【2/11公開】『ファーストラヴ』ヒロインの傷みが殺人事件の謎を解き明かす……極上の心理サスペンス

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直木賞受賞作である島本理生の同タイトル小説を、堤幸彦監督・浅野妙子脚本で映画化。公認心理師のヒロイン・由紀に北川景子、殺人容疑をかけられ精神的に不安定な女子大生・環菜に芳根京子、由紀の義弟で弁護士の迦葉に中村倫也を配役。少女時代に受けた環菜の心の傷に迫ることで、由紀は自らの過去と向き合うことになっていく。弱者が抱える傷みを、繊細かつ衝撃的に描いた、心理サスペンス・ミステリー。

2021年2月11日（木・祝）全国ロードショー

丁寧に作られた心理サスペンス＆ミステリー

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丁寧に仕掛けられた設定そのものが楽しめる、秀逸な心理サスペンス&ミステリー。あっという間に、その見事な迷宮に引き込まれるだろう。

物語は謎の死亡事件から始まる。死んだのは著名な画家で、被害者の娘である女子大生がその容疑者だ。母親は娘をかばうことなく検察側で証言するという。孤立無援の容疑者は自暴自棄なのか、辻褄の合わない事を言ったり、反抗的な態度をとったり、精神的にも不安定だったりで、証言も揺らいでばかり。

北川景子演じる公認心理師のヒロインは「容疑者が自分と同じ目をしている」と感じ、容疑者に深く関わっていく。実はヒロイン自身にも、少女時代に暗い影を落とした出来事や、義弟（夫の弟）との間に、わだかまりを残す過去がある。

そんなヒロインと容疑者・環菜の真実が、時にリンクしながら、事件の背景が明らかにされていく。その複雑な繋がりと伏線が見事であり、深い哀しみが心を打つ。

タイトルが何をさして『ファーストラヴ』なのかは、人によって感じ方が違うだろう。様々な“ファーストラヴ”が潜んでいる。いずれにしても、苦みや切なさが沁みる“ファーストラヴ”ばかりだ。

堤監督が長回しを決めた俳優陣の演技

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マスコミの報道によれば「動機はそちらで見つけてください」と発言したという容疑者・環菜。由紀が接見してからも突然笑い出したり「私そんなこと言いましたっけ？」と煙に巻くような反応を示したり、悪意あるのかないのかもよくわからない。芳根京子演じる環菜は、まるでモンスターだ。

しかし、由紀は少しずつ環菜の心の内側に触れ、真実に近づいていく。それは偶然でも、心理学の知識を用いているからでもなく由紀が「自分と同じ目をしている」と感じているからこそできるのだ。

文学でこそ叶えられるであろうそんな由紀と環菜の精神的つながりを、脚本・演出の仕掛けに頼りでなく、俳優たちが自力で体現しているのが、本作の大きな魅力だ。北川景子と芳根京子のコンビネーションはあまりに繊細で素晴らしく、観ている者の心を掴む。

堤監督と言えば、撮影したフィルムを策略的に編集することでスタイリッシュな映像や緊張感を作ることで知られていて、本作でもその作風が生かされている。しかしその一方で、俳優を絶対的に信頼し、演技一本で見せるために「長回しでいく」と決めていたシーンが、今回、いくつもあったという。

由紀と環菜の接見シーンのほかにも、みせどころは多い。中村倫也演じる迦葉と由紀がかつてすれ違うことになったある出来事でも、2人の俳優の魂のこもったやりとりが観られる。さらに裁判のシーンも見逃せない。人物の心理が切り替わる瞬間を、本作では何度も目撃することができる。

出演者の誰もが作品に真摯に向かい合い、その魂を捧げているようで、どこを切り取っても曖昧なものは見られない。

視線を浴びる恐怖を引きずり出した島本小説

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ジロジロ見られたり、舐め回すように見られたり……そんな他者からの“暴力的な視線”を感じたことはあるだろうか。記憶にフタをしている人も多いかもしれないが、おそらく誰もが視線で攻撃された経験があるだろう。容姿に恵まれた人ならばなおのこと、日々不快な視線を向けられることも多いのではないだろうか。あるいは逆に、あなた自身が誰かに欲望やあざけりを含んだ視線を投げかけたことはないだろうか。

意図を含む視線というものは、相手に心理的な圧迫や恐怖与える一方で、それだけでは犯罪にはなり得ない。人を裁くには足りないが、人の心に大きなトラウマを残す。この「視線」という厄介なテーマを引っ張り出した原作者・島本理生は、物語を経てそれを見事に昇華させる。本作が「視線」の恐ろしさを扱ったことで、多くの人が心の傷を癒されるのではないだろうか。

作品ニュース

豪華登壇者の舞台挨拶

2/11、祝日の初日に舞台挨拶が決定。TOHOシネマズ六本木ヒルズの会場以外も、全国の上映劇場へ、同時生中継とのこと。詳細はこちらから。

* ◦ :　. 。
映画『#ファーストラヴ』
初日舞台挨拶＆同時生中継
　　　開催決定 ✨

🥀2/11[木・祝]
✧9:20の回(上映終了後)※全国生中継あり
✧12:35の回(上映前)

【登壇者(予定)】#北川景子さん #中村倫也さん #芳根京子さん #窪塚洋介さん #板尾創路さん #木村佳乃さん #堤幸彦監督
— 映画『ファーストラヴ』 (@firstlove2021) February 3, 2021

オススメしたい『ファーストラヴ』

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北川景子、芳根京子、中村倫也ら入魂の演技
原作本の心理サスペンス・ミステリーとしての面白さ
堤幸彦演出×浅野妙子脚本のテンポの良さ
観客も癒される救いある結末

『ファーストラヴ』作品情報

【あらすじ】

就職活動中の女子大生・聖山環菜（芳根京子）が、父・聖山那雄人（板尾創路）を包丁で刺殺するという衝撃的な事件が起こる。この事件を取材することになったのが、公認心理師として活躍する真壁由紀（北川景子）。優しい夫、真壁我聞（窪塚洋介）に多忙な日々を支えられ、やる気を見せていた由紀だが、環菜の担当弁護士が、義弟・庵野迦葉（中村倫也）だと知り、顔色が変わる。由紀と迦葉は、ある過去を共有する間柄だった。

面会した環菜は、感情の起伏が激しく、本心を全く見せなかった。困惑する由紀だったが、後日、なんとか環菜の心を開こうと「本当に人を好きになった経験は？」と質問すると、環菜は激しく取り乱した。迦葉と協力しながら環菜の身辺を調査する中で、衝撃的な事実が次々と浮かび上がってくる。そしてその度に、由紀は自らの少女時代と向かい合うことになっていく……。