【11/29公開】『雨の中の慾情』つげ義春の短編原作から始まる、片山慎三監督の独創性溢れるラブストーリー

『岬の兄妹』『さがす』の片山慎三監督が、漫画家・つげ義春の短編「雨の中の慾情」や70～80年代に発表されたつげ作品の要素を融合させて脚本も担当した、独創性溢れる数奇なラブストーリー。

メインキャストには成田凌、森田剛、中村映里子。台湾にて撮影された昭和初期の日本を感じさせるレトロな町並みも印象深い。タブーにまでも手を伸ばし、切なくも激しいめくるめく男女の性愛と純愛を展開させる。

2024年11月29日（金）TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開

主人公は漫画家の義男

冒頭、つげ義春の短編『雨の中の慾情』から始まる本作。激しい雷雨の中、欲情にかられ、ゆきずりの男女が泥に塗れて絡み合う。そんな夢から目覚めた男が主人公が、成田凌演じる貧しげな漫画家の義男だ。「漫画家の義男」と聞けば、ちょっぴり名前がズレてはいるが、原作者のつげ義春とのつながりをイメージするだろう。

ちなみに、先々もさらに小さなズレや気になるポイントを感じることがちょくちょくあるかもしれないが、初回はあまり引っかかりすぎず、展開する出来事にひたることをおすすめしたい。そのほうが、片山慎三監督の術に見事、すっぽりハマることができるかもしれないからだ。

撮影は台湾、美しくも奇妙な映像、深まる謎

短編『雨の中の慾情』の場面はあっという間に終わってしまうが、その先もつげ義春が70～80年代に発表した『夏の思いで』『池袋百点会』『隣りの女』などが要素として現れる。本作は、片山監督によるオリジナルストーリーではあるが、全編にわたりつげ作品が現れ続けるのだ。

また、ディープなファンをもつつげ義春ワールドが、美術や照明によって表現されるのも楽しい。あちこちに目が描かれ、丁寧にヨゴシをかけたように古びている壁。テント芝居を思わせるような怪しい照明。そして台湾中部の嘉義市にてオールロケを敢行。そのレトロな町並みの雰囲気が、本作には存分に生かされている。

エロスとグロテスク、その中でキラキラと、あるいは怪しげに輝くもの。味わいと美しさが混じり合い、深まる謎とともに展開されるめくるめく映像美には、深い魅力と贅沢さを感じるだろう。

戸惑いを飲み込んだ先に待ち構えるラブストーリーの結末

男たちのファム・ファタール（運命の女）である福子を演じる中村映里子。その体当たり演技をはじめ、大胆な性愛描写も多い本作は、R15+（ 15歳以上が観られる）指定になっている。

今までの片山監督作品に登場してきた性愛描写は、生々しくあっても不快さではなく、本能的な切迫感を感じさせるものであった。本作も同様あるが、ラストには、純粋さを濃縮したような「答え」が待っている。無垢な愛に胸が締め付けられながら、この作品がラブストーリーであることを思い知らされるだろう。

作品ニュース

11月30日に舞台挨拶が決定

◢◤『#雨の中の慾情』
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公開記念舞台挨拶
✧˖° 開催決定！✧˖°
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◾️日時：11/30(土)
・9:30 の回 (上映後舞台挨拶)
・13:05 の回 (上映前舞台挨拶)
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◾️会場：#TOHOシネマズ日比谷スクリーン12(予定)
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◾️登壇者 (予定)：成田凌、中村映里子、森田剛、竹中直人（※敬称略）… pic.twitter.com/DQCbCwFDIc
— 映画『雨の中の慾情』 (@ame_yokujo) 2024年11月15日

オススメしたい『雨の中の慾情』

つげワールドを保ちながら片山慎三のオリジナルストーリーが展開
成田凌、森田剛、中村映里子、メインキャストの絶妙なバランス
台湾オールロケによる、レトロで幻想的な映像美
欲情の先に待ち構える無垢な愛の結末

『雨の中の慾情』作品情報

【あらすじ】

奇妙な夢から醒めた、売れない漫画家・義男（成田凌）。夢の内容を漫画に起こそうと机に向かっていると、大家（竹中直人）から引っ越しの手伝いに駆り出される。小説家志望の知人・伊守（森田剛）と共に3人で向かうと、その家の寝室には一糸まとわぬ状態で寝ている美しい未亡人・福子（中村映里子）がいた。思わず見とれて夢中でスケッチを始める義男。そのさなか目を覚ました福子は「触るんじゃなくて描くんですね」と艶やかに声をかける。

町の喫茶ランボウで働き始めた福子のもとには、老いも若きも連日男たちが通い詰める。義男もその例外ではなく、岡惚れ状態を伊守に見透かされ、からかわれてしまう。その伊守から「実は福子と付き合っている」と明かされ、落胆する義男。

ほどなく、福子と伊守が義男の家に転がり込んできて、義男は福子への潰えぬ想いを抱えたまま、三人の奇妙な共同生活が始まるが……。

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