東京・ミニシアター生活

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【8/3公開】『メランコリック』深夜に殺人現場と化する銭湯でバイト…東大出身ニート青年の成長記

 

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近所の銭湯でバイトを始めたら、そこでは深夜、殺人が行われていた!…そんな奇妙な設定から、変幻自在な展開を見せる、クライム&青春ストーリー。笑いとサプライズいっぱいの愛すべきこの作品は、田中征爾監督の長編1作目にして東京国際映画祭で監督賞を受賞。同世代の3人による映画製作ユニット「One Goose(ワングース)」が放った、驚きのエンターテイメント作品!

2019年8月3日(土)アップリンク渋谷アップリンク吉祥寺イオンシネマ港北ニュータウンほか全国順次公開

突飛な設定ながら惹きつけられる、コメディタッチの脚本

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東大卒のほぼニート(フリーター)って、いるのだろうか?「…まあ、いるだろう」と本作を観ると納得させられる。ギラつく欲望も切迫した焦りもない、のんびり屋の主人公だ。

例えば、体質に合っていて勉強に熱中、割とゲーム感覚で楽しみつつ受験をし、東大に合格。引き続き勉学を楽しんでなんとなく卒業に至ったが、さあこの先どうする?…おそらく主人公・和彦にはそんな過去がありそうだ。

和彦の両親はクセのないのがクセ、というほどの善き夫婦。いかにも和彦のような、うだつが上がらないがおっとりした息子が育ちそうな家庭だ。和彦本人はやりたいことも特にないが、正直このままでいいとは思っていない。でも今ひとつ奮起できない。古くても実家もあるし、母の作るご飯は美味しいし…。

本作には大胆な設定がいくつもある。しかし、細部がリアルなので、つい納得させられてしまう。そして、その細部の作りの丁寧さで、さまざまな笑いを生んでいく見事な手腕。脚本の素晴らしさから作品にどんどん惹きつけられる。セリフのやりとも心地よく、キャラクターにはみな愛嬌があるのだ。

まさかの? 本格アクション…アクション映画好きにもおすすめ!

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「お風呂で死体処理が行われる」というシチュエーションは、あらゆるフィクションに登場する。リック・ベッソン監督の映画『ニキータ』や桐野夏生の小説『OUT』e.t.c.…。そして現実でも、風呂場で行われた殺人事件というのも、ときどき耳にする。確かに風呂場なら証拠を隠蔽しやすく、掃除も比較的楽にできて、理にかなっている。

しかし本作の「通常営業中の銭湯で、深夜には繰り返し殺人が行われる」という状況、閃きとしては面白いし、あらゆる作品へのオマージュを感じるのだが。それにしても超えるべき山が高すぎないか?……などとと考えながら観ていると、いきなり(演技としての)殺人の手際の良さに、思わず目を奪われる。

本作はなんと、アクションまで素晴らしい。しかも作品のウリといっていいほどのハイレベル。実は、本作の首謀者の1人(「One Goose」)で、キャストでもある磯崎義知が、タクティカル・アーツ(護身術道場)のディレクターという肩書をもっているのだ。作品の本格的アクションは、本物の武道からきているとわかれば、レベルの高さも納得だ。

作品の成長は、観客次第…未知数のポテンシャルに気分がアガる!

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不思議なもので、すでに撮影は終わっていても映画には伸び代がある。観客によって育てられる、という感じ。話題になり動員が増えていく作品は、客層を広げ、リピーターを生む。口コミで作品を観た人はリアルな知人と感想を語って、リピーターは新たな視点を発見しSNSで発信する。そんな中で作品は、生き物のように輝き始めることもある。

本作はワークショップから始まり爆発的にヒットした上田慎一郎監督『カメラを止めるな!』と比較されることも多いらしい。しかし、前評判が異様に高かった『カメ止め』に比べると本作は、まだ未知数という印象だ。

今回、主演兼プロデューサーをつとめた、30代の無名(失礼!)の俳優・皆川暢二の情熱から始まったという本作は、すでに東京国際映画祭・日本映画スプラッシュ部門で監督賞を受賞という快挙を遂げている。しかし本作がどこまで成長するのかは「観客の腕にかかっている」のかもしれない。

もちろん、大化けに値する、魅力に溢れた作品であることは間違いない。

作品ニュース

応援コメントが続々と

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宣伝も自ら行う「One Goose」

本作を機に、映画製作ユニット「One Goose(ワングース)」を立ち上げた、主演兼プロデューサーの皆川暢二、監督をつとめた田中征爾、俳優兼アクション等を担当した磯崎義知の3名。日々自ら、宣伝活動を展開中とのこと。渋谷や吉祥寺でその姿を見かけることもあるかもしれない。

 

オススメしたい『メランコリック』

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  • 細部までコメディセンスの光る会話
  • 本格アクションシーンが満載
  • 手に汗握るサスペンス的展開
  • それぞれのキャラクターが魅力的
  • ゆるやかな感動を与える主人公の成長

本作は、主人公・和彦の成長物語。のんびりやのうだつの上がらぬ男・和彦が、コメディ、サスペンス、アクションと様々なエンタメ要素をかいくぐり、最終的にどこに着地するのか、ワクワクしながら見守ることができる。

『メランコリック』作品情報

【あらすじ】
東大卒だが、うだつの上がらぬ日々を過ごしていた和彦。ある夜、母がさっさと風呂の栓を抜いてしまったため、珍しく近所の銭湯「松の湯」に出かけることに。するとたまたま高校時代の同級生・百合に再会。声をかけられて久しぶりに心が動く。そしてこの夜をきっかけに、和彦は松の湯でアルバイトを始めることにした。ところが松の湯は、深夜に「人を殺す場所」として貸し出しをしている危険な銭湯だった!そして、その事実を知った和彦は…。

監督・脚本・編集:田中征爾
出演:皆川暢二、磯崎義知、吉田芽吹、羽田真 、矢田政伸 、浜谷康幸、ステファニー・アリエン、大久保裕太、山下ケイジ、新海ひろ子、蒲池貴範 ほか

撮影:髙橋亮 助監督:蒲池貴範 録音:宋晋瑞、でまちさき、衛藤なな
特殊メイク:新田目珠里麻 TAディレクター:磯崎義知
キャスティング協力:EIJI LEON LEE チラシ撮影:タカハシアキラ

製作:OneGoose 製作補助:羽賀奈美、林彬、汐谷恭一
プロデューサー:皆川暢二

宣伝:近藤吉孝(One Goose)  チラシデザイン:五十嵐明菜
後援:VーNECK、松の湯 宣伝協力:アップリンク
配給:アップリンク、神宮前プロデュース、One Goose
<2018年/カラー/日本/DCP/シネスコ/114分>


2019年8月3日(土)アップリンク渋谷アップリンク吉祥寺イオンシネマ港北ニュータウンほか全国順次公開

 

www.uplink.co.jp

【受賞歴】
第31回 東京国際映画祭 日本映画 スプラッシュ部門 監督賞
第21回 ウディネファーイースト映画祭 新人監督作品賞
第19回 ニッポン・コネクション ニッポン・ヴィジョンズ観客賞

【出品歴】
上海国際映画祭 パノラマ部門
プチョン国際ファンタスティック映画祭 ワールドファンタスティック・ブルー部門
JAPAN CUTS~ジャパン・カッツ!

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