東京・ミニシアター生活

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【7/3公開】『MOTHER マザー』長澤まさみ×大森立嗣 実在の事件に着想を得た、毒母と息子17年間の泥沼依存

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祖父母を殺害しキャッシュカードなど金品を奪ったという、2014年に起きたある少年事件から着想を得たヒューマンドラマ。監督・脚本は『タロウのバカ』『日々是好日』などの大森立嗣、主演は人気女優・長澤まさみ。刹那的に生きるシングルマザー、汚れ役ともいえる秋子を、深い眼差しで見つめ、躊躇なく体現している。またオーディションで選出されたという新人・奥平大兼が、ティーンエイジャーの息子役を繊細に演じ、ベテラン陣に劣らぬ存在感を発揮している。ほかに、阿部サダヲ、夏帆 皆川猿時、仲野太賀、木野花ら豪華なキャスティングもみどころ。

2020年7月3日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開

17歳の少年が祖父母を殺害 その根っこにあった母の存在

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2014年、埼玉県で起きた凄惨な少年事件。血の繋がった祖父母を17歳の少年が殺害した。動機は怨恨ではなく、生きるための生活費目当てだった。この事件は、ドキュメンタリーとして書籍化もされている(『誰もボク見ていない なぜ17歳の少年は、祖父母を殺害したのか』山寺香著)。

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一度もまともな学校生活を送れなかった少年だが、事件後、警察に話した内容からは、無軌道さや無鉄砲さはなく、十分な社会性すら感じられる。

新人・奥平大兼が演じる周平は、たまたま出会った児童相談所職員の手を借りてフリースクールで学ぼうとするなど、負の連鎖から抜け出す努力もするのだが、結局、母に絡め取られるように生き方を狭めていく。

さらに父違いの妹も誕生し、妹に肉親の愛情を抱き、甲斐甲斐しく世話もして「ただ生き延びること」の意味が重くなる。結局、周平はあらかじめ知られた末路をたどることになるのは、その優しさ故なのか?……と思わず嘆息させられる。

もし本作を繰り返し何度か観るとしたら「ここで人生を帰られたのではないか?」「あそこが最後のチャンスだったのか?」と、都度、検証を繰り返してしまう人も多いだろう。

「秋子に同情する余地はない」と言い切る長澤まさみの挑戦

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人気女優の長澤まさみが母親、しかも毒親を演じる。キャスティングの時点ですでに話題性は十分だ。長澤は、無責任で奔放な秋子役を演じるうえで「同情する余地がない方がいいと思った」と語り「彼女の思いは意識しないで演じた」という。

思いを理解し難い役柄を演じるとき、想像力でキャラクターをトコトン作りこむという方法もあるかもしれないが、本作の長澤はとっぴなキャラクター作りはしていない。自分の内部に秋子のカケラがないか探るようにアプローチし、それを手がかりに堅実に役を演じているように見える。

特に、相手を変え何度も登場する、秋子が視線を絡ませ男を誘い込むシーンは、相手役と丁寧に作りこんでいるようで、尺もたっぷり撮られており、心理的な駆け引きを読むのが好きな映画ファンには、重要なみどころとなるだろう。

また、子どもたちとともにホームレスに身を落とし、前向きに生きる気力が削がれたときの秋子の顔からは“売れっ子女優・長澤まさみ”がすっかり抜け落ち、秋子という存在が見事に色濃く浮かんでいるように見えた。


新人を中央に据え、ベテラン俳優を多数起用する大森作品

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大森立嗣監督は2019年公開『タロウのバカ』でも、主人公に俳優としては未知数のYOSHIを迎え、菅田将暉、仲野太賀という旬の若手の中央に据えた。YOSHIは「都会の野生児タロウ」として強い印象を残した。

そして今回も、オーディションで、無名の奥平大兼を抜擢。人気女優・長澤まさみを相手に、母に翻弄され、孤独と情の間でバランスを取りながら、社会の底辺を生きる17歳を浮つくことなく演じきった。

キャストは長澤以外にも、阿部サダヲ、夏帆 皆川猿時、仲野太賀、木野花など、キャリアが長い俳優が揃っている。しかし、そんな中でも埋没することなく、秋子の相棒のような息子を、しっかりした背骨をもって演じている。

母に従順すぎる周平は、様々なものを諦め、大人びており“平均的な17歳”ではない。しかし「ああ、こういう17歳、どこかで会ったことがある」と思わず自分の記憶を辿ってしまう。このドキュメンタリーのようなリアルさを味わえるのも、本作の魅力だ。それも、色のついていない新人俳優が主人公にキャスティングされているゆえかもしれない。

作品ニュース

リモート舞台挨拶、土曜日・初回上映後

15劇場で観られるリモート舞台挨拶あり。登壇予定は、長澤まさみ、阿部サダヲ、奥平大兼、大森立嗣監督。

 

 オススメしたい『MOTHER マザー』

  • 実際にあった少年事件がストーリーのベース
  • 無責任なシングルマザー役に取り組んだ長澤まさみ
  •  17歳の周平を演じる真っ白な新人・奥平大兼の存在感
  • 脇を固める豪華なベテランキャスト

『タロウのバカ』にも共通するが、陰惨な末路が準備されているにも関わらず、随所に子どもたちへの優しい眼差しを感じさせる大森監督の手腕が見事だ。

『MOTHER マザー』作品情報

【あらすじ】
息子・周平(郡司翔)を抱え、その日暮らしの生活を続けるシングルマザーの秋子(長澤まさみ)は、両親に金を借りに行っても、愛想を尽かされ追い返されてしまう怠惰な日々を送っていた。ある日ゲームセンターで出会ったホストの遼(阿部サダヲ)と意気投合、遼が秋子のアパートに入り浸るようになると、幼い周平を学校にも通わせず、何週間もアパートを空ける始末。やがて部屋の電気もガスも止められ、遊ぶ金がなくなると、以前から秋子に気があった市役所職員の宇治田(皆川猿時)を脅して金を手に入れようとする。しかし遼が誤って宇治田を刺し、一家はラブホテルを転々とする逃亡生活を余儀なくされる。やがて秋子は妊娠、遼にも捨てられホームレスとなって放浪。そんな生活の中で5年経ち、周平(奥平大兼)は16歳になる……。

監督・脚本:大森立嗣 脚本:港岳彦 

出演:長澤まさみ、阿部サダヲ、奥平大兼、夏帆 皆川猿時、仲野太賀、木野花、
郡司翔、浅田芭路、たかお鷹、土村芳、荒巻全紀、大西信満ほか

音楽:岩代太郎

配給:スターサンズ/KADOKAWA
<2020年/日本/126分/5.1ch/アメリカン・ビスタ/カラー/デジタル/PG12>
2020年7月3日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開

mother2020.jp

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© 2020「MOTHER」製作委員会

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(本ページの情報は2020年6月のものです。最新の配信状況は U-NEXT サイトにてご確認ください。)

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