東京・ミニシアター生活

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【4/3公開】『悲しみより、もっと悲しい物語』まるでミステリー。悲しい運命の隣にあった、もう1つの愛の物語

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 運命的に出会った若い2人、病気による命のカウントダウン。この世を去る前に、大切な人を誰かに託したい……ここまでで「どこかで聞いたようなストーリーじゃないか!」と侮って圏外作品と考えるなかれ。この作品には、ミステリーのような仕掛けが隠されている。

韓国の大ヒット映画を台湾でリメイク。斜に構えていても、いつの間にか2人の愛に引きずりこまれてしまう丁寧な演出が心憎い。ハンカチの用意もおすすめしたいラブロマンスだ。

2019年4月3日(金)より、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー!

 

ミステリーのような伏線回収

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「この映画は二度始まる」というキャッチフレーズを使ったのは、2017年に大ヒットした上田慎一郎監督によるインディーズ映画『カメラを止めるな』だ。

「二度始まる」とは、一度結末までたどり着いたかに見えたところで、もう一度冒頭に戻って、違う立場や角度から、あるいは真実がわかるように同じ時間をなぞっていく仕掛け。この「二度始まる系」は脚本を作り込まないと成立しない複雑な面白さと驚きがあって、ある意味ミステリーの一種とも言えるだろう。

もう一度観ないと「あれ、ひょっとしてあそこで伏線張ってあったかも」と気になって、ソワソワしてしまうこの“二度始まる”系の作品、例えば他にはパク・チャヌク監督『お嬢さん』や堤幸彦監督の『イニシエーションラブ』などがある。

ネタバレしないようこれ以上はお伝えできないが、本作も途中から「もう一つの物語」が顔を覗かせる。単純なメロドラマではないので、侮る事なかれ。仕掛けられた伏線の回収を楽しんでいる中で、一度めよりも、切なさがより大きな波でやってくる。 

濃いキャラクターのバイプレイヤーも魅力、コメディ要素も

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魅力的なキャラクターの数々にも、脚本の緻密さを感じることができる本作。キャストも 日本ではあまり馴染みがないかもしれないが、いずれも台湾では代表的な実力派揃いだ。

秘密を抱えた純粋な主人公K、そしてKの運命に翻弄されるヒロイン・クリーム。このメインストリームの2人に関わってくるサブキャラたちにも、見逃せない個性がある。少数精鋭、捨てキャラがおらず、登場したどのキャラクターにも作り手の愛情が注がれている。

野心ギラギラの女性カメラマンと裕福な歯科医師のカップルは、Kとクリームの運命に深く関わっていく中で、それぞれの内面を覗かせながら、成熟していく。

また、子猫コスプレをしたピンクヘアの新人歌手ボニー、そして彼女を取り巻く音楽業界の面々はコミカル部門担当。……なのだが、クレイジーにスベっているワガママ娘ボニーは、作詞家であるクリームと最初こそ反発しあうが、やがて意気投合。グッとくる女の友情も見せてくれる。

台湾ならでの色彩、ストーリーを彩る音楽

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台湾映画ならではなのか、どのシーンも色彩が美しい。ときにポップであり、ときに優しい色合いが広がる。衣装と背景や照明、また家具や小道具の色の組み合わせも繊細で、屋内でも屋外でも、絶妙な色彩のバランスを見せてくれる。

また、音楽も重要だ。本作は舞台を2人が出会った高校から音楽業界へと移していく。高校の同級生としてスタートしたKとクリームの関係は、友達以上恋人未満、まるで家族のような微妙なパートナーへと変わる。その後、ともに音楽業界に進み、Kは音楽プロデューサー、クリームは作詞家になるが、2人の作る楽曲は、そのまま作品を彩りつつ、ストーリーとしても重要なピースにはまっていく。心にしみる主題歌は、キャストでもある台湾の歌姫A-Linが引き継ぐ形で聴かせてくれる。

作品ニュース

特典付き前売り券発売中

本作は。ポストカード付きの前売り券を発売中。上映劇場、もしくは映画前売り券情報サイト「メイジャー」より購入できる。詳細は以下のリンクから・

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オススメしたい『悲しみより、もっと悲しい物語』

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  • ミステリーの味わいを楽しめる「もう1つの物語」
  • 堪える演技で観客を揺さぶる実力派キャスト
  • サブキャラクターまで行き届いたの人物の魅力
  • 美しい色彩の映像と音楽

タイトル通り、やはり悲しさと愛に泣かされる作品。タイトル負けしない号泣映画と言っても過言ではないだろう。ミステリー要素すら号泣に加担してくる。

また、台湾の実力派キャストたちの「堪えの演技」が効果的。スクリーンの人物の演技が、観客の感情に最も働きかけるのは、感情を爆発させたときではなく、その爆発を堪えているときなのである……。

『悲しみより、もっと悲しい物語』作品情報

【あらすじ】

若くして天涯孤独になった音楽プロデューサーのK(リウ・イーハオ/シー・チーティエン)と交通事故で家族を亡くした作詞家のクリーム(アイビー・チェン/ヤオ・アイニン)は、高校1年生、学校のグラウンドで運命的な出会いをした。身寄りのない2人は一緒に生活するようになり、互いに恋心を胸に秘めながらこの世でかけがえのないパートナーとして時を重ねていた。だが、自身の白血病が悪化し始めていたKは頑なにクリームに気持ちを伝えない。余命僅かだと知ったKは、自分がいなくなってもクリームが幸せに生きていけるよう別の男性に彼女を託すことにした。クリームの結婚を無事に見届け、目的は果たされたかに思えた。が、そこには思いがけないもう一つの“物語”があった……。

監督:ギャビン・リン
出演:リウ・イーハオ、アイビー・チェン、シー・チーティエン、ヤオ・アイニン、
   アニー・チェン、ブライアン・チャン、エマ・ウー、ダーチン、
   ハー・ハオチェン、A-Lin ほか

原題:比悲傷更悲傷的故事/英題:More than Blue
配給:ハーク
<2018年/台湾/中国語/106分/シネスコ/PG12>

2019年4月3日(金)より、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー!

hark3.com

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