東京・ミニシアター生活

主に都内のミニシアターで上映される新作映画の紹介をしています。

〔AD〕動画サイトランキング

【8/13公開】『モロッコ、彼女たちの朝』カサブランカの街やモロッコの日常を肌で感じられる、シスターフッド・ストーリー

f:id:kappa7haruhi:20210804124009j:plain

絵になる「異国の地」としてたびたびスクリーンに登場してきたカサブランカ。外国人が訪れる舞台という設定の作品が多いが、本作はモロッコ製作の作品。モロッコ製作で長編作品の上映は、本作が日本初とのこと。日本人にはあまり馴染みのないモロッコの日常、そして保守的な社会に生きる女性たちが描かれる。

これは、性格も境遇も真逆の女性が、反発しあいながらも友情を育んでいくシスターフッド・ストーリー。未知の国の日常でありながら、多くの人が、心にぴったりと寄り添ってくれるような親近感を覚えるだろう。

2021年8月13日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国公開

不意にカサブランカに降り立った妊婦サミア

f:id:kappa7haruhi:20210811013522j:plain

臨月じゃなかろうか。はち切れそうな大きなお腹の女性サミアがカサブランカの街角で、ドアを叩きながら仕事を探す。観ているこちらが「その体で職を探すの?」と不安になってくる。

保守的なモロッコでは、未婚の母はタブーとされているという。そんななか、断られ続けてもめげずに愛嬌を振りまき、仕事と寝場所を求めてドアを叩き続ける腹の据わったサミアの様子に、すぐに魅了されてしまう。

心を閉ざした女性アブラと、その娘ワルダ

f:id:kappa7haruhi:20210811013625j:plain

パン屋を営むアブラは 初めは門前払いしたものの、路上で眠ろうとしている姿を見かねて、サミアを家に招き入れる。未亡人のアブラは、娘ワルダの成長だけを生きがいとし、笑顔すら封印し、自らを律している女性。

サミアもアブラも、男性に頼らず生きようとするタフさはあるが、愛嬌があり華やかなサミアと、生真面目で無味乾燥な毎日を生きるアブラは対照的。そんな2人の間をつなぐのは、無邪気なアブラの娘ワルダだ。

f:id:kappa7haruhi:20210813022524j:plain

そしてサミアはアブラのために、手のかかる伝統料理のパンケーキ「ルジザ」を作ることで一方的に甘える関係から脱するきっかけを得るのだった。

困難な状況下で結びつく、大人の女同士の歩み寄りと、そのきっかけを作るかわいい少女、この3人の心温まるやりとりや滑稽さが愛おしくなる。

保守的な国の女性たち

f:id:kappa7haruhi:20210813012658j:plain

頑ななアブラが変わっていく予感を匂わせる出会いだが、アブラの心がほぐれる一方で、サミアが頑なさを見せる場面もあり、この後2人の関係は何度か逆転する。

保守的と言われる社会では、立場が弱いのはやはり女性だ。アブラもサミアも主張や権利を認められず苦しんできた。常に真逆の顔を見せる2人は、まるで補い合うように相手に働きかけながら、互いのリアルな情感呼び覚まし、距離を縮めていく。そして、その都度観ている私たちも、心も殻を一枚ずつ剥がされるような喜びを感じるのだ。観客が第三者として傍観してはいられない、そんな魅力に満ちた作品だ。

作品ニュース

モロッコ雑貨プレゼントキャンペーン

フォロー&感想の投稿で、作品をイメージしたモロッコ雑貨を抽選でもらえるプレゼントキャンペーン。8/20締め切り。

ル・プチメック日比谷でスペシャルタイアップ

ブーランジェリー(職人自らが小麦を選び、粉をこね、焼いたパンをその場で売るお店のこと)の「ル・プチメック日比谷」で、作品とのタイアップメニューを販売中。9/12まで。

オススメしたい『モロッコ、彼女たちの朝』

f:id:kappa7haruhi:20210813014640j:plain
f:id:kappa7haruhi:20210813014643j:plain
  • 貴重なモロッコ製作の長編作品
  • 弱い立場の人々に寄り添うような優しさ
  • 繊細さとユーモア溢れる演出
  • シーソーのような関係の2人の女性の友情

『モロッコ、彼女たちの朝』作品情報

【あらすじ】
モロッコ最大の都市、カサブランカで、サミア(ニスリン・エラディ)は臨月のお腹を抱えながら、仕事と寝る場所を求めてさまよっていた。行くあてのないサミアは、市場の歩道で眠りにつく。そんな窮状を見かねて家に招き入れたのは、小さなパン屋を営むアブラ(ルブナ・アザバル)だった。アブラは女手ひとつで店を切り盛りし、明るくて素直な娘のワルダ(ドゥア・ベルハウダ)の成長だけが生きる原動力だった。

若くておしゃれなサミアとお腹の赤ちゃんに興味津々のワルダは大喜び。居候を許されたサミアは手作りの伝統のパンケーキ「ルジザ」を作って恩返しをする。しかし仲睦まじい娘とサミアの関係に複雑な思いを抱いたアブラは、娘が情を持つ前にとサミアを家から追い出してしまい……。

監督・脚本:マリヤム・トゥザニ(長編初監督)
出演:ルブナ・アザバル(『灼熱の魂』『テルアビブ・オン・ファイア』)、ニスリン・エラディ ほか

製作・共同脚本:ナビール・アユーシュ(『アリ・ザウア』)
英題:ADAM
提供:ニューセレクト、ロングライド  配給:ロングライド
<2019年/モロッコ、フランス、ベルギー/アラビア語/101分/1.85ビスタ/カラー/5.1ch>
日本語字幕:原田りえ

2021年8月13日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国公開

longride.jp

f:id:kappa7haruhi:20210813022447j:plain
f:id:kappa7haruhi:20210813022601j:plain
f:id:kappa7haruhi:20210813022605j:plain
f:id:kappa7haruhi:20210813022608j:plain
f:id:kappa7haruhi:20210813022611j:plain
f:id:kappa7haruhi:20210813022621j:plain

©︎ Ali n' Productions – Les Films du Nouveau Monde – Artémis Productions

〔AD〕

(最新の配信状況は U-NEXT サイトにてご確認ください。)

〔AD〕

(本ページの情報は2020年6月のものです。最新の配信状況は U-NEXT サイトにてご確認ください。)

<