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【10/18公開】『楽園』吉田修一原作×瀬々敬久監督、幼女失踪事件と孤独を抱えて生きる人々のミステリー

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『悪人』『横道世之介』『さよなら渓谷』『怒り』と、映画化作品も多い小説家・吉田修一の原作を『64-ロクヨン-』『友罪』『菊とギロチン』の瀬々敬久監督により映画化。人間の心理を深くえぐるような新たなミステリー映画が完成した。吉田修一著『犯罪小説集』から短編2作を原作に、田舎町の幼女失踪事件に翻弄され続ける人々の孤独を描く。出演は、綾野剛、杉咲花、佐藤浩市をメインに、日本映画が誇るキャストが多数出演。濃く繊細、かつ大胆な人間模様を味わう129分。
2019年10月18日(金)
全国ロードショー

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作家・吉田修一本人が自ら「物語をコントロールできず、登場人物たちの感情に飲み込まれそうになった」と語っている5篇の短編からなる『犯罪小説集』。この作品の中から、2篇が本作の原作となっている。

原作が相当なエネルギーを放っているのだから、出発点からして持っている力が違う。しかもその原作を、日本映画が誇る豪華キャストが出演。さらに、自主上映作品から商業映画まで幅広く取り続けてきた瀬々敬久監督が映像化した。全体に満ちる空気から、じっくりと熱を込めて作り上げたことがうかがえる作品だ。

出来上がった映画『楽園』に吉田修一は「自分が思っていたものを超えた、書いた先にあるものに、気づかせてくれる」とコメント。この重厚さは劇場で味わうことをおすすめしたい。

<▼吉田修一コメント映像>

 

綾野剛、杉咲花、佐藤浩市、そして…柄本明、黒川あすか

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演じる人物へ、愛を持って深い眼差しを向ける出演者が揃っている。綾野剛、杉咲花、佐藤浩市と、それぞれ主演級で世代の違う俳優3人がメインキャスト。コメディ路線は封印し、真面目すぎる人物たちを(ゆえに、少し引いて見れば、滑稽に映る瞬間もある)繊細に演じている。

また、周りのキャストも濃厚。柄本明は心の凝り固まった田舎の老人を時折狂気的に演じ、黒川あすかは日本に帰化して田舎に住み着いた外国人女性を、説得力あるところまで作り込んでいる。

また、根岸季衣、村上虹郎らを含む村の住人役の演者は、田舎特有の「温かな気遣い」と「直球の粗野な言動」を交互に繰り出すようなリアルさを見せる。

一般的に「都会は怖い」という考えに対し「いや田舎の方が一段と怖い」と論じられることもあるが、煮しめられた人間関係の恐ろしさはじんわりと漂ってくる。そして、村の一大イベントである「祭り」の夜に、人々の念が渦を巻く。

そんな寂れた田舎で「そこでしか生きられないような人物」と「そこでは生きられないほどに繊細で真面目な人物」との間にある摩擦が痛々しく広がっていく。

上白石萌音が歌う、観客の心をすくい取るような主題歌

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本作主題歌は、映画音楽を多く手がける野田洋次郎(『君の名は。』『天気の子』音楽担当)作詞作曲による『一縷(いちる)』を、上白石萌音が歌う。

最後にこの曲が流れることで、鑑賞後の気持ちを委ねたくなるようなエンドロールが成り立つ。例えば、アニメ『かぐや姫の物語』(高畑勲監督/2013年)を観た後、エンドロールで二階堂和美が歌う『いのちの記憶』で慰められたように。割り切れない気持ちが癒されていくような、登場人物を抱きしめるような温もりがある。

本編が終わった後も、帰りを急がず、ぜひエンドロールまで含めて味わってほしい作品だ。

作品ニュース

綾野剛インタビュー記事

常に自分の関わる作品へ愛情を注ぐ俳優・綾野剛。雑誌『anan』にインタビューが掲載されている。

  

オススメしたい『楽園』

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  • 吉田修一著『犯罪小説集』が原作
  • 豪華キャストの情熱あふれる役作り
  • 瀬々敬久監督の深い洞察力
  • 人間の弱さに寄り添うような物語

人の弱さや闇があふれ出す展開に心が痛むが、一方で一筋の光を見出せるような物語。豪華俳優陣の圧倒的な熱演を、ぜひ劇場で。

『楽園』作品情報

【あらすじ】
田園に続く一本道が分かれるY字路で起きた、幼女失踪事件。何年経っても、被害者の家族と周辺住民に深い影を落としていた。この田舎に住む孤独な青年・豪士(たけし)と、失踪した少女の親友だった紡(つむぎ)は、それぞれの不遇に共感し歩み寄る。だが、再び同じY字路で少女が姿を消すと、人々の中で12年前の事件が蘇ってしまい事態は一変する。
一方、Y字路からほど近い集落で暮らす善次郎は、亡くした妻の忘れ形見である愛犬と穏やかな日々を過ごしていた。だが、ある行き違いから村八分にされ、孤立を深める。次第に善次郎の正気は失われ、思わぬ事件へと発展していく…。

監督・脚本:瀬々敬久
出演:綾野剛 / 杉咲花
   村上虹郎、片岡礼子、黒沢あすか、石橋静河、根岸季衣、柄本明、
   佐藤浩市 ほか

原作:
吉田修一「犯罪小説集」(KADOKAWA刊)
配給:KADOKAWA
<2019年/日本/129分/G>
2019年10月18日(金)全国ロードショー

rakuen-movie.jp

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©2019「楽園」製作委員会

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