東京・ミニシアター生活

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【10/11公開】『若き見知らぬ者たち』押し寄せる貧困と病に耐え、家族を支えたある若者の“生きた証し”

『佐々木、イン、マイマイン』(2020年)の内山拓也監督による、商業長編初監督作。認知症を発症した母、格闘技選手の夢を追う弟、亡父の残した場末のカラオケバー……自らを犠牲に家族を支える若者の、葛藤や哀しみを描く。重く苦しいストーリーではあるが決して投げやりではない、覚悟と凄みに満ちた意欲作。出演は磯村勇斗、岸井ゆきの、福山翔大、染谷将太ら。

2024年10月11日(金) 新宿ピカデリーほか全国公開

ヤングケアラー、逸脱する警官…現代にのしかかる社会問題

磯村勇斗演じる主人公・彩人は昼夜働きづめで家を支えてきた青年。母は認知機能に問題がある難病を患っていて介護が必要である一方、亡き父が残した借金も返さなくてはならず、自分のために使う時間もない。疲弊していて、若いながらこんな生活を長く続けてきたのが見て取れる。

行き詰まった生活をほのかに照らす明かりは、家庭事情を知った上で愛情深くサポートをしてくれる看護師の恋人・日向だ。さらに彩人には、そんな恋人との関係を心配し助言してくれる友人や、格闘家という夢を追う弟もいる。

だが、昼夜続く仕事と判断能力を失った母が起こした問題の尻拭いに日々奔走し、彩人は疲れ果てている。処方された吸入器を使いながらも煙草を吸う様子からも、ストレスに飲み込まれ、立て直せない毎日を過ごしている絶望感が漂う。近年社会問題となっているヤングケアラー・若者ケアラーの暮らしぶりとはこういうものなのだろう。

それでも優しさも忘れず、自分なりの正義を備え、葛藤しながらも耐え抜く彩人は、人としての美しさや勇気を感じさせる。しかしそんな彩人をさらなる理不尽が襲うことになる……。

若いケアラー、理不尽な暴力、あるべき姿から逸脱する警察。現代の社会問題をたっぷり盛り込みリアルに見せつつ、そこに流される者の姿ではなく、踏みとどまる人間の強さが描かれている。

生々しいストーリーにアーティスティックな映像が印象深い

数々の現代の社会問題をストーリーに組み込んでいるため、本作を通し、現実に起きている事件を想像したり思いを馳せたり、当事者の状況をリアルに感じられることも多い。しかしその一方で、回想のフラッシュバックや人物の内的描写など、アーティスティックな手法を使う、強い印象を残すシーンもある。日本で日常的に耳にはしない拳銃の発砲音も聴かせる。

そのバランスにより、生々しくも泥臭いストーリーが、美しく劇的な映像と相まって深く記憶に刻まれる。

主人公を想う者たちが紡ぐクライマックス

彩人は、暴力で日常を奪われてしまう。しかし、主人公である彩人がそんな状況になっても、彩人を想う者たちの献身により、その後も物語は紡がれる。事件の真相を知ろうと食い下がる友人、認知機能を失っても異常を察する母親、彼女を引き続きケアする恋人……。残された側によって、最後まで気が抜けない展開を見せる。

現実でもそうだ。誰かが失われた後にも、残された者が思いを馳せることでその人物を再び生かすのである。

中でも、兄への想いを胸に試合に挑む弟・壮平の格闘技の場面は、長回しかつ丁寧に作り込まれて、本作の大きな見せ場となっている。演じる福山翔大は、本作のため格闘技の訓練を積んだというだけあって、格闘技として迫力あるパフォーマンスを見せている。

 

作品ニュース

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10月末しめきり。詳細は、作品公式アカウントのXをご覧ください。

オススメしたい『若き見知らぬ者たち』

  • 磯村勇斗はじめ、キャストたちの深みある演技
  • ときにアーティスティックな手法の映像
  • リアルな社会問題を組み込んだストーリー
  • 残された者が紡ぐクライマックス

『若き見知らぬ者たち』作品情報

 【あらすじ】

風間彩人(磯村勇斗)は、亡くなった父の借金を返済し、 難病を患う母、麻美(霧島れいか)の介護をしながら、 昼は工事現場、夜は両親が開いたカラオケバーで働いている。彩人の弟・壮平(福山翔大)も同居し、同じく、 借金返済と介護を担いながら、 父の背を追って始めた総合格闘技の選手として日々練習に明け暮れている。

息の詰まるような生活に蝕まれながらも、 彩人は恋人の日向(岸井ゆきの)との小さな幸せを掴みたいと考えている。 しかし、彩人の親友の大和(染谷将太)の結婚を祝う、 つつましくも幸せな宴会の夜、 彼らのささやかな日常は、思いもよらない暴力によって奪われてしまう……。

原案・脚本・監督:内山拓也
出演:磯村勇斗、岸井ゆきの、福山翔大、染谷将太、
伊島空、長井短、東龍之介、松田航輝、尾上寛之、カトウシンスケ、ファビオ・ハラダ、大鷹明良、
滝藤賢一、豊原功補、霧島れいか ほか

配給:クロックワークス
<2024年製作/119分/PG12/日本・フランス・韓国・香港合作>

2024年10月11日(金) 新宿ピカデリーほか全国公開

©2024 The Young Strangers Film Partners

youngstrangers.jp

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(本ページの情報は2020年6月のものです。最新の配信状況は U-NEXT サイトにてご確認ください。)

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