1801年キリスト教徒が弾圧されていた朝鮮時代、罪人とされた天才学者が、流刑された島で、自然に魅了され、海洋生物学書を書き記そうと決意。貧しい漁師の青年と知識の交換をしながら絆を深めていく。師弟を演じるのはソル・ギョングとピョン・ヨハン。監督は『金子文子と朴烈』のイ・ジュニク。生き生きとした人物像と美しい風景が心に残るモノクロ映像で、人物の内面を濃く描いた時代劇。
2021年11月19日（金）、シネマート新宿ほか、全国順次ロードショー！
ソル・ギョング初めての時代劇、監督はイ・ジュニク
数々の作品に出演してきた韓国の実力派俳優ソル・ギョングだが、意外にも時代劇に出演したことがなかった。今回は実在の天才学者という役柄で初の時代劇だが、演技はもちろん、衣装の着こなしも堂に入っている。演じる丁若銓（チョン・ヤクチョン）は高い学問をおさめつつも、気さくでユニークな人物で、ソル・ギョングにぴったりハマり、のびのび演じているのが心地よい。
また、本作は時代劇ながら、壮大な歴史ではなく、激動の時代を背景に自分らしく生きた「人間」をメインに描いている。監督はイ・ジニク、記憶に新しい『金子文子と朴烈』同様、ユーモアも盛り込まれ、今回もたくましく時代を生き抜いた実在の人物（ヤクチョンと昌大）を、魅力的に浮かび上がらせる。そのため、時代劇でありながら、現代に通じる「どう生きるべきか」のテーマも見えてくる。
水墨画のようなモノクロ映画
本作は全編モノクロで撮影。本作のほとんどが、海に囲まれた黒山島（実際のロケ地は都草島・飛禽島・慈恩島など）を舞台としており、モノクロという手法で、波立つ海の美しさや海洋生物の奇妙さを、水墨画のように印象的に映し出している。
イ・ジニク監督は、カラーを排除することで「鮮明性」を際立たせるのだと語る。「モノクロは物体や人物が持っている本質的な形態をよりはっきりと伝える」。
そして、スタッフの小道具技師は「モノクロでは赤と黒が同じ色に見えるため、色のトーンの差をつけることに神経を使った」と、その技術と苦労を明かしている。
ピョン・ヨハン、そして立場を超え心通わせる人々の魅力
若銓（ヤクチョン）の弟子となる青年・昌大（チャンデ）を演じているのは、ピョン・ヨハン。かつてはインディーズ映画界のスターとして注目され、ドラマ『ミセン -未生-』で全国区の人気俳優に。日本の映画『太陽は動かない』にも出演している。
チャンデは複雑な出生の青年、学問への興味と、将来への野心を抱きながら、貧しい漁師として暮らしている（実際の人物像は不明であり、本作での設定）。チャンデの若者らしい鬱屈と真っ直ぐさの共存を、ピョン・ヨハンは魅力的かつリアルに演じている。ソル・ギョングと堂々と渡り合うやりとりも素晴らしい。さらに見事に魚をさばき、スタントなしで潜水撮影もこなし、漁師が生業という説得力を増す。
さらに、立場を超えヤクチョンと心通わせる島民の女性に『パラサイト 半地下の家族』で家政婦を演じたイ・ジョンウン。他にもミン・ドヒ （『応答せよ1994』）リュ・スンリョン（ 『エクストリーム・ジョブ』）ら、豪華な顔ぶれが揃っている。
作品ニュース
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オススメしたい『茲山魚譜-チャサンオボ-』
- 時代劇ながら「事件」ではなく「人」を描くイ・ジュニク監督
- ソル・ギョングはじめ豪華なキャスト
- モノクロ映像を効果的に採用した作品
- 美しい海の風景、ユニークな海洋生物も登場
『茲山魚譜-チャサンオボ-』作品情報
【あらすじ】
1801年、朝鮮時代。貞純（チョンスン）王后が権力を握ると、天主教（カトリック）に対する迫害を行い、先代国王・正祖の側近たちを追放。学者・丁若銓（チョン・ヤクチョン）も黒山島（フクサンド）に配流される。
生活は貧しいが、豊かな海と美しい自然、素朴で親切な人々に心ほどけていくヤクチョン。やがて、海の生き物たちの魅力にとりつかれ、庶民のための「海洋生物学書」を書き記したいと望むようになる。島民の中に誰より海の生き物に詳しい若き漁夫・昌大（チャンデ）がいることを知ったヤクチョンは、学問を教える代わりに海についての知識を自分に伝授するよう取引を持ちかけるが……。
監督：イ・ジュニク （『金子文子と朴烈』）
出演：ソル・ギョング （『ソウォン/願い』）、ピョン・ヨハン（ 『太陽は動かない』）、リュ・スンリョン（ 『エクストリーム・ジョブ』）、 イ・ジョンウン（ 『パラサイト 半地下の家族』）、ミン・ドヒ （『応答せよ199』） ほか
原題：자산어보/
配給：ツイン
＜2021年／韓国／韓国語／モノクロ／シネスコ／5.1ch／126分＞
字幕翻訳：本田恵子
2021年11月19日（金）、シネマート新宿ほか、全国順次ロードショー！
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