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【12/17公開】『ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男』環境汚染の真実を明らかにするため闘う男の、想像を絶する受難

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1998年、突然祖母の知人から訪問を受けた企業弁護士のロブ・ビロット。依頼主の農場を調べるうちに、アメリカの巨大企業・デュポン社による有害物質の流出、そして住民たちの恐るべき健康被害の実態を探り当てる。やがてこの真実は、大規模な環境汚染問題へと発展。巨大な敵によって窮状へと追い込まれながらも、真実を求めることをやめない、1人の弁護士の奮闘を描く実話に基づくリーガルドラマだ。

私生活でも環境保護活動に熱心に取り組んでいる主演のマーク・ラファロは、ニューヨーク・タイムズ紙によりこの事実を知り、映画化プロジェクトを立ち上げた。本作にはプロデューサーとしても参加している。

2021年12月17日(金)TOHOシネマズ シャンテほかロードショー

新聞記事からの映画化 恐ろしい真実を明らかに

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米国の大企業、デュポン社が調理器具などの製品に使っていた有害な化学物質「PFOA」。廃棄物が流れ込んだ川の水を浴びた190頭の牛が死に、水を飲んだ住民はガンに侵された。本作には、こうした計り知れない健康被害の恐怖が描かれる。さらに、その危険性に気づいていた巨大企業の態度そのものも、また恐ろしい。

廃棄物で汚染された環境で生活する人々だけではなく、工場のラインで体内に化学物質が入り込んでしまった社員もおり、デュポン社は密かにその経過を観察していた。さらに有害物質を含んだタバコを配布し、社員に対し人体実験のようなことまで行っていたという。

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社員たち、そして彼らの子供の身に起こった恐ろしい健康被害は、デュポン社により記録されていた。そこで、弁護士のロブ・ビロットは持ち前の粘り強さで、大量の記録の中から重要な情報を探し出し「PFOA」の有害性を訴える。

それでも巨大企業は、政府までも丸め込み、あらゆる策を講じて、決して非を認めない。この戦いに身を投じたロブは、弁護士として凄まじい苦難の道のりを歩むことになる。

事実に沿って克明に描き出した本作には、世界の人が知るべき真実が盛り込まれている。なおデュポン社の裁判は現在も続いているという。

アン・ハサウェイ、ティム・ロビンス…見応えある人間模様

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実在の弁護士ロブを演じるのは、マーク・ラファロ。今回、プロデューサーとしても名を連ね、本作のテーマとロブ役に並々ならぬ熱意を示している。

実直で真面目な性格のロブは、もともと衝動的な言動は多くない人物だ。しかし、徐々に憤りの反応を見せる場面が増えていく。やがて想像を絶するほどのストレスを抱えてしまう。

また、彼は嬉しいときに「マイタイ」というカクテルを飲む。彼の手やテーブルにマイタイがあることで、静かに喜んでいることがわかるのが、なんとも微笑ましい。

ロブの妻役にはアン・ハサウェイ、上司役はティム・ロビンスが演じている。スター俳優でありながら、2人ともその華やかさをあえて封印。ときにはロブと衝突しながら理解を深めていく妻、情と経営者としての立場に揺れる上司をそれぞれリアルかつ繊細に演じ、心を打つ深い人間像を結んでいる。一進一退を繰り返すデュポン社とロブの戦いに、彼らも大きく人生を揺さぶられる。

巨大企業による環境破壊を見逃してはならない

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本作には、デュポン社の危険な商品として「テフロン加工のフライパン」が登場する。 「デュポンのフライパン」はアメリカの技術の象徴、そして主婦の憧れであり、長きにわたり、多くの家庭で使われてきた。問題の「PFOA」は体内に入ると分解されることがない危険な化学物質であり、現在ではアメリカ人に限らず、人類のほとんどの体にすでにこのPFOAが入り込んでいるそうだ。なんと悲しく恐ろしい現実だろう。

ちなみに「テフロン加工」のフライパン全てにPFOA(C8)が含まれているわけではなく「PFOAフリー」のテフロン加工もあって、安全とされるテフロン加工のフライパンとは、ごく普通に販売されている。

その一方で、安全性が確認できていない化学物質は、PFOA以外にも多数存在しているという。同じことが、これからも起こらないとは限らないし、すでに起こっているのかもしれない。本作は巨大企業による環境破壊と不正が行われないよう、私たち一般市民が常に目を光らせることは重要だと教えてくれる。

日本で今年公開となった映画に『MINAMATA―ミナマタ―』『サムジンカンパニー1995』があり、そして本作が公開となった。いずれも大企業が行なった、人命を奪うほどの重大な環境汚染を基にした物語だ。これだけ一気に公開となると警鐘を鳴らされているようであり、今こそ環境問題に目を向けなければ、という意識が高まるだろう。

オススメしたい『ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男』

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  • 現在も裁判が続いている実在の事件を記録
  • 世界が知るべき恐ろしい化学物質の実態
  • 俳優たちが紡ぎ出すリアルな人物像
  • 弁護士ロブの不屈の精神

事件の当事者たちの協力を得て、製作されたリアルな作品。本人のカメオ出演も、エンドロールで明かされている。

『ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男』作品情報

 【あらすじ】
1998年、オハイオ州の名門法律事務所で働く企業弁護士ロブ・ビロットが、見知らぬ中年男から思いがけない調査依頼を受ける。ウェストバージニア州パーカーズバーグで農場を営むその男、ウィルバー・テナントは、大手化学メーカー、デュポン社の工場からの廃棄物によって土地を汚され、190頭もの牛を病死させられたというのだ。

さしたる確信もなく、廃棄物に関する資料開示を裁判所に求めたロブは、“PFOA”という謎めいたワードを調べたことをきっかけに、事態の深刻さに気づき始める。デュポンは発ガン性のある有害物質の危険性を40年間も隠蔽し、その物質を大気中や土壌に垂れ流してきたのだ。やがてロブは7万人の住民を原告団とする一大集団訴訟に踏みきる。しかし強大な権力と資金力を誇る巨大企業との法廷闘争は、真実を追い求めるロブを窮地に陥れて……。

監督:トッド・ヘインズ(『キャロル』『エデンより彼方に』)
出演:マーク・ラファロ、アン・ハサウェイ、ティム・ロビンス、ビル・キャンプ、ヴィクター・ガーバー ビル・プルマン ほか

原題:DARK WATERS
配給・宣伝:キノフィルムズ
字幕翻訳:橋本裕充

<2019年/アメリカ/英語/126分/ドルビーデジタル/カラー/スコープ/原題:DARK WATERS/G>

2021年12月17日(金)TOHOシネマズ シャンテほかロードショー
© 2021 STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC.

dw-movie.jp

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(本ページの情報は2020年6月のものです。最新の配信状況は U-NEXT サイトにてご確認ください。)

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