しい未亡人マルリナの孤高の闘いを描く。すっきりと美しいインドネシアの島の大自然、手加減なしのバイオレンス、詩的で哀愁を帯びた映像が心に残る。異色作でありつつ、グッと魂を引き込まれる話題作。
2019年5月18日(土)渋谷ユーロスペースほか全国順次公開
暴力に抗い、男尊女卑の社会にも挑む、未亡人のヒロイン
夫と子を亡くした美しい女性マルリナ。それがこの僻村の風習なのだろう、ミイラ化した夫とひっそり暮らしていた。そんな中、マルクスという男がやってくる。突然バイクで乗り付け「お前の財産を全部いただく」と宣言してくる。女一人住まいであることにつけ込まれたのだろう…こうして理不尽な仕打ちが、マルリナにのしかかる。
やがてマルクスの仲間である男たちがゾロゾロと集まってきて、いよいよ家を乗っ取られてしまい、男たちに「料理を作れ」とまで命じられるマルリナ。しかしそれが反撃のチャンスだった。暴行を受けながらも必死に策を立て、マルリナはたった一人で強盗団の男たちを倒し、ついに首領の首を刎ねてしまうのだ。
ほとんど取り乱すことなく、静かな怒りをたぎらせ、ここぞというところで大胆に行動するマルリナは、まさにマカロニウエスタンのヒーローのよう。端正な顔立ち、クールな表情に惹きつけられる。
演じるマーシャ・ティモシーは本作の監督・
インドネシアでも独特なスンバ島で撮影
マカロニ・ウエスタンならぬ、ナシゴレン・ウエスタンの雰囲気を醸し出すロケーションは、インドネシアでも独特な文化をもつ「スンバ島」という土地。草木が生い茂りつつ、大気とともに乾燥しているので、まるでアメリカ・テキサスの荒野みたいな印象を与える。
スンバ島の村では、なぜか人々が武器としてとしてサーベルを持ち歩いているそうだ。人々の暮らしは質素だが、その一方で、携帯電話という近代的なアイテムも使われているようで、作品にも出てくる。そのアンバランス感が面白い。
美しい自然に囲まれ、古い文化や信仰が守られているスンバ島には、インドネシア人でも一部の人だけが使っている、島独自の言語・スンバ語が存在する。その耳慣れないスンバ語で歌われる劇中歌の歌声が、異国の香りが立ちのぼるようで魅惑的だ。
また劇中で強盗団の男が手にして弄ぶ2弦の民族楽器の音色も、男が首を刎ねられたあとには哀愁を帯びて耳に響いてくる。
ミイラ、斬首、そして死んだはずの男…哀愁を帯びたダークな描写
「タランティーノを超えた新スタイル」とうたわれている本作だが、たしかに常におどろおどろしいものが画面に映っている。まずのっけから夫のミイラがあり、そのまま部屋に鎮座し続ける(ちなみに生身の人間が演じているそうだ)。
やがてマルリナは、自分の正当性を訴えるための旅に出るのだが、その旅路では、自分が刎ねた強盗団の首領の首を常に腕に抱えている。さらに血みどろの戦いはその後も続く。しかしこれらの描写に、なぜか露悪感はなく、静かな物悲しさが感じられる。
旅するマルリナを追いかけてくる幻想的な男の姿も現れる。それは幽霊ではなくマルリナの心の表れだ。自分のやったこと、決断したことは決して消えることなく、常に自分の後をついてくる…少し恐ろしいけれどそれが宿命というものなのだ。
作品ニュース
数量限定、初日プレゼント!
渋谷・ユーロスペースでは、数量限定の初日プレゼントがあるという。インドネシアのグッズ好きなら、ちょっとうれしくなる企画だ。
映画「マルリナの明日」
— インドネシア映画「マルリナの明日」 (@marlina_ashita) May 9, 2019
ユーロスペース @euro_space
初日5月18日(土)
数量限定プレゼント!
インドネシア共和国観光省さんから初日プレゼントをご提供いただきました!
数量限定になります。 pic.twitter.com/Cf3WSDdcMZ
オススメしたい『マルリナの明日』
- 暴力、社会、家庭…あらゆる理不尽と闘う女の姿
- インドネシア・スンバ島の美しい自然
- 民族楽器やスンバ語の歌…土着の文化
- 特色あるインドネシアの哀愁伴う映像美
- 西部劇を思わせるエンタテイメント性
「復讐」「荒野」「哀愁の音楽」とマカロニ・ウエスタンに必須な条件揃えつつ、インドネシアならではの要素をたっぷり入れ込んだ、ナシゴレン・ウエスタン。そして、男尊女卑と闘う、リアルな女性の物語でもある。
『マルリナの明日』作品情報
【あらすじ】
夫と子供を亡くし、荒野の一軒家に住む未亡人マルリナ。突然やってきた7人の強盗団は、マルリナから全てを奪おうとする。たった一人で反撃に出たマルリナは、強盗団の男たちを殺してしまうが、自らの正当性を訴えるため、刎ねた首を抱え警察へ向かう旅に出る。しかし同時に、復讐に燃えた強盗団の残党が、マルリナの後を追い始め…。
出演:マーシャ・ティモシー、デア・パネンドラ、エギ・フェドリー、ヨガ・プラタマ
予告編:イメージ・フォース
後援:インドネシア共和国大使館
<2017年/インドネシア・フランス・マレーシア・タイ共同作品/インドネシア語/95分>
字幕翻訳:松岡葉子
2019年5月18日(土)渋谷ユーロスペースほか全国順次公開
© 2017 CINESURYA - KANINGA PICTURES - SHASHA & CO PRODUCTION – ASTRO SHAW ALL RIGHTS RESERVED
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(本ページの情報は2019年2月時点のものです。最新の配信状況は U-NEXT サイトにてご確認ください。)