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【2/10公開】『対峙』怒り・悲しみ・絶望・後悔…感情が錯綜する「被害者家族」と「加害者家族」対話の行方

ある高校で6年前に起こった銃乱射事件の被害者遺族が、セラピストのすすめで、加害者の両親と会って話をする機会を得る。4人は立会人なしで、静かにそれぞれの息子について語り始めるが……。あくまで冷静に話し合う場として始まり、会話が進む中で少しずつ状況が見えてくる頃、後悔・怒り・悲しみ・絶望…あらゆる感情も錯綜。果たしてこの対話は実りをもたらすのか? 本作が初監督となる俳優フラン・クランツ(『キャビン』)が、実際の事件にインスパイアされ脚本、プロデュースも兼任。ベテラン俳優4人が、緻密でスリリングなやり取りを熱演する。

2023年2月10日(金) TOHOシネマズシャンテほか全国公開

ぬくもりある教会の朗らかな人々のアテンドだが…

ある教会の日常から始まる本作。この日、なんらかの事件の関係者である2組の夫婦が、この教会の一室で話し合う機会を与えられている……ということまではわかるのだが、事件の内容も2組の関係も明確にされない。

しかも、当事者をアテンドする人々はみな陰鬱さのない朗らかな人柄だが、交わされるやり取りで、これから迎え入れる4人に対し、ごくセンシティブな感情を抱いていることが漏れ伝わってくる。どんなに難しい話し合いが行われるのか、主要な4人の俳優が登場する前から、緊張感はじわじわと高まっていく。

すべてが少しずつ明かされる…4人の立場、事件の内容

やがて当事者4人が揃うものの、どちらの夫婦も子どもを亡くしている状況で、誰もが緊張しており、一体誰がどういう立場で、どういう人柄なのか全くわからない状態で面談が始まる。

それでも部屋に入った瞬間から4人の微妙な表情や態度に、ヒントが大量に溢れ出す。にも関わらず、自分の感情を制し、互いに相手を気遣っている4人は、加害者家族なのか被害者家族なのかすら、判断し難い。この状況を作り出すベテラン俳優の演技の力がとにかく素晴らしく、観客は「わからない」ことにいらだつことなく、スリリングな感覚をとことん味わうことになる。

やがて会話の中で、立場も事件の内容も明確にされ始めると、今度は4人それぞれの怒り・悲しみ・絶望…あらゆる感情が自分のことのように、身に沁みてくる。そして話し合いの行き着く先が、悲しみから解き放たれる癒しなのか、赦しの手がかりが見つかるのか、あるいは決裂してしまうのか、全く予測がつかなくなっていく。

徹底されたリサーチによるリアルな臨場感

この緻密でスリリングな驚くべき作品を立ち上げ、脚本を書き上げたのは、俳優のフラン・クランツ。本作が初監督作品となる。彼は実際の銃乱射事件の詳細や、遺族のその後を調べ、それを「父親」という立場から見て感じることで、インスパイアされ、本作を作り上げたとのこと。徹底されたリサーチに裏付けられたリアルな臨場感はあまりに見事だ。

また、被害者家族と加害者家族の面談は、非常にセンシティブで思い切った方法に感じられるが、近年ではこういった実際にセラピストの指導で行われることがあるのだという(また、犯罪を「地域社会に起きた害悪」と捉え、関係者が話し合ってその害悪を修復しようとする努力については「修復的司法」と呼ばれ、国連が各国に導入を求めているという)。

確かにこうした対話は、遺族の行き場のない悲しみを癒すきっかけにもなり得るだろう。そうした可能性を広げるきっかけとしても、本作は大きな役割を果たすのではないだろうか。

オススメしたい『対峙』

  • わずかな仕草や表情も見逃せない4人の緻密な演技
  • 徹底したリサーチに基づくリアリティ
  • 会話だけで進行するスリリングな心理劇
  • 「修復的司法」や親子関係を考えるきっかけに

『対峙』作品情報

【あらすじ】
アメリカの高校で、生徒による銃乱射事件が勃発。多くの同級生が殺され、犯人の少年も校内で自ら命を絶った。それから6年、いまだ息子の死を受け入れられないペリー夫妻は、事件の背景にどういう真実があったのか、何か予兆があったのではないかという思いを募らせていた。夫妻は、セラピストのすすめで、加害者の両親と会って話をする機会を得る。場所は教会の奥の小さな個室、立会人は無し。「お元気ですか?」と、古い知り合い同士のような挨拶をぎこちなく交わす4人。そして遂に、ペリー夫人の「息子さんについて何もかも話してください」という言葉を合図に、誰も結末が予測できない対話が幕を開ける……。

監督・脚本:フラン・クランツ(『キャビン』出演)
出演:リード・バーニー(TVシリーズ「ハウス・オブ・カード 野望の階段」)、アン・ダウド(『へレディタリー/継承』)、ジェイソン・アイザックス(『ハリー・ポッター』シリーズ)、マーサ・プリンプトン(『グーニーズ』) ほか

原題:Mass
配給:トランスフォーマー
<2021年アメリカ/英語/111分/ビスタ/カラー/5.1ch/G>

2023年2月10日(金) TOHOシネマズシャンテほか全国公開

transformer.co.jp

 

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