東京・ミニシアター生活

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【7/9公開】『WANDA/ワンダ』ロマンを排除したボニー&クライド…女優バーバラ・ローデンが自ら監督した幻の名作

巨匠と呼ばれる映画監督の妻であった女優バーバラ・ローデンが、従順な女性像に疑問を持ち、自ら脚本を書き、主演・監督したという幻の名作。

1970年ヴェネツィア国際映画祭で最優秀外国映画賞を受賞、71年カンヌ国際映画祭で上映された唯一のアメリカ映画として名声を得るも、本国アメリカではほぼ黙殺され、長年「観ることの出来ない伝説的作品」とされていた。現在は、アメリカ・インディペンデント映画の代表作として知られている。

崖っぷちをさまよう女の「人生を漂流する」哀しく滑稽なロードムービー。

 2022年7月9日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開

作品や人物に込められた、自身の哀しみや信念

ローデンは、本作について「彼女のような人は何百万人もいる、私もワンダのようになっていたかもしれない」と語ったという。愚かで哀しいヒロイン、ワンダは、もしも女優という道が開けなかったら……その「もう1人のローデン」を自身がイメージした人物ということなのだろう。

虐待を受けながらノースカロライナ州の貧しい家庭で育ったローデンは、16歳でニューヨークへ。ダンサーやピンナップモデルを経て女優になり、エリア・カザン監督『草原の輝き』(61)に出演。64年にはアーサー・ミラーの戯曲作品でトニー賞・主演女優賞を受賞。

その後、カザン監督と結婚するも、自分が演じてきたアイデンティティや目標を見出せない「従順な女性像」に疑問を持つようになり、やがて、自分の居場所を見つけられずにいる主婦ワンダを主人公にした本作を撮る。作品は海外で名声を得るもアメリカでは黙殺され、公開の10年後である80年に、ローデンは乳がんにより48歳で生涯を閉じた。

女性が生きていくうえであまりにも多い苦難と、そんななかでも生きるために必要な、弱者ゆえのタフさやほんの少しの狡猾さ。それについて考え抜き、かつ女性であることを愛おしみ、浮かび上がったであろう人物ワンダ。このヒロインは、今の時代であっても、多くの人にとって、とことんリアルな存在に感じられるだろう。

泥臭くも可憐なワンダ

70年代初頭のファッションや美術を味わえるのも本作の魅力である。

カーラーを巻いたままウロウロして裁判所へ出かけたり、クシも通さないボサボサ髪で旅をするワンダ。しかし、流行の帽子をかぶっておしゃれをすれば、女優バーバラ・ローデン演じる彼女はパッと可憐な姿を見せてくれる。

可憐ではあるが、設定を裏切って大きく花咲いたりはしない。泥臭い雰囲気をきちんとまとって冴えない主婦であり続けるバランスが非常に心地いい。

ロマンを一切排除した『俺たちに明日はない』

「『ボニーとクライド/俺たちに明日はない』(67)のロマンチックさを一切排除した作品にしたかった」とローデンが語っているように、本作は犯罪に手を染め、逃避行する男女の物語へと展開していく。

無気力そうな主婦のヒロインが、負のスパイラルに飲み込まれていく先その運命に、理想もロマンも持ち込まれなかった本作。つまり逆転勝利もなく、劇的な終末もなく、憂鬱に続いていくワンダの人生がある。

しかしそんな、幸運も華もなさそうな、憂鬱そうなワンダの人生の続きが、観客はどうしても気になってしまう。なぜか寄り添い共に流れて行きたくなるような、あるいは「(関わりたくはないが)どこかで生き抜いてほしい」と願うような、不思議な心持ちへと導かれる。このような、説明ができない感覚が生まれてあとを引くからこそ「奇跡の作品」「小さな宝石」と評されるのかもしれない。

作品ニュース

初日・2日目来場者にポストカードプレゼント

シアター・イメージフォーラムにて7/9(土)・7/10(日)オリジナルポストカードのプレゼントがあります。

オススメしたい『WANDA/ワンダ』

  • アメリカ・インディペンデント映画の代表作
  • バーバラ・ローデン、最初で最後の監督作品
  • 居場所がなくとも生き抜こうとするヒロイン
  • 漂流するロード・ムービーの心地よさ

『WANDA/ワンダ』作品情報

 【あらすじ】
 ペンシルベニアの炭鉱町に住むワンダは、自分の居場所を見つけられずにいる主婦。知人の老人を訪ねお金を貸してほしいと頼むワンダは、バスに乗り込み夫との離婚審問に遅れて出廷する。タバコを吸いヘアカーラーをつけたまま現れたワンダは、夫の希望通りあっさりと離婚を認め退出する。

 街を漂うワンダは、バーでビールをおごってくれた客とモーテルへ。 ワンダが寝ている間、逃げるように部屋を出ようとしたその男の車に無理矢理乗り込む。だが、途中ソフトクリームを買いに降りたところで逃げられてしまう。

 またフラフラと夜の街を彷徨い歩き、一軒の寂れたバーでMr.デニスと名乗る小悪党と知り合う。彼に言われるがまま、犯罪計画を手伝うハメになるワンダの行方は……。

監督・脚本:バーバラ・ローデン

出演:バーバラ・ローデン、マイケル・ヒギンズ、ドロシー・シュペネス、ピーター・シュペネス、ジェローム・ティアー ほか

原題:WANDA
配給:クレプスキュール フィルム
<1970年/アメリカ/カラー/103分/モノラル/1.37:1/DCP>
字幕翻訳:上條葉月
 2022年7月9日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開

wanda.crepuscule-films.com

 

 

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(本ページの情報は2020年6月のものです。最新の配信状況は U-NEXT サイトにてご確認ください。)

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