10月6日(土)、すごい映画が公開される。モノクロ映像の中で展開される、濃厚で純粋なエロス、神話的なFreak(フリーク)の登場……さまざまな昭和が蘇る、ノスタルジックな世界。「エッこれが新作?!」と思うかもしれないが、観ていればやがてわかる。これはまごうことなき、2017年に撮り上げられたばかりの作品だ。リスクを恐れる平成慣れした日本人には撮り得ない「衝撃的な171分」なのだ。
監督は、まさに昭和が終わりを告げようとする1988年末に日本を飛び出し、フランスで表現活動にいそしんできた現役の舞踏家・岩名雅記(いわな・まさき)、73歳。「平成の日本の30年間」を知らないという、身体的芸術家の作品だ。岩名監督の脳裏には、エロスやグロテスクが溢れていた「昭和の映画芸術」がぎっしり詰まっている。そして監督は「あの時代」を今も信じているのだという。
見慣れぬ俳優たちは舞踏家
多くの観客にとって、知ってる俳優は登場しないはず。なぜなら、出演者のほとんどがパリ在住の舞踏家、ダンサー、パフォーマーなのだ。「舞踏」という芸術自体、馴染みのない人も多いかもしれないが、今や俳優として著名な田中泯も、元々は舞踏家。”表現”という行為に、精神的にも身体的にも高いポテンシャルを秘めている芸術家、それが舞踏家といえるだろう。
物語の主人公・男性Kは、パリに渡った日本人のパフォーマー。Kは近くに公演を控えていて、そのパフォーマンスのために必要なものがあった。それは「6ミリの厚さの板ガラス」。絶対に6ミリじゃないとダメなんだという……。
そこで6ミリガラスを求めて飛び込んだパリのガラス店で、運命の女性に出会ってしまう。バレリーナを目指してパリにやってきたが、夢半ばで敗れたという寂しい人妻・朝子だ。やがて2人は、恋に落ち、故郷・日本への旅に出ることに……。
「3人の運命の女」の間で揺れる主人公
パリを離れ、朝子と「小さな恋」の旅へと出るK。だが、実は朝子と出会った同日、帰り道に地下鉄で見世物のように衆目にさらされていた、もう1人の運命の女性、Freakのシャルロットにも出会っている。そのときKはシャルロットに「夢で会いましょう」と告げられるのだが、その言葉通り、しばらくKとシャルロットは、現実には再会しない。肉体は離れ離れなのだが、折に触れ、シャルロットはKの夢に現れる。
「朝子とシャルロットの間で揺れるのか」というと、事はそんなに単純ではない。さらにKは、今は亡き前妻スイコの濃い記憶があり、忘れられずにいる。つまりKは、3人もの運命の女性の間で揺れ続けるのだ。脳裏に2人の女性を抱きつつ、Kは朝子との旅路に向かう。
日本・F県には、また新たなキャラクターが
日本に渡ったKと朝子は、F県の廃村にたどり着き「二人キリ」的な愛欲に溺れて数日を過ごす。しかしこの地で、そんな2人を密かに見つめる、強烈なキャラクターたちが新たに登場する。
彼らの登場をきっかけに「市井の小さな恋物語」は流れを大きく変え始める。このあたりはぜひ劇場で味わっていただきたいところなので、詳細は控えるが、物語は冒険活劇へ、さらに「壮大な神話的叙事詩」へと飛翔することになる。
『シャルロット すさび』見どころポイント
- 「昭和の邦画」のエッセンスが香り、アングラ感漂うモノクロ作品
- エロス、グロテスク、死生観、神話、冒険、笑い……あらゆるテーマが満載
- 監督自身の経験や精神が投影され、作品に強い思念が漂う
- 個性的出演者、その多くが舞踏家やダンサー
- ストーリーは男女の恋愛から始まり、大きく展開していく
あらゆる昭和の日本映画的要素が詰まっている。ATG、ピンク映画、寺山……もしかしたら円谷プロも? 昭和の終わりに日本と飛び出した岩名監督は、日本にいた頃こよなく日本映画を愛したという。本作にはそんな「昭和の映像」の濃厚なエキスがたっぷり注入されている。
また、作品には監督自身の経験が色濃く投影されているという。そのためなのか、スクリーンからは、借り物では出し得ない、強い思念が滲み出してくるようだ。
作品ニュース
クラウドファンディング達成の注目作
上映宣伝費サポートのクラウンドファンディングで、終了間近に監督自身がツイッターで呼びかけを行ううちに、目標額を見事達成している。公開前から期待と注目を集めている話題作なのだ。
110%行ってしまいましたあ!
— 岩名雅記 (@masakiiwana) August 31, 2018
ラスト3時間、奇跡の猛迫撃で。
皆様に大感謝です!https://t.co/KSJkHzXQAK https://t.co/KSJkHzXQAK
世界の映画祭への招待作品に
『シャルロット すさび』は以下の映画祭で公式招待作品となっている。
・アクロス アジア国際映画祭2018(イタリア)
・オルタネイティブ国際映画祭2019 (キプロス共和国)
・ポルトベロ国際映画祭2018(イギリス)
岩名監督の撮った長編映画は、本作で4本目。そして過去3作品も、さまざまな映画祭で上映されおり、岩名監督のすでに世界でも注目されているのだ。
速報です。私どもの映画『シャルロット すさび』が英国のポルトベロ国際映画祭にセレクトされました。上映は9月15日。ニコシア、サルディニアに続き3本目です。感謝。
— 岩名雅記 (@masakiiwana) August 26, 2018
おすすめしたい『シャルロット すさび』
「ああ、こんなものまで!」と思わず身悶えするような「昭和のカケラ」がいっぱいに詰まっている『シャルロット すさび』。ジャンル分け不可ながら、あらゆるジャンルを内包している。それでいて破綻せず、世界観は一貫している。ちなみに「すさび」とは「遊び」あるいは「荒び」と表記し、ことの成り行きにまかせるといった意味がある。
本作は、新宿K’sシネマでの2週間の公開を予定。今回を逃すと、なかなか都内で観られる機会がないかもしれないので、ぜひこの機会にお見逃しないようおすすめしたい。
『シャルロット すさび』作品情報
【あらすじ】現代のパリ。自身のアート活動に深くのめり込んだ為に前妻スイコを失った日本人パフォーマ ーKは以前のようにシンバルを使ったパフォーマンスができずにいた。 初夏のある午後、K は公演に使う板ガラスを買うために、あるガラス店を訪れる。そこでK は日本人の女主人・朝子に出会う。何故かほろ酔いの朝子。
同じ日突然の雨でメトロ構内に入り込んだKが見たのは大勢の人びとの視線にさらされるイタリア人のフリーク女性・シャルロットだった。「夢の中で逢いましょう」 と告げるシャルロット。その晩、Kはシャルロットとのエロティックなサイドショーの夢をみる……。
監督・脚本:岩名雅記
キャスト:クララエレナ・クーダ、成田護、高橋恭子、大澤由理、ムッシュ・デー、鈴木あい、岡崎弘、クザマ・レダ ほか
配給:Solitary Body
<2017年/日仏合作/171分/白黒+パートカラー 16:9/デジタル撮影>
2018年10月6日(土)新宿K’sシネマ・レイトショー&モーニングショーにて公開
©La Maison du Butoh Blanc 2017 白踏館
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(本ページの情報は2018年10月時点のものです。最新の配信状況は U-NEXT サイトにてご確認ください。)