東京・ミニシアター生活

主に都内のミニシアターで上映される新作映画の紹介をしています。

〔AD〕動画サイトランキング

【2/19公開】『藁にもすがる獣たち』大金の入ったボストンバッグが転がり続ける、ブラックな群像劇

f:id:kappa7haruhi:20210217010623j:plain

日本の作家・曽根圭介の犯罪小説を、韓国を代表する豪華キャストで映画化。息つく間もない見事なテンポで物語が転がる群像劇。ある者は運に見放され必要に迫られて、ある者は追い詰められ逃げ場を塞がれて、あるいは元来の欲深さゆえに……大金を目の前に獣と化していく人間たちを描く。金の詰まったボストンバッグが次から次へと持ち主を変えていくスピード感が、心地いい。躊躇なしのバイオレンス描写も見ものの、クライムサスペンス。

2021年2月19日ロードショー

多種多様な人生が交差する港町で

f:id:kappa7haruhi:20210218020222j:plain

G区分にはなっているが、ときにギョッとするバイオレンスシーンがはさまれる本作。アクションシーンも満載だ。

そんな激しさが映える、妖しいネオンの風景。加えて、生活感いっぱいの店や住居もあり、外国人や怪しい人物の出入りが激しい港もある。日本ならば横浜あたりだろうか。舞台は港町、多種多様な人生が交差するのにふさわしい空気が匂う。

ここで交わるのは、年頃の子供を抱え生活に困窮する庶民、投資に失敗して壊れ切った夫婦、ゴリゴリの半グレに、後ろ暗さを抱えた公務員、水商売の女、外国から来た男……あらゆる場所・立場にいた者たちがみな地を這っている。そしてそこから這い上がるためなら、犯罪に手を染めても、と奮闘する。そんな獣たちの闘志には、フィクションゆえの爽快な生命力すら感じられる。

強き者も弱き者も、みんな獣

f:id:kappa7haruhi:20210218020127j:plain

それぞれの事情を抱えた人物が右往左往しながら、這い上がろうともがき、弱き者は隙を突かれては食い殺されていく……弱い獣から凶悪な獣まで揃った“獣パラダイス”の闘いが描かれる。

元来の性格から恐ろしい行動を起こす者もいるが、登場人物は誰もが少なからず、弱さや情に揺れ、人間味を見せる瞬間が。それをきっかけに事態が複雑化していく人間ドラマが滅茶苦茶に面白い。

そしてその隙を狙う獣が現れて危険に直面することで、あるいは大金を手にすることで、誰もが獣と化していく。状況も人物も次々と変化を見せ、楽しませてくれる作品だ。

豪華すぎる……韓国を代表する俳優たちの競演!

f:id:kappa7haruhi:20210218020144j:plain

群像劇の主要な人物に主演級俳優が勢揃いしている本作。ずらりと並ぶ豪華な顔ぶれゆえに、キャスティングで物語がどう転ぶかを読み解くことは難しい。登場人物ごとにそれぞれの物語が始まり、カードが揃って行くたびにワクワクさせられる。

まず驚かされるのが、近年は涙に濡れる母親像が印象に残るチョン・ドヨン(『シークレット・サンシャイン』でカンヌ映画祭主演女優賞受賞)。彼女は不敵な笑みを浮かべる悪女として登場。また、60代の、国民的女優と呼ばれるユン・ヨジョン(『ハウスメイド』)が演じるのは、認知症の老女。認知症ゆえに真実に触れてしまう仕掛けがあったり、アクションをスタントなしでこなしたりと、アグレッシブに楽しませてくれる。

さらに、チン・ギョン(『MASTER/マスター』)、シン・ヒョンビン(『コンフィデンシャル/共助』)、チョン・ウソン(『アシュラ』『私の頭の中の消しゴム』)、ペ・ソンウ(『スウィンダラーズ』)、チョン・マンシク(『王宮の夜鬼』)、シン・ヒョンビン(『コンフィデンシャル/共助』)、チョン・ガラム(『感染家族』)らが主要な人物を演じる。この豪華な顔ぶれで、中だるみなしのジェットコースター的展開を楽しませてくれるのだ。

本作の監督は、短編やドキュメンタリーで経験を積み、意外にも本作でが長編デビューだという、キム・ヨンフン。大胆かつ繊細でしなやかな、観客が身を委ねて堪能できるエンターテイメントに仕上がっている。

オススメしたい『藁にもすがる獣たち』

f:id:kappa7haruhi:20210219000636j:plain

  • スピーディーな展開のクライムサスペンス
  • 徐々に人物同士の接点が見えてくる仕掛け
  • 新たなハマり役を見せる豪華な出演陣
  • 人間の欲望・本質を覗き見られる群像劇

『藁にもすがる獣たち』作品情報

【あらすじ】
踪した恋人が残した多額の借金を抱えて金融業者からの取り立てに追われるテヨン(チョン・ウソン)、暗い過去を精算して新たな人生を歩もうとするヨンヒ(チョン・ドヨン)、事業に失敗してアルバイトで必死に生計を立てているジュンマン(ペ・ソンウ)、借金のために家庭が崩壊したミラン(シン・ヒョンビン)。

ある日、ジュンマンが勤め先のロッカーの中に忘れ物のバッグを発見する。その中には10億ウォンもの大金が入っていた。地獄から抜け出すために藁にもすがりたい、欲望に駆られた獣たちの運命は……?

監督・脚本:キム・ヨンフン
出演:チョン・ドヨン、チョン・ウソン、ペ・ソンウ、チョン・マンシク、チン・ギョン、シン・ヒョンビン、チョン・ガラム、ユン・ヨジョンほか

原題:지푸라기라도 잡고 싶은 짐승들
英題:BEASTS CLAWING AT STRAWS

配給:クロックワークス

<2020年/韓国/カラー/シネマスコープ/5.1ch/109分/韓国語/G>
日本語字幕:福留友子

2021年2月19日ロードショー

klockworx-asia.com

 

f:id:kappa7haruhi:20210219001316j:plain
f:id:kappa7haruhi:20210219001303j:plain

f:id:kappa7haruhi:20210219001228j:plain
©2020 MegaboxJoongAng PLUS M & B.A. ENTERTAINMENT CORPORATION, ALL RIGHTS RESERVED.

〔AD〕

(最新の配信状況は U-NEXT サイトにてご確認ください。)

〔AD〕

(本ページの情報は2020年6月のものです。最新の配信状況は U-NEXT サイトにてご確認ください。)

<