
ミャンマーで差別と迫害を受け、故郷を追われたロヒンギャ難民の幼い姉弟の過酷な旅を描いたロードムービー。スリリングでありながら、冷徹なまでに現実を映し出す。
手がけたのは『僕の帰る場所』『海辺の彼女たち』で移民の姿を丹念に描いてきた藤元明緒監督。これまで以上に切実で、剥き出しの現実に迫る一作だ。
2026年4月24日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、kino cinéma新宿、ポレポレ東中野ほか全国ロードショー
ロヒンギャ難民の姉弟が歩き続ける過酷な旅

物語は突然すべてを奪われた姉弟が、生き延びるために歩き続ける“旅”。だがそれは、決して希望に満ちた移動ではない。彼らの前に広がるのは、暴力、飢え、搾取といった非情な現実の連続なのだ。娯楽的な緊張感のスリルではなく、「次の瞬間に何が奪われるかわからない」という生存そのものの危機感として迫ってくる。
藤元監督はこの作品について「物語を構想する中で、彼らが故郷を追われ、安住の地を求めて歩み続けるその道のりをドラマとして再現したいと考えた」と語っている。言葉通り本作は、社会問題の提示にとどまらず、“移動し続ける苦しさ”そのものを物語の核として据えている。
子どもたちの圧倒的な存在感、現実に肉薄する映像

そんな過酷な状況の中で、ひときわ強い輝きを放つのが主演の子どもたちである(2人は実の姉弟でもある)。演技の枠を超え、実際にその場で生きているかのような存在感を見せる彼らの姿は、観客に強烈な没入感を与える。
言葉は少なく、視線や仕草、沈黙の間に込められた感情が雄弁に語りかけてくる。無垢さと逞しさ、ときに恐怖と希望が同居する表情は、観る者の感情を強く揺さぶる。
さらに圧倒的なのは、映像のリアリティ。手持ちカメラの揺れや自然光を活かした撮影、過剰な演出を排した音響が相まって、まるでその場に立ち会っているかのようで、ドキュメンタリーと見紛う生々しさを放つ。
フィクションであることを忘れさせる質感は、単なる映像スタイルではなく、作品全体に一貫した“現実を掬い取る意志”の表れと言えるだろう。
そのリアリティを支えているのが、徹底したリサーチであることは想像に難くない。ロヒンギャ難民の生活、文化、言語、そして彼らが置かれている政治的・社会的状況の積み重ねが、作品の土台を形成し、一つひとつの出来事や風景が「現実の断片」として迫ってくる。
観終えた後に残るのは“強烈な体験”

これまでも日本社会の中で周縁化されがちな人々に寄り添い、その存在を可視化してきた藤元明緒監督。『僕の帰る場所』では在日ミャンマー人家族の葛藤を、『海辺の彼女たち』では技能実習生として来日した女性たちの過酷な現実を描いた。そして本作『LOST LAND/ロストランド』では、さらにグローバルで根源的なテーマに踏み込む。国家や制度に翻弄される個人の姿への眼差しは変わらないが、そのスケールと緊張感は一段と強く「日本人監督の作品」という意識をほとんど感じさせない。
観終えた後に残るのは単純な感動ではなく、強烈な体験だ。そして、この現実から目をそらさずにいられるかと問いかけてくる。今年公開作品の中でも「観られるべき1本」と言えるだろう。観る者に深い余韻と問いを残す、力強い映画である。
作品ニュース
無垢な姉弟に“観客が目撃される”舞台挨拶
4/25(土)2つの劇場で、主演を務めたソミーラ&シャフィの舞台挨拶が決定。しかし、ロヒンギャである彼らは無国籍のため残念ながら来日することは叶わず、Zoomでのオンライン登壇という形に。「できれば満員の観客の前で2人を迎えてあげたい」と願う監督のメッセージです。
●4/25(土)12:30の上映後 ポレポレ東中野
●同日 14:15の上映後 kino cinéma新宿
【一生に一度のお願い】
— 藤元明緒 AKIO FUJIMOTO (@akio_fujimoto) April 21, 2026
今週末から映画『LOST LAND/ロストランド』がいよいよ公開されます。そこで主演を務めてくれたソミーラ&シャフィの舞台挨拶が決定しました。… pic.twitter.com/WjAHwzfzf7
オススメしたい『LOST LAND/ロストランド』

- 非情な描写も取り入れた命懸けのスリリングな展開
- 魅力あふれる無垢な姉弟が主演
- 日本人監督作であることを忘れるロヒンギャ難民の暮らしに迫る没入感
- ドキュメンタリーのような超リアルな映像
- 物語の土台を支える徹底したリサーチと再現性
『LOST LAND/ロストランド』作品情報
【あらすじ】
難民キャンプで暮らす5歳のシャフィと9歳の姉ソミーラ。2人は家族との再会を願い、叔母と共に遠く離れたマレーシアへ旅立つことに。パスポートを持てない彼らは密航業者に導かれるままに漁船へと乗せられる。自然の猛威や人身売買の危機に阻まれながらも、姉弟は過酷な道のりを必死に乗り越えていく。
脚本・監督・編集:藤元明緒
出演:ムハマド・ショフィック・リア・フッディン、ソミーラ・リア・フッディン ほか
配給:キノフィルムズ
原題:HARÀ WATAN
<2025年 / 日本=フランス=マレーシア=ドイツ / ロヒンギャ語 / カラー / 1.5:1 / 5.1ch / ドラマ / 99分 / DCP>
2026年4月24日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、kino cinéma新宿、ポレポレ東中野ほか全国ロードショー





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