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【11/3公開】『パラレル・マザーズ』2人のシングルマザー、受難のドラマに重なるスペイン悲劇の歴史

『ペイン・アンド・グローリー』『ボルベール〈帰郷〉』のペドロ・アルモドバル監督最新作。フォトグラファーのヒロインがシングルマザーになるも、愛情を注ぐ子どもが病院で取り違えられていた可能性に気づき…。愛と道徳に揺れるヒロインに、アルモドバル監督のミューズ、ペネロペ・クルス。2人のシングルマザーのドラマに重ね、30年代のスペイン内戦後、フランコ独裁政権時代に数十万人が虐殺されたという国の悲しい歴史にも切り込んでいくヒューマンドラマ。

2022年11月3日(木・祝)ヒューマントラストシネマ有楽町Bunkamuraル・シネマ新宿シネマカリテ 他公開

2人のシングルマザーは良き友となるはずだったのに…

結婚できない相手と愛し合い、子供を宿したフォトグラファーのジャニスは、運命を受け入れ、未婚のまま高齢での出産を決意する。産院では、ジャニスはまだ10代の若いアナと同室になり、ともに「想定外の妊娠」であり、シングルマザーとなる道を歩んだ同士として、励まし合い友情が生まれる。そして同日に女の子を出産。

退院後、愛を注いで我が子セシリアを育てていたジャニスだが、ふとしたきっかけでDNA検査を受けると「100%の確率でジャニスはセシリアの生物学的な母親ではない」という結果が出てしまう。思い当たった不安から目をつぶるため、ジャニスは電話番号を変え、アナとの連絡も断つことにする。

自ら運命を選択してきた自立心の強い女性が迎える、スリリングな展開を、アルモドバル監督のミューズであるペネロペ・クルスがまっすぐに演じ、観る者を引き込む。また、もう1人のシングルマザー、アナ役を新人のミレナ・スミットがみずみずしく好演。

また、アナの母は、未だ野望を失わずチャンスを待つ女優であり、若いアナが出産した後、力になってくれるはずだったが、女優としての道を選んでしまう。アルモドバル監督がテーマとして繰り返し選んできた「娘から見た母という関係性」も描かれている。

数十万人が虐殺された、スペインの悲しい歴史

後半ではジャニスのルーツを辿るエピソードに展開する。

スペインには、フランコ独裁政権時代に数十万人が虐殺されたという悲しい歴史が存在する。この物語のジャニスと近隣の住人の曽祖父ら、10数人もこのとき無念の死を迎えてしまったのだった。彼らの遺骨を遺骨を整えるため、法人類学者のアルトゥロの助けを借りて、発掘作業が行われることになる。

前半とは別パートのように見えるかもしれないが、出生地に戻ったジャニスは、再び綿棒を手に取り、DNA検査をするために人々の口腔内の組織を採取する。現代の2人が体験した子どもの取り違えとの共通部分があることが、ここに象徴されているのだろう。歪んだ将来を迎えないためにも、起こってしまったことを、目をつぶってやり過ごしてはならない……例えばそんなメッセージを感じ取れるかもしれない。

作品ニュース

豪華なパンフレット

監督インタビューほか、濃い内容のパンフレットが販売されます。

アルモドバル監督新作『ヒューマン・ボイス』同日公開

ティルダ・スウィントンのひとり芝居、映画『ヒューマン・ボイス』も11月3日に公開に。

 

オススメしたい『パラレル・マザーズ』

  • 母性とエゴと道徳の間で揺れるヒロイン
  • スペイン内戦後の“ジェノサイド”の歴史も題材に
  • アルモドバル監督作でペネロペ・クルス渾身の役作り
  • ペネロペと大型新人ミレナ・スミットの競演

『パラレル・マザーズ』作品情報

 【あらすじ】
フォトグラファーのジャニス(ペネロペ・クルス)は、法人類学者のアルトゥ(イスラエル・エレハルデ)と恋に落ちる。そして、スペイン内戦時にフランコ政権に殺された彼女の曽祖父を含む10数人の人々の遺骨の発掘を、彼に依頼する。

やがて、妊娠したジャニスは出産を控えて入院。シングルマザーという共通点を持つ同室の若いアナ(ミレナ・スミット)と交流を持つ。2人は同じ日に晴れて女の子を出産し、これからも何かと相談しようと連絡先を交換する。

後日「娘に会いたい」と訪ねて来たアルトゥロは、娘のセシリアを一目見ると「僕の子と思えない。DNA検査をしたい」と言い放つ。ジャニスは腹を立てる一方で、気になることがあり、DNA鑑定を行う。すると、結果には「100%の確率でジャニスはセシリアの生物学的な母親ではない」と記されていた。病院で自分とアナの娘が取り違えられたのではないかと密かに疑ったジャニスは、秘密を抱えたままセシリアと二人で生きていこうと決意、周囲との連絡を立つべく、携帯の番号を変える。

しかし、仕事に復帰したジャニスは街で偶然アナと再会。「娘さんは?」と尋ねると「乳児突然死で亡くなった」と知らされて…。

脚本・監督:ペドロ・アルモドバル (『ペイン・アンド・グローリー』『ボルベール〈帰郷〉』)
出演:ペネロペ・クルス、ミレナ・スミット、イスラエル・エレハルデ 、アイタナ・サンチェス=ギヨン、ロッシ・デ・パルマ、フリエタ・セラーノ ほか

原題:MADRES PARALELAS
配給:キノフィルムズ
<2021年/スペイン・フランス/スペイン語/123分/カラー/5.1ch/ドルビーデジタル/アメリカンビスタ/R15+>

字幕翻訳:松浦美奈

2022年11月3日(木・祝)ヒューマントラストシネマ有楽町Bunkamuraル・シネマ新宿シネマカリテ 他公開

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