19世紀のオーストラリアに生きた、伝説的な無法者ネッド・ケリーを描く劇映画。虐げられたアイルランド移民の家族として生まれ、理不尽な権力者たちに弄ばれ、闇に堕ちていく青年の心情に迫る、パンキッシュな迫力に満ちた"真実の物語"。ネッド・ケリーを演じるのは『1917 命をかけた伝令』のジョージ・マッケイ。
2021年6月18日(金)より渋谷ホワイトシネクイント、新宿シネマカリテほか全国順次公開
新たなネッド・ケリー像
今まで11回も映画化されてきたという人物ネッド・ケリーだが、本作は、2000年に出版された小説「ケリー・ギャングの真実の歴史(TRUE HISTORY OF THE KELLY GANG/ピーター・ケアリー著)」を原作としており、アウトローとしての新たなネッド・ケリー像、そしてオーストラリアのすさんだ歴史を浮き彫りにしている。
詳しい人も多いと思うが、ネッド・ケリーは、その存在がオーストラリアのカルチャーであり「権力への反抗」のアイコンであるという。
彼の肖像画にはトレードマークとなっている長いヒゲがたくわえられているのだが、今回ジョージ・マッケイ演じるネッドは、無精髭すら見当たらないすっきりした肌だ。
ネッドが兄弟や仲間と組んだ“ケリー・ギャング”は、盗賊、無法者、あるいは「ブッシュレンジャー」などと呼ばれている。
そう聞くと、なんだかモッサリしたイメージがわくが、こちらの“ケリー・ギャング”は、ストリート・ギャングのようなスタイリッシュさを感じる、凶暴な若者集団。
しかし「権力への反抗」というベクトルは明確で、根っこの部分では伝説の人物と一致。権力に虐げられた者の傷みと怒りが炸裂する。
幼少期のネッド、内面が構築されていく壮絶な体験
本作は「少年」「男」「モニター艦」という3つの章で構成されている。ネッドの幼少期を演じるのは子役オーランド・シュワルツ。
ブロンドヘアで少女に見間違えそうな色白の少年だが、過酷な生活の中で年齢にそぐわない行動力を見せたり、父親に対抗したりする。
しかしまだ、子どもならではの純真な正義感を持ち、あらゆるものが恐怖の対象だ。そんな彼の無垢な頬が何度も血で染まり、権力者の理不尽に苦しめられ、愛する母親にすら裏切られる……。
それが「少年」の章であり、着々と後年のネッド・ケリーの内面が構築されていくのがわかる。にわかには信じがたいが、こんな少年期に、ネッドは逮捕され、長い投獄生活を食らうことになるのだ。
権力者たちの強烈なキャラクター
ネッドや、彼の母・弟妹をいたぶる「権力者」が幾人か登場するが、気持ちがいいくらいゲスなキャラクターが揃っている。
立場は巡査部長や警官だったりして、初めはネッドを取り込もうと、馴れ馴れしく優しげに振舞って見せる。横暴な態度で腕力も権力も使い倒し、欲のための搾取もすれば、うさ晴らしで逮捕したがる。
演じる俳優が、性格も態度も粘着質で、爬虫類的な目つきをした、いや〜な感じを存分に見せてくれる。こんな人物が次々やってきて、家の中に入り込んできたら、たまらないだろう。
さらに、後年に投獄されてもなお、ネッドに影響力を与え続ける母親エレン・ケリー役(エシー・デイヴィス)もかなりな怪演。少年ネッドを溺愛しながら売り飛ばし、青年になっても突き放しては抱きしめ、すがる。それも常に、愛欲にまみれながら男たちにモテながら……。マザコンの業の深さも背景に描かれている作品だ。
作品ニュース
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— 『トゥルー・ヒストリー・オブ・ザ・ケリー・ギャング』公式 (@kellygangjp) June 4, 2021
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オススメしたい『トゥルー・ヒストリー・オブ・ザ・ケリー・ギャング』
- 伝説の人物ネッド・ケリーを新たな切り口で
- 虐げられる移民家族の「権力への反抗」
- 作品全体が放出するエネルギーの強さ
- スタイリッシュな映像と迫力
『トゥルー・ヒストリー・オブ・ザ・ケリー・ギャング』作品情報
【あらすじ】
19 世紀オーストラリア。貧しいアイルランド移民として虐げられた家庭で育った少年ネッド・ケリー。父の死後、生活のため山賊のハリー・パワーに売られたネッドは、成り行きから幼くして逮捕・投獄されてしまう。
出所し成長したネッドはしばらく家族と距離を置いていたものの、家に戻り、娼館で生きるメアリーと恋に落ちる。しかし、横暴な巡査部長や警官らは、難癖をつけてはネッ ドや家族を投獄しようする。権力者の貧しい者への横暴、家族や仲間への理不尽な扱いに耐えかねて、ネッドは弟らや仲間たちと共に“ケリー・ギャング”として立ち上がり、国中にその名を轟かせる存在となって……。
監督・製作:ジャスティン・カーゼル
脚本:ショーン・グラント
出演:ジョージ・マッケイ(『1917 命をかけた伝令』)、ニコラス・ホルト(『マッドマックス 怒りのデス・ロード』)、ラッセル・クロウ、チャーリー・ハナム(『キング・アーサー』)、エシー・デイヴィス(『ベイビーティース』)、ショーン・キーナン(『虹蛇と眠る女』)、アール・ケイヴ(『バグノルド家の夏休み』)、トーマシン・マッケンジー(『ジョジョ・ラビット』)
<2019年/オーストラリア=イギリス=フランス/英語/125分/ビスタサイズ/PG-12>
原作:ピーター・ケアリー「ケリー・ギャングの真実の歴史」
原題:True History of the Kelly Gang
製作:リズ・ワッツ、ハル・ヴォーゲル 撮影:アリ・ウェグナー
音楽:ジェド・カーゼル 編集:ニック・フェントン
プロダクションデザイン:カレン・マーフィ
配給:アット エンタテインメント 後援:オーストラリア大使館
2021年6月18日(金)より渋谷ホワイトシネクイント、新宿シネマカリテほか全国順次公開
© PUNK SPIRIT HOLDINGS PTY LTD, CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION, ASIA FILM INVESTMENT GROUP LTD AND SCREEN AUSTRALIA 2019
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