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【12/18公開】『声優夫婦の甘くない生活』1990年、イスラエルにやってきた60代夫婦の軽妙な喜劇

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1990年鉄のカーテン崩壊を機に、ソ連からイスラエルへ移民したヴィクトルとラヤは、洋画吹き替えで活躍した声優夫婦。しかし移住先での第2の人生は厳しく、ロシア語声優の需要が全くナシ。2人はそれぞれ、なんとか声を活かした職を得るものの、それはとてつもなく裏街道の仕事だった……。オフビート感覚で楽しませてくれる、イスラエルから届いたビタースイートな大人の物語。

2020年12月18日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町新宿武蔵野館ほか全国順次公開

1990年、イスラエルに移住した60代夫婦の喜劇

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日本でイスラエル映画を観られる機会は、さほど多くない。本作の監督、エフゲニー・ルーマンはイスラエル国内で経験を積んだ若き才能。そしてヴィクトルとラヤの夫婦役もイスラエルで活躍している俳優だ。描かれる時代は“鉄のカーテン”が崩壊した1990年。監督にとっては子どもの頃の思い出に重なる時代だという。

主人公は、ロシア系ユダヤ人の60代夫婦。より良い生活を求め、ソ連からイスラエルに移住してくるところからストーリーは始まる。2人の職業は、数々の洋画スターの声を吹き替えをしてきた声優。映画愛が深くプライドも高い。しかし、理想的な仕事は皆無という現実が。生活のためになんとか職を得ようと、60代の夫と妻は、それぞれ奮闘する。

そして夫ヴィクトルは、違法な海賊映画に携わることになり、妻のラヤは「感じのいい声」を駆使し、思わぬ仕事に挑むことに……。悲劇的とも言える展開だが、映画はあくまでコメディタッチ。“オフビート”という言葉かハマる、苦笑いの連続だ。

声優の演技力で、ラヤは謎の女“マルガリータ”に

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「感じのいい声の女性」「高収入」という求人広告でラヤが面接に来た仕事内容はテレフォンセックスだった……最初は無理だと逃げ出すも、お金のためだと割り切って始めてみれば、ラヤは天職かと思わせる活躍を見せる。

“マルガリータ”と源氏名を決め、鋭い切り返しと七色の声色で、客を自分の作った世界観に誘い、見事に引きずり込んでしまう……そんなラヤを演じているマリア・ベルキンは実際に声優の仕事もしている女優で、この“声の演じっぷり”が実に見事。

ウブなバージン娘の声を切り替え、即座にやさぐれた主婦を演じてみせる。電話の相手とともに、観客であるこちらも思わず魅了されてしまうのだ。

フェリーニに捧げた愛はどこへ向かう?

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一方、夫のヴィクトルは、高齢者にそぐわない低収入の仕事に音をあげていたが、偶然から、声の職にありつく。それは、映画を盗んでロシア語の吹き替え版を作っている、海賊ビデオ屋の仕事だった。

フェデリコ・フェリーニの作品をはじめ、名作映画を深く愛しているはずのヴィクトルだったが、背に腹は変えられない。「それは違法よ」とラヤに非難するされるも、反省するどころか怪しげな仕事をしているラヤを逆に責めてしまう。

夫婦間に険悪な空気が流れるなか、とうとうスクリーンを盗撮しているところを警察に取り押さえられてしまうヴィクトル。だがそれを機に、思わぬチャンスを得ることになる。

転落する一方かと思いきや、ポッと幸運をつかむ軽妙な展開が楽しい。アイディアが詰まった脚本だが、事実に基づいた部分も多くあるそうだ。

移民のための海賊ビデオ店も、劇中に登場するフセインによるミサイル攻撃事件も、共同脚本のジヴ・ベルコヴィッチとエフゲニー・ルーマン監督の、幼少時代の思い出なのだという。

フェリーニ作品など古き良き映画への愛もたっぷりと注がれている。名作映画のノスタルジイに満ちてるのも、本作の魅力だ。

作品ニュース

監督が日本映画について語る

エフゲニー・ルーマン監督が日本映画について語る動画が、ツイッターの公式アカウントより投稿されている。

 


初日プレゼント

新宿武蔵野館、名古屋・伏見ミリオン座、福岡・KBCシネマの3館で、初日プレゼント「”甘くない”のど飴」が用意されているそうだ(数量限定)。

 

オススメしたい『声優夫婦の甘くない生活』

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  • 映画館で観る機会の少ない貴重なイスラエル映画
  • “鉄のカーテン崩壊”で変わりゆく1990年を描く
  • 魅力ある60代夫婦のキャラクター
  • 全編を通じて感じる映画愛と喜劇性

『声優夫婦の甘くない生活』作品情報

【あらすじ】
1990年、イスラエルへ移民したヴィクトルとラヤは、かつてソ連に届く、ハリウッドやヨーロッパ映画の吹き替えで活躍した声優夫婦。しかし、第2の人生の現実は厳しく、声優の需要がない新天地で生活の糧を得なければならない。ラヤは、夫に内緒で就いたテレフォンセックスの仕事で意外な才能を発揮。一方、ヴィクトルは、違法な海賊版レンタルビデオ店で再び声優の職を得る。ようやく軌道に乗り始めたかに見えた生活。しかし、妻の秘密が発覚したことをきっかけに、長年気付かないふりをしてきたお互いの「本当の声」が噴出し始めて……。

監督:エフゲニー・ルーマン
出演:ウラジミール・フリードマン、マリア・ベルキン、エヴェリン・ハゴエル、アレキサンダー・センドロビッチ、ナディア・コチェル、ヴィターリ・ヴォスコヴォイニコフ ほか

脚本:ジヴ・ベルコヴィッチ、エフゲニー・ルーマン
英題:Golden Voices

日本語字幕:石田泰子
配給:ロングライド

<2019年/イスラエル/ロシア語、ヘブライ語/88分/スコープ/カラー/5.1ch>


2020年12月18日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町新宿武蔵野館ほか全国順次公開

longride.jp

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