東京・ミニシアター生活

主に都内のミニシアターで上映される新作映画の紹介をしています。

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【9/6公開】『タロウのバカ』生と死の間を駆け抜けた、名も戸籍もない少年“タロウ”と仲間が辿り着く先は…

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ほのぼの感ある『日日是好日』『セトウツミ』から一転、激しい衝動と暴力が溢れかえる、大森立嗣監督の強烈な新作。名もなく、学校に行ったことがない少年“タロウ”と、その友人たち。アウトサイドを凝縮したような3人の、自由と生きづらさが混在する毎日を通して、社会の闇を浮かび上がらせる。監督が25年温め続けた、完全オリジナル脚本作品だ。菅田将暉、仲野太賀という2枚看板に、演技未経験のYOSHIを主人公に据えて、見事なバランスをみせる社会派青春映画。

2019年9月6日(金)より、テアトル新宿ほか全国ロードショー

「生産性」や「意味」を求められる現代で、はみ出した少年たち

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人間にも「生産性」を問い「生産性の低い者を排除しよう」と平気で言う輩もいる昨今。彼らにとって生産性が低い人間は「意味」がないのだろう。

人やモノは名前を持つのが当たり前のヨノナカで、近年では事象や現象、何から何まで、引っ張り出して名前をつけたがる。ラベルを貼ることで、意味を固定し、マウンティングし、安心したい。だから名前のないものは得体が知れず、恐怖の対象になる。

そこに登場する“名なしのタロウ”。赤ん坊ならいざ知らず、もはや立派な少年なのに、名前もない、学校に行ったこともない、戸籍もないのだからおそらく誕生日もないだろう。町の大人たちは、新興宗教に傾倒する母親とひっそり暮らす少年に、積極的に関わろうとはしない。

そんな名のない少年を“タロウ”と呼び、仲間として受け入れたのが、エージとスギオだ。エージはスポーツ推薦で高校進学したものの足の故障。教師や家族に罵られ、行き場をなくし、やがて半グレ集団と関わって事件を起こす。

エージに引きずられながらつるんでいる、何かと及び腰なスギオも、半グレリーダー・吉岡を襲撃するのに加担してしまう。

そして、エースとスギオとタロウは吉岡から奪った拳銃を共有する。拳銃の存在によって、3人は死を身近に感じながら、純度の高い狂気と興奮にかられ、破壊・破滅へ向かって突き進んで行く。

菅田・太賀を高校生に引き戻す、YOSHIという存在

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本作で注目したいのが、演技初体験だったタロウ役のYOSHIの存在だ。YOSHIはインスタグラムを駆使するインフルエンサー出身、本業はモデル。ファッションショーなどで活躍するティーエイジャーだ。そんな事前情報から、どんなオシャレな少年が登場するのかと思えば…驚くほどの野生児ではないか!

最新ブランドファッションを着こなすであろうその細身の体は、パンイチ姿で河原をうろつくと「欠食児童なんだな」と思わされてしまう。完成されていない滑舌やハスキーな声が、あまり社会との接触してこなかった少年だというリアルさを強調する。

一方で、(自覚のない)渇望・やり切れなさを両手いっぱい抱えているような、目と全身からみなぎるエネルギーが凄まじい。タロウの「好きって何?」というセリフが放たれたときの説得力たるや。果たしてタロウは天使なのか、怪物なのか?

ただし、物語を引っ張っているのは、主に菅田将暉と仲野太賀(「太賀」から今年6月に改名)、2人の力だ。正直、2人ともテレビドラマでは社会人役が当たっているし実年齢もそれなり。コメディならともかく、シリアスな演技で今また高校生役とはこれいかに…と多くの人が思うところはないだろうか。

しかし、さすが菅田将暉と仲野太賀は規格外。(おそらく外面もだが)内側からのアプローチで、10代の衝動や経験値の低さを、じっくりとスクリーンに滲ませてくる。さらに、YOSHIと絡む中で、したたかにYOSHIの若さをうまく自分に引き寄せてしまう。あるいは、YOSHIという存在が菅田・太賀を高校生に引き戻しているのかもしれないが…。

とにかく素晴らしい食い合わせの3人だ。また、スギオのマドンナである同級生・洋子役を演じる植田紗々も、無気力系女子を演じているのにも関わらず、なんとも言えない存在感がある。

若手俳優をここまで引き上げる大森監督の手腕に、これからも注目したくなる。

現実とファンタジーを行き来しながら、死と生を眺める

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冒頭から、ショッキングな場面から始まる。障がい者を食い物にするために半グレ集団が作った、劣悪な環境の障がい者施設で、事件が起きる。このシーンは、作品に理解を示したという、実際に障がいを持つキャストが多数出演していて、その画は生々しく強烈なインパクトを与える。

作品に登場する事件や設定は架空ではあるが、単なる空想ではなく、実際に起きた社会問題の延長として、大森監督が執筆したものだ。このような、ルポタージュ等で報じられている事件を連想させるエピソードが多数登場する。

一方で、現実離れしたファンタジー性を帯びた演出も用意されている。ダウン症のある若いカップル(エンタテイメントスクール・ラブジャンクス所属のパフォーマー)がお互いを思って言葉を交わし、オリジナルの歌を歌い、踊り、セリフに想いを込める。無邪気で清廉な天使を思わせるこの2人が登場すると、タロウも温かい感情に傾いていく。

また、大森監督の実父・麿赤兒率いる舞踏集団・大駱駝艦も登場。パレスチナ人の詩を引用し、音楽を担当する大友良英のシタールを使った幻想的な楽曲も加わって、謎めいた風景が挿入される。

暴力的で陰惨な事件や現実性だけではなく、ファンタジーとも行き来しながら、生と死を感じさせ、ひとすじの光を見出すことのできる作品なのだ。

作品ニュース

舞台挨拶チケット発売中

初日に舞台挨拶とティーチインが行われる。監督自身から話を聞けるチャンス。

 
パンフレットは超豪華な60P

キャストや大森監督のファンはぜひともゲットしたい、60ページの豪華なパンフレットが各劇場で販売される。

※9/6追記:各劇場でいいデザインのTシャツ、缶バッジを限定数で販売!(テアトル新宿ではパーカーも)

 

 

オススメしたい『タロウのバカ』

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  • 菅田・太賀・YOSHIのアンサンブル
  • 社会の闇を反映させたリアルな事件
  • ファンタジー性を感じる美しいシーン
  • 障がいをもつ出演者の起用

暴力的な描写や悲劇的なエピソードが多い中、作品のテーマ、そしてタロウが最終的にどこに向かうのかを見届けていただきたい。

『タロウのバカ』作品情報

【あらすじ】
思春期のまっただ中を生きる主人公の少年タロウには名前がない。彼は「名前がない奴はタロウだ」という理由でそう呼ばれているだけで、戸籍すらなく、一度も学校に通ったことがない。そんな“何者でもない”存在であるタロウには、エージ、スギオという高校生の仲間がいる。
偶然一丁の拳銃を手に入れたことをきっかけに、それまで目を背けていた過酷な現実に向き合うことを余儀なくされた彼らは、得体の知れない死の影に取り憑かれていく。やがて、誰にも愛されたことがなく、“好き”という言葉の意味さえ知らなかったタロウの内に未知なる感情が芽生え始め…。

監督・脚本・編集:大森立嗣 

出演:YOSHI、菅田将暉、仲野太賀、
奥野瑛太、豊田エリー、植田紗々、角谷藍子、門矢勇生、
荒巻全紀、水澤紳吾、池内万作、伊達諒、中島朋人、大谷麻衣、
水上竜士、小林千里、播田美保、葵揚、ACE、原沢侑高、伊藤佳範、村松卓也、
大駱駝艦/國村隼 ほか

音楽:大友良英
プロデューサー:近藤貴彦
撮影:辻智彦
配給:東京テアトル
<2019年/119分/カラー/アメリカンビスタ/5.1chデジタル>

2019年9月6日(金)より、テアトル新宿ほか全国ロードショー

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©2019「タロウのバカ」製作委員会

www.taro-baka.jp

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(本ページの情報は2019年9月時点のものです。最新の配信状況は U-NEXT サイトにてご確認ください。)

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