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【5/8公開】『シンプル・アクシデント/偶然』復讐に燃えるも「本当にその相手なのか?」という疑念が…イランの巨匠ジャファル・パナヒ監督の新作

イラン政府の弾圧下でも創作を続けてきたジャファル・パナヒ監督による社会派スリラー。偶然の事故をきっかけに始まる復讐劇は、「本当にその相手なのか?」という疑念とともに揺らぎ続ける。個性的な人物たちが交錯する群像劇と、緊張感の中に差し込まれるユーモアが印象的な、余韻の残る一作。

2026年5月8日(金)より新宿ピカデリーヒューマントラストシネマ有楽町Bunkamuraル・シネマ渋谷宮下ほか全国公開

「本当に復讐の相手なのか?」疑問が揺らぎ続ける群像劇

本作『シンプル・アクシデント/偶然』は、背景も含め強い関心を引く作品である。イランの名匠ジャファル・パナヒはイラン政府から弾圧を受け、7カ月の収監を経験し、長年にわたり映画制作や渡航を禁じられてきた監督。それでも作品を発表し続け、本作にもそうした現実が確かに影を落とす。ただし、語り口は決して重すぎず、観客を自然と物語に引き込む親しみやすさも備えている。

物語は、ある“偶然の事故”をきっかけに始まる復讐劇。しかし「本当にこの人物は復讐の相手なのか?」という疑問が揺らぎ続ける構造になっている。このテーマ自体は『死と乙女』や『マヤの秘密』などの作品でも扱われてきたが、本作の特徴は“復讐する側”が複数いる群像劇である点。それぞれの確信や迷いが交錯し、物語は単純な善悪では割り切れない方向へと展開していく。

魅力的なキャラ、スリル&ユーモアの絶妙なバランス

登場人物たちはいずれも個性的で魅力的。お人よしで実直なワヒド、理知的で非暴力を重んじるシヴァ、繊細ながら率直な花嫁ゴリなど、それぞれ異なる感情と背景を抱え、価値観は必ずしも一致しない。登場人物が増えるほどに、物語が多層的に広がっていくのが興味深い。“復讐する側”のメンバーが出揃ったところへ、“復讐される側”の家族までも関わり、状況と感情はより複雑さを増していく。

スリラーとしての緊張感も見どころ。義足の男を車に乗せたまま移動するという設定自体が不穏であり、そこに新たな人物が加わるたびに空気が変化していく。「関わりたくない」という思いがある者も「それでも許せない」という感情の間で揺れ動きながら、彼が本当に“その人物”なのかを確かめようと執着する過程は、力強いサスペンスを生む。一方で、意見の食い違いや微妙な間から生まれるユーモアも印象的。シリアスと可笑しみが自然に同居している点も、本作の大きな魅力だろう。

作品のリアリティを支える俳優たちの生き様

パナヒ監督作品ならではともいえる、キャストの背景も興味深い。ワヒド役のワヒド・モバシェリは俳優であると同時にタクシードライバーとして働いており、シヴァ役のマルヤム・アフシャリは空手の審判員という異色の経歴を持つ(が、演じる力は決して引けを取らない)。花嫁ゴリを演じたハディス・パクバテンは舞台俳優であり、義足の男を演じるエブラヒム・アジジはプロの俳優ながら、検閲を通過した作品への出演を拒む姿勢を貫いている。それぞれの立場が、作品のリアリティを静かに支えている。

“偶然の事故”から始まる物語は、復讐劇の枠を超え、記憶や正義といったテーマへと広がっていく。人はどこまで他者を憎み、裁けるのか。その判断はどこまで確かなのか。そうした問いが、イランという社会的背景と重なりながら浮かび上がる。

各国の映画祭で高く評価されている完成度であり、重い題材を扱いながらも、物語としての面白さと観やすさを兼ね備えている本作。劇場でじっくり向き合いたい、余韻の残る一作だ。

オススメしたい『シンプル・アクシデント/偶然』

  • 弾圧を受けながら映画を作り続ける名匠ジャファル・パナヒ監督の新作
  • 「本当に復讐の相手なのか?」という疑問が揺らぎ続ける復讐劇
  • 思わず引き込まれるスリル&ユーモアの絶妙なバランス
  • 各キャラの濃さとその掛け合いに魅了される群像劇

『シンプル・アクシデント/偶然』作品情報

【あらすじ】
かつて不当に投獄されたワヒドは、ある偶然の事故によって、⼈⽣を奪った残忍な義⾜の看守と出会う。ワヒドは咄嗟に男を拘束し、荒野に⽳を掘って埋めようとするが、男は「⼈違いだ」と⾔う。実はワヒドは、看守の顔を⾒たことがなかった。男は、本当に復讐相⼿なのか? ⼀旦復讐を中断し、看守を知る友⼈を訪ねるが…。

www.youtube.com

監督・脚本:ジャファル・パナヒ(『白い風船』『チャドルと生きる』『人生タクシー』『熊は、いない』)
出演:ワヒド・モバシェリ、マルヤム・アフシャリ、エブラヒム・アジジ、ハディス・パクバテン、マジッド・パナヒ、モハマッド・アリ・エリヤ ほか

英題:IT WAS JUST AN ACCIDENT
協力:ユニフランス
配給:セテラ・インターナショナル
<2025年/フランス・イラン・ルクセンブルグ/ペルシャ語/103分>
日本語字幕:大西公子
字幕監修:ショーレ・ゴルパリアン

2026年5月8日(金)より新宿ピカデリーヒューマントラストシネマ有楽町Bunkamuraル・シネマ渋谷宮下ほか全国公開

simpleaccident.com

©︎LesFilmsPelleas

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(本ページの情報は2020年6月のものです。最新の配信状況は U-NEXT サイトにてご確認ください。)

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