【11/25公開】『シスター夏のわかれ道』一人っ子政策が残した家族の歪み…姉弟はどんな道を選ぶのか？

疎遠だった両親の突然の事故死により、看護師として働く女性が、見知らぬ6歳の弟を託されて……。一人っ子政策のため「望まれなかった娘」として早くから自立するしかなかった彼女は、今度は医師になる目標を諦めなければならないのか？　押し付けられる義務、積み重ねてきた努力、初めて知る家族愛。人生の選択に葛藤するヒロインが共感を呼び、本土中国では数々の映画映画賞を受賞した話題作。

2022年11月25日(金) 新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、シネ・リーブル池袋ほか全国公開

一人っ子政策の生んだ家族の歪み

1975年から2015年まで続いた中国の一人っ子政策は、ずっと「娘」という立場を悲しいものにしてきた。たった1人しか子どもを持てないのであれば、後継ぎとなって老後を守ってくれる男子が求める親が多いからだ。

ヒロイン、アン・ランの回想で、父から歩けないフリをするよう強要され反抗する、幼い頃の記憶が登場する。これは一人っ子政策に置いて「第一子が、非遺伝性の身体障がいを持つ場合、2人目の出産が認められる」という特例があることによる。つまり、アン・ランは、2人目を産みたい両親から「障がい者を演じ、障がい者として生きる」ことを求められたのだ。

この時代、娘であることがここまで屈辱的であったなら、親子関係が健全だったとは考え難い。一人っ子政策は、多くの親子関係を歪めてきた歴史でもあるのだろう。

突然現れた、年の離れたワガママな弟

成長したアン・ランは、看護師という重労働の職業で生計を立てながら、医師になるため寸暇を惜しんで猛勉強。さらにエリートの恋人もいる。経済的に安定した職業について、理想の家庭も築き、何よりも個人として敬意を払われる人生を歩もうとしている。一人っ子政策のおかげで、生まれながらに自分が持て生まれなかったものを、自らの努力・実力で掴み取ろうとするたくましさが魅力的だ。

ところが、着々と我が道を歩んでいたアン・ランの運命を狂わせるのは、またしても実の家族。突然交通事故で亡くなった両親には、会ったこともない弟という忘れ形見がいた。まだ幼く、わがまま放題の弟に日常をかき乱され苛立つアン・ラン。そして両親待望の男子……自分の幼少期を振り返れば、憎しみすら感じるだろうと想像してしまう。

さらにアン・ランは両親の持ち家も「私のもの」と強く主張し、売りに出そうとする。ずっと両親に踏みにじられてきた自分の権利を取り返そうと、意地を見せる。

「弟の面倒は姉が見るのが当然」と主張するのは同じ立ち場の…

そんなアン・ランに「姉が弟を養うべき」と「父の姉」である叔母が言う。弟のために自らを犠牲にしてきた自分と同様に生きろ、という要求してくる。「それが家族のあるべき姿」と信じて疑わない叔母は、なんとアン・ランの結婚や弟の養子縁組を阻もうとまでする。しかし本来、叔母はアン・ランの苦しい思い、女性の生きづらさを最も知る人物でもある。

一方で生活力がなく、夢見がちでだらしない叔父も登場する。勤勉なアン・ランと対極にあるような生き方をしている叔父だが、彼とアン・ランの関係性の変化も見どころだ。

また、わがまま放題の弟を「養子に出すまで」と世話をするうちに「家族から求められる」ことを初めて体験するアン・ランは、頑なに貫いてきた意地が揺らぎ始めるが……。果たして彼女は、自分の人生の価値を高めるために目指してきた道を歩み続けられるのだろうか？

作品ニュース

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— 映画『シスター夏のわかれ道』11/25公開 (@_sister_movie) 2022年11月21日

オススメしたい『シスター夏のわかれ道』

心を伴う「家族」とはどんなものかを問う
姉・弟を演じる若い俳優2人の魅力
終わってもなお残る「一人っ子政策」のゆがみ
世界各国が共感する、女性の生きづらさ

『シスター夏のわかれ道』作品情報

【あらすじ】
看護師として働くアン・ラン（チャン・ツィフォン）は、医者になるために北京の大学院進学を目指していた。ある日、疎遠だった両親を交通事故で失い、6歳の弟・ズーハン（ダレン・キム）が突然現れる。望まれなかった娘として、早くから親元を離れて自立してきたアン・ラン、一方で待望の長男として愛情を受けて育ってきたズーハン。

姉であることを理由に親戚から養育を押し付けられるが、アン・ランは弟を養子に出すと宣言。養子先が見つかるまで、両親の死すら理解できずワガママな弟に振り回されながら仕方なく面倒をみることに。しかし、弟と暮らすなかで、自分の道を突き進もうとするアン・ランの固い決意が揺らぎ始めて……。