東京・ミニシアター生活

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【2/3公開】『すべてうまくいきますように』安楽死を望む父、その娘の葛藤…深刻なテーマに、不思議なユーモアと爽快感

発作で倒れ、後遺症が残ったことで安楽死を望むようになった父に、その手配を頼まれてしまった娘たち。安楽死が合法であるスイスにアテンドしてくれる団体があることを知り……。脚本家エマニュエル・ベルンエイムが体験し原作を書いた、父の最期についての物語。フランスの国民的女優ソフィ・マルソーが主演、監督は本作で初めてタッグを組んだフランソワ ・オゾン。

2023年2月3日(金) ヒューマントラストシネマ有楽町新宿武蔵野館Bunkamuraル・シネマ 他公開

安楽死が合法の国は少数派

安楽死は「人為的に寿命を縮め、死を迎えること」であり、日本でもフランスでも他の多くの国でも、違法行為とされている(無理な延命治療をしないことで自然に迎える「尊厳死」は合法であり別物とされる)。

だがその一方で、少ないながら安楽死が合法となる国も存在し、その国へ入って行うのであれば違法ではなくなる。深い理解が難しくとも、そういった方針や考え方の国の存在を認めることは、現代においては必要かもしれない。

そんななか、今まで以上に一歩進んだ身近なものとして安楽死をテーマにした映画が、近年ちらほらと現れている。しかし、安楽死が自国で禁止されていれば、やはり倫理的な引っかかりを感じてしまうものである。

安楽死の是非を問うだけではない作品

「安楽死」がテーマと聞けばつい身構えてしまうのだが、本作は、周りの人々が抱く抵抗感に1つ1つ丁寧に向き合いながら進んでいく。積極的な死を全面的に推奨するのではなく、様々な問題や複雑な事情を抱えた老父アンドレという個人の人生・人格を、改めて娘である姉妹がどう受け入れるのか、その過程を見つめることになっていく。

また中盤以降は、父のために奔走する娘の前に、多くの人々が関わることで次々とトラブル発生。タイトルを反映するような、コミカルささえ含んだスリリングな展開が楽しめる。観終えた後には、爽快感すら駆け抜けるのが見事。

脚本の手腕もあるだろうが、やはり原作者の実体験がその説得力に通じるのだろう。

フランソワ・オゾン×ソフィ・マルソー、S・ランプリング

▲「公式webよりインタビュー動画」

このインタビュー動画でソフィ・マルソーが語っているように、作品ごとに新しさを見せてくれるフランソワ ・オゾン監督。監督が望み、初タッグを組むことになった国民的女優ソフィ・マルソーは、本作では高齢の親をもつ中高年世代を等身大で演じる。

思わぬ事態にあたふたしたり、病身なのに毒気たっぷりの父のジョークで笑ったり……生き生きとした表情を見せるソフィーに親近感を覚え、ティーンアイドル時代からのファンも、この世代での彼女の魅力を新たに発見するだろう。

ただ、満開の笑顔で小走りしてくる彼女は、パッと花が咲いたようで「恋風チクン」の再現度(←わかる人だけわかれば…)がハンパない。とすると、もしかしたら今回は役作りで、キラキラ輝きがこぼれるところをグッと抑え込んでいるのかもしれない。

また、母親役にシャーロット・ランプリングと、大輪の花がもう1つ咲く。この2大女優共演は、映画ファンにとても贅沢な気持ちを味わわせてくれる。

オススメしたい『すべてうまくいきますように』

  • 安楽死を扱いつつ、コミカルさもあるハートフルな作品
  • ソフィ・マルソーとフランソワ・オゾンが初タッグ
  • ミッションを背負い、思わぬスリリングな展開へ
  • 生きる意義や人生について考えるきっかけに

『すべてうまくいきますように』作品情報

 【あらすじ
小説家のエマニュエル(ソフィー・マルソー)は、85歳の父アンドレ(アンドレ・デュソリエ)が脳卒中で倒れたという報せを受け、妹のパスカル(ジェラルディーヌ・ペラス)と共に病院へと駆けつける。数日後、何年も別居しているのに離婚しない彫刻家の母クロード(シャーロット・ランプリング)も見舞いに訪れるが「重症じゃなさそうね」とすぐに帰ってしまう。意識を取り戻した父は、身体の自由がきかないという現実が受け入れられず「人生を終わらせるのを手伝ってほしい」とエマニュエルに頼む。一方で、リハビリが功を奏し日に日に回復する父は、孫の発表会やお気に入りのレストランへ出かけ、生きる喜びを取り戻したかのように見えた。だが、父はまるで楽しい旅行の日を決めるかのように、娘たちにその日を告げて……。

監督・脚本:フランソワ・オゾン(『ぼくを葬る』『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』)
出演:ソフィー・マルソー、アンドレ・デュソリエ、ジェラルディーヌ・ペラス、シャーロット・ランプリング、ハンナ・シグラ、エリック・カラヴァカ 、グレゴリー・ガドゥボワ ほか

原題:Tout s'est bien passé
字幕翻訳:松浦美奈
配給:キノフィルムズ
<2021/フランス・ベルギー/フランス語・ドイツ語・英語/113分/カラー/アメリカンビスタ/5.1ch/G>
2023年2月3日(金) ヒューマントラストシネマ有楽町新宿武蔵野館Bunkamuraル・シネマ 他公開

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(本ページの情報は2020年6月のものです。最新の配信状況は U-NEXT サイトにてご確認ください。)

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