東京・ミニシアター生活

主に都内のミニシアターで上映される新作映画の紹介をしています。

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【8/17公開】『鉄道運転士の花束』ユーモア溢れるセルビア映画! 逃れられぬ轢死事故…鉄道運転士のキツい人生

f:id:kappa7haruhi:20190811012726j:plain鉄道運転士の尽きぬ悩みと生き様を、ブラックコメディとロマンス、そして親子愛で彩ったユニークな物語。エミール・クストリッツァ監督『アンダーグラウンド』で通称”クロ”役を演じたラザル・リストフスキーと、その妻ヴェラを演じたミリャナ・カラノヴィッチ…2人の息の合った共演が堪能できる希少なセルビア・クロアチア作品。

2019年8月17日(土)より、新宿シネマカリテほか全国順次公開

鉄道運転士を題材に、ブラックコメディを選択

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人を旅に誘う鉄道は愛される存在だ。美しい車窓の景色に、味のある車体、心地よいリズミカルな振動…鉄道を愛してやまない「鉄道オタク」と称される人の愛し方もさまざま。写真を撮ることに喜びを得たり、乗ることを楽しんだり、はたまた時刻表にロマンを感じたり…。

古き良き時代には子どもが憧れる職業だった鉄道運転士。しかし、この伝統的な職業、実際の勤務にあたって、どうしても避けられないのが、事故だ。中でも人身事故は、運転士がいくら腕を磨こうとも、避けることができないもの。

本作を撮ったミロシュ・ラドヴィッチ監督が敬愛する祖父は鉄道運転士であり、その長年の勤務の中で、多くの事故を引き受けることになったという。このエピソードを映画にできないか、と長期間試行錯誤した末に、ブラックコメディというジャンルが浮かんできたそうだ。

そして人間の死を素材としながら、観客を笑わせ、しかも愛とロマンに満ちた、高度で濃密な作品が誕生した。

『アンダーグラウンド』ファンは見逃せない、素晴らしいキャスト

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セルビア、クロアチアで作られた新作映画を日本の映画館で観られる機会は、そう多くはない。それでも旧ユーゴスラビア出身のエミール・クストリッツァ監督は日本でもかなり人気が高く、旧作が何度も繰り返し映画館で上映されている。最新では(日本では)2017年に『オン・ザ・ミルキー・ロード』が公開されたが、これも9年ぶりに撮った作品で、かなり久々といえる。

『オン・ザ・ミルキー・ロード』のヒロインはイタリアの女優だったし、1996年に多くのファンを魅了したクストリッツァ監督『アンダーグラウンド』の魅力的な出演者には、一体どこで会えるというのだ!実際、彼らが日本の映画館のスクリーンに他の作品で登場する機会は、数えるばかりだったのだ。

そしてようやく!…本作『鉄道運転士の花束』では『アンダーグラウンド』主演の1人、ラザル・リストフスキーが主人公・イリヤ役に。待ってました!と声をかけたくなる、小気味好い演技を観せてくれる。

そしてイリヤに想いを寄せる女性・ヤゴタ役のミリャナ・カラノヴィッチもやはり『アンダーグラウンド』に出演していた女優。2人は「バルカン(旧ユーゴスラビア地域)のスター」と呼ばれているそうだ。この魅惑のキャスティング作品を逃す手はないだろう。

また、若手のペータル・コラッチ、ニーナ・ヤンコヴィッチの魅力にも眼を見張るものがある。実に素晴らしいキャストが揃っていると、しみじみ感じ入る作品だ。 


ロマンあふれる演出…美術と音楽も感じどころ

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鉄道運転士・イリヤとたまたま出会った孤児の少年シーマが、義理の父子となり、やがて少年が成長。思いがけず父となったイリヤの不器用な愛の形が、おかしくも愛おしく楽しめる。

鉄道で繋がるこの2人の父子関係を中心に、ストーリーは進んでいくが、その中でも麗しい女性たちが君臨し、ロマンス部分も描かれる。思い出を振り返るおとぎ話的美しきパートも、現実味があるのだかないのだか、というユニークな性描写も、振り幅ある演出が観客を飽きさせない。

車両のような生活空間の、やや演劇的な美術、そして軽快な音楽なども相まって、セルビア・クロアチア作品ならではの味わいいっぱい世界観が、心ゆくまでじっくりと楽しめる。

作品ニュース

ポストカード付き前売り券発売中

プレゼント付きのお得な前売券は、上映館にて。

 
新宿シネマカリテにて上映

上映館の新宿シネマカリテが、本作仕様に飾られている。

 

オススメしたい『鉄道運転士の花束』

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  • セルビア出身キャスト&スタッフ
  • 上質でアクの強いユーモアがいっぱい
  • 鉄道好きにオススメのユニークな美術
  • 父子愛とロマンス溢れるストーリー
  • 軽快でユーモラスな音楽

なかなか日本では出会える機会が少ないセルビア映画。しかもユニークで、とっておきの魅力を放つオススメ作、お見逃しなく!

『鉄道運転士の花束』作品情報

【あらすじ】
イリヤは60歳で独身の”鉄道運転士”。キャリアの中で30名近くの「殺人」記録を残し、引退しようとしている。 19歳になった養子シーマはそんな義父にあこがれて鉄道運転士に。しかし避けて通れないはずの事故になかなか遭わないせいで、シーマは不安にさいなまれて、緊張は頂点に。眠れぬ毎日に疲弊して…。

監督・脚本:ミロシュ・ラドヴィッチ
出演:ラザル・リストフスキー(『アンダーグラウンド』『スパイ・レジェンド』)、ペータル・コラッチ、ミリャナ・カラノヴィッチ(『パパは、出張中!』 『サラエボの花』) 、ニーナ・ヤンコヴィッチ、ヤスナ・デュリチッチ、ムラデン・ネレヴィッチ、ダニカ・リストフスキー ほか
音楽:マテ・マチシッチ、シムン・マチシッチ
美術:アリョーシャ・スバジッチ
衣装:ドラギカ・ラウシェヴィッチ

撮影:デュシャン・ヨクシモヴィッチ
編集:ジョルジェ・マルコヴィッチ

原題:Dnevnik masinovodje
配給:オンリー・ハーツ 後援:セルビア共和国大使館
<<2016年/セルビア、クロアチア合作/85分/2.35:1>
字幕:佐藤まな
2019年8月17日(土)より、新宿シネマカリテほか全国順次公開
©ZILLION FILM ©INTERFILM

tetsudou.onlyhearts.co.jp

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(本ページの情報は2019年8月時点のものです。最新の配信状況は U-NEXT サイトにてご確認ください。)

【8/3公開】『メランコリック』深夜に殺人現場と化する銭湯でバイト…東大出身ニート青年の成長記

 

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近所の銭湯でバイトを始めたら、そこでは深夜、殺人が行われていた!…そんな奇妙な設定から、変幻自在な展開を見せる、クライム&青春ストーリー。笑いとサプライズいっぱいの愛すべきこの作品は、田中征爾監督の長編1作目にして東京国際映画祭で監督賞を受賞。同世代の3人による映画製作ユニット「One Goose(ワングース)」が放った、驚きのエンターテイメント作品!

2019年8月3日(土)アップリンク渋谷アップリンク吉祥寺イオンシネマ港北ニュータウンほか全国順次公開

突飛な設定ながら惹きつけられる、コメディタッチの脚本

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東大卒のほぼニート(フリーター)って、いるのだろうか?「…まあ、いるだろう」と本作を観ると納得させられる。ギラつく欲望も切迫した焦りもない、のんびり屋の主人公だ。

例えば、体質に合っていて勉強に熱中、割とゲーム感覚で楽しみつつ受験をし、東大に合格。引き続き勉学を楽しんでなんとなく卒業に至ったが、さあこの先どうする?…おそらく主人公・和彦にはそんな過去がありそうだ。

和彦の両親はクセのないのがクセ、というほどの善き夫婦。いかにも和彦のような、うだつが上がらないがおっとりした息子が育ちそうな家庭だ。和彦本人はやりたいことも特にないが、正直このままでいいとは思っていない。でも今ひとつ奮起できない。古くても実家もあるし、母の作るご飯は美味しいし…。

本作には大胆な設定がいくつもある。しかし、細部がリアルなので、つい納得させられてしまう。そして、その細部の作りの丁寧さで、さまざまな笑いを生んでいく見事な手腕。脚本の素晴らしさから作品にどんどん惹きつけられる。セリフのやりとも心地よく、キャラクターにはみな愛嬌があるのだ。

まさかの? 本格アクション…アクション映画好きにもおすすめ!

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「お風呂で死体処理が行われる」というシチュエーションは、あらゆるフィクションに登場する。リック・ベッソン監督の映画『ニキータ』や桐野夏生の小説『OUT』e.t.c.…。そして現実でも、風呂場で行われた殺人事件というのも、ときどき耳にする。確かに風呂場なら証拠を隠蔽しやすく、掃除も比較的楽にできて、理にかなっている。

しかし本作の「通常営業中の銭湯で、深夜には繰り返し殺人が行われる」という状況、閃きとしては面白いし、あらゆる作品へのオマージュを感じるのだが。それにしても超えるべき山が高すぎないか?……などとと考えながら観ていると、いきなり(演技としての)殺人の手際の良さに、思わず目を奪われる。

本作はなんと、アクションまで素晴らしい。しかも作品のウリといっていいほどのハイレベル。実は、本作の首謀者の1人(「One Goose」)で、キャストでもある磯崎義知が、タクティカル・アーツ(護身術道場)のディレクターという肩書をもっているのだ。作品の本格的アクションは、本物の武道からきているとわかれば、レベルの高さも納得だ。

作品の成長は、観客次第…未知数のポテンシャルに気分がアガる!

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不思議なもので、すでに撮影は終わっていても映画には伸び代がある。観客によって育てられる、という感じ。話題になり動員が増えていく作品は、客層を広げ、リピーターを生む。口コミで作品を観た人はリアルな知人と感想を語って、リピーターは新たな視点を発見しSNSで発信する。そんな中で作品は、生き物のように輝き始めることもある。

本作はワークショップから始まり爆発的にヒットした上田慎一郎監督『カメラを止めるな!』と比較されることも多いらしい。しかし、前評判が異様に高かった『カメ止め』に比べると本作は、まだ未知数という印象だ。

今回、主演兼プロデューサーをつとめた、30代の無名(失礼!)の俳優・皆川暢二の情熱から始まったという本作は、すでに東京国際映画祭・日本映画スプラッシュ部門で監督賞を受賞という快挙を遂げている。しかし本作がどこまで成長するのかは「観客の腕にかかっている」のかもしれない。

もちろん、大化けに値する、魅力に溢れた作品であることは間違いない。

作品ニュース

応援コメントが続々と

応援の声が次々届いていると、Twitterの公式アカウントで発信中。

 
宣伝も自ら行う「One Goose」

本作を機に、映画製作ユニット「One Goose(ワングース)」を立ち上げた、主演兼プロデューサーの皆川暢二、監督をつとめた田中征爾、俳優兼アクション等を担当した磯崎義知の3名。日々自ら、宣伝活動を展開中とのこと。渋谷や吉祥寺でその姿を見かけることもあるかもしれない。

 

オススメしたい『メランコリック』

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  • 細部までコメディセンスの光る会話
  • 本格アクションシーンが満載
  • 手に汗握るサスペンス的展開
  • それぞれのキャラクターが魅力的
  • ゆるやかな感動を与える主人公の成長

本作は、主人公・和彦の成長物語。のんびりやのうだつの上がらぬ男・和彦が、コメディ、サスペンス、アクションと様々なエンタメ要素をかいくぐり、最終的にどこに着地するのか、ワクワクしながら見守ることができる。

『メランコリック』作品情報

【あらすじ】
東大卒だが、うだつの上がらぬ日々を過ごしていた和彦。ある夜、母がさっさと風呂の栓を抜いてしまったため、珍しく近所の銭湯「松の湯」に出かけることに。するとたまたま高校時代の同級生・百合に再会。声をかけられて久しぶりに心が動く。そしてこの夜をきっかけに、和彦は松の湯でアルバイトを始めることにした。ところが松の湯は、深夜に「人を殺す場所」として貸し出しをしている危険な銭湯だった!そして、その事実を知った和彦は…。

監督・脚本・編集:田中征爾
出演:皆川暢二、磯崎義知、吉田芽吹、羽田真 、矢田政伸 、浜谷康幸、ステファニー・アリエン、大久保裕太、山下ケイジ、新海ひろ子、蒲池貴範 ほか

撮影:髙橋亮 助監督:蒲池貴範 録音:宋晋瑞、でまちさき、衛藤なな
特殊メイク:新田目珠里麻 TAディレクター:磯崎義知
キャスティング協力:EIJI LEON LEE チラシ撮影:タカハシアキラ

製作:OneGoose 製作補助:羽賀奈美、林彬、汐谷恭一
プロデューサー:皆川暢二

宣伝:近藤吉孝(One Goose)  チラシデザイン:五十嵐明菜
後援:VーNECK、松の湯 宣伝協力:アップリンク
配給:アップリンク、神宮前プロデュース、One Goose
<2018年/カラー/日本/DCP/シネスコ/114分>


2019年8月3日(土)アップリンク渋谷アップリンク吉祥寺イオンシネマ港北ニュータウンほか全国順次公開

 

www.uplink.co.jp

【受賞歴】
第31回 東京国際映画祭 日本映画 スプラッシュ部門 監督賞
第21回 ウディネファーイースト映画祭 新人監督作品賞
第19回 ニッポン・コネクション ニッポン・ヴィジョンズ観客賞

【出品歴】
上海国際映画祭 パノラマ部門
プチョン国際ファンタスティック映画祭 ワールドファンタスティック・ブルー部門
JAPAN CUTS~ジャパン・カッツ!

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(本ページの情報は2019年2月時点のものです。最新の配信状況は U-NEXT サイトにてご確認ください。)

【7/27公開】『隣の影』喜劇か悲劇か? 隣人トラブルがヒートアップする狂気の北欧サスペンス!

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陽の光が貴重なアイスランドで、一本の木が作った影がきっかけで勃発した隣人トラブル。些細な感覚のズレは、やがて血で血を洗う争いへ…。ブラックコメディとも悲劇ともとれる緻密なサスペンス。今年『たちあがる女』(2019年3月日本公開)を放ったアイスランドから、またも切れ味鋭い、注目の作品が登場した。

2019年7月27日(土)よりユーロスペースほか全国順次ロードショー

明日、わが身にも起こりうる隣人問題だが…

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日々日本のニュースにも取り上げられる”隣人トラブル”。「引っ越したら、運悪く隣家にサイコパスが住んでいた」といった設定も、ホラー系作品によく見られる。

自分に降りかかれば最悪。それが、明日にもわが身に起こる可能性をはらんだ”ご近所トラブル”だ。あるいは今現在、まさにお悩み中、という方もいるのではないだろうか。

隣人問題は身近な題材ゆえに、ドラマチックに仕立てるにはかなりの手腕が必要だろう。しかしそこを逆手にとって、見事な腕前をみせたのが、本作の脚本・監督であるアイスランド出身のハーフシュテイン・グンナル・シーグルズソン。アメリカの雑誌『バラエティ』で”最も期待される10人のヨーロッパの監督”に選ばれたことがあるという。

カウリスマキ兄弟やラース・フォン・トリアーら、著名な監督のみならず、これまでもサスペンス系作品でたびたびスマッシュヒットを飛ばして来た北欧映画界。その中でも、ハーフシュテイン・グンナル・シーグルズソン監督は、ニューウェーヴとして注目すべき人物なのだ。

小さな”たまたま偶然"が重なる緻密な展開

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二者の間にあったギリギリ「見えないふり」ができる範囲だった問題に、不用意にどちらかが一歩踏み出すことで、もう一方の”内なる地雷”にカチッとスイッとが入り爆発することがある。

やがその内なる衝撃が、小さなほころびのように表に姿を現し始める。そして少しずつ”こじれのキャッチボール”が交わされ、一度もつれ始めると、どんどん加速し、収拾がつかなくなっていく。

本作のこの仕掛けは絶妙だ。トラブルになる2つの家庭のうち、老夫婦の家の方には、もともと過去に起きた悲劇が、大きな影を落としていた。そして隣家には「老夫婦の悲劇の歴史」を知らない女(あるいは知っていても、他人の背景を気にかけないタイプだろう)が、後妻に入っている。この状態から始まった 無邪気な敵意の前に、抑圧されてきた悪意は爆発するしかなくなってしまう。

2つの家の関係は、それぞれが動物を飼っていたことも影響し、さらにこじれていく。誰も見ていないところで、犬が自由に険悪な隣家の庭を走り回る姿には、つい笑いが漏れてしまう。こうした皮肉なシーンも、巧みに挿入されている。

ストーリーのすそ野を広げる、もう1つの家庭

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この作品の舞台となる戦場は2軒の隣り合った家の敷地であり、2組の夫婦の対立が主として描かれるのだが、冒頭から、もう1つの家庭が関わっている。

老夫婦の次男が、件の家のうちの1軒である実家へと、出戻ってくるのだ。次男はすでに新たな家庭を構えているが、夫婦の事情で住まいを追い出されてしまう。この”事情”も他人からは見れば笑えるが、当人の夫婦の身になれば、そこそこ深刻な問題だったりする。この次男夫婦を加えた、3つの家庭、6人の人間模様が交錯する。

それぞれの「日常が侵食されることへの小さな苛立ち」という火種は、雪だるま式に確実に(あるいは一気に)膨らみ、やがて尊厳や自制心を奪われる怒りまで、ヒートアップしていく。業火が燃え上がった後には、クライマックスとなる身も凍る惨劇が繰り広げられる。

作品ニュース

数々の映画賞を受賞! 米国アカデミー賞への代表にも

本作は、本国の「アイスランド・アカデミー賞」で、作品賞、監督賞、脚本賞、男優賞、女優賞、助演女優賞、視覚効果賞と7部門を受賞(そのほかの受賞歴は末尾に記載の通り)。

さらに米国アカデミー賞2018 外国語映画賞 アイスランド代表にもなっている。その他にも数々の映画賞を受賞し、世界の映画祭にも出品されている、注目度の高い作品だ。

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『映画秘宝』からも評価

すでに映画関係者から、数々のコメントが寄せられている本作。

コアな映画ファンに人気の映画雑誌『映画秘宝』でも真魚八重子氏により「最新型・厭なスリラー」として紹介されている。

 

オススメしたい『隣の影』

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  • 明日は我が身”隣人トラブル”がテーマ
  • 憎悪がこじれていく丁寧な仕掛け
  • 「タガが外れる瞬間」数々のパターン
  • 手加減なしのバイオレンス描写
  • 観客に託される「悲劇か、喜劇か」

登場する6人は、どこかで見かけたようなリアルな人物ばかり。真面目な人、調子がいい人、思慮深い人…さらにそれぞれの人物にも多面性がある。執念深さ、大胆な思考、家族への思いやり、おバカな性欲…。どの人物にも、愛すべき側面を感じさせる。

そんな6人が絡み合い、事態は複雑かつ深刻に発展する。ブラックユーモアとして楽しむか、悲劇として受け止めるか。後に残る味は、観る者によってさまざまに変わるだろう。

『隣の影』作品情報

【あらすじ】
アイスランドのとある街でマンション暮らしをしていたアトリアとアグネス夫妻。しかし夫アトリアの失態により、突然夫婦の関係が壊れてしまう。マンションを追い出される形でアトリアは、郊外に住む年老いた両親インガとバルドウィンの家に転がり込む。

しかし、一見静かな実家でも、実は隣家のとの間に小さな諍いが生じていた。インガとバルドウィンの家にある大きな木が、隣の家のポーチに影を作っていたのだ。

それをストレスに感じた隣家の中年夫婦、エイビョルグとコンラウズが不満を訴えると、老父バルドウィンは応じようとするが、老母のインガは「あの木には触れさせない」と猛反対。さらにインガは、日頃の苛立ちを爆発させて…。

監督・脚本:ハーフシュテイン・グンナル・シーグルズソン
出演:ステインソウル・フロアル・ステインソウルソン、エッダ・ビヨルグヴィンズドッテル、シグルヅール・シーグルヨンソン、ラウラ・ヨハナ・ヨンズドッテル ほか
原題『Undir Trénu』 英題『Under The Tree』

撮影:モニカ・レンチェフスカ 編集:クリスティアン・ロズムフィヨルド
音楽:ダニエル・ビヤルナソン
配給:ブロードウェイ
2017年/アイスランド・デンマーク・ポーランド・ドイツ/氷語/カラー/89分/DCP
2019年7月27日(土)よりユーロスペースほか全国順次ロードショー
2017(C)Netop Films. Profile Pictures. Madants

rinjin-movie.net-broadway.com

 

【『隣の影』受賞歴】
●アイスランド・アカデミー賞(Edda Awards)では、作品賞、監督賞、脚本賞、男優賞、女優賞、助演女優賞、視覚効果賞/ファンタスティック・フェスト2017監督賞長編コメディー部門受賞/ダブリン国際映画祭2017撮影賞/デンバー映画祭2017出品クシシュトフ・キェシロフスキ賞(最優秀作品賞)受賞/インターナショナル・コンペティション部門作品賞スペシャル・メンション受賞/ハンプトンズ国際映画祭2017出品長編ナラティヴ作品賞受賞
●米国アカデミー賞2018 外国語映画賞 アイスランド代表

【『隣の影』出品先】
ベネチア国際映画祭2017 Orizzonti部門出品/SKIP国際Dシネマ監督賞201/トロント国際映画祭2017 CONTEMPORARY WORLD CINEMA部門出品/チューリヒ映画祭2017出品/シカゴ国際映画祭2017出品/ミドルバーグ映画祭2017出品/バリャドリッド国際映画祭2017出品/フィラデルフィア映画祭2017出品/ライデン国際映画祭2017出品/テッサロニキ国際映画祭2017出品/パームスプリングス国際映画祭2018出品/パームスプリングス国際映画祭2018出品 

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【7/26公開】『よこがお』深田晃司監督×筒井真理子 ある事件をきっかけにすべてを奪われた女、その復讐と再生

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1つの事件をきっかけに、人生の不条理に飲み込まれ、すべてを奪われてしまったある女性の人生。ささやかな復讐を決意し、過去を捨て名を変えて、異なる横顔を見せた女の、波乱と苦悩に満ちた肖像を描く。第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門の審査員賞を受賞した『淵に立つ』の深田晃司監督と女優・筒井真理子が、再びタッグを組んだヒューマンサスペンス。

2019年7月26日(金)角川シネマ有楽町テアトル新宿 ほか全国公開

誠実に生きてきた女に仕掛けられた、どん底スパイラル

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美容師の青年・米田に、策略を持って近付こうとする謎の中年女性・リサ。素性の知れない彼女は、何かを得ようともがいているようだ。それが何なのかは、彼女の過去とともに徐々に明かされていく。

リサと名乗る女の正体は、元介護士の”市子”。献身的に尽くす性質で周囲の信頼を集め、自分を取り巻く小さな社会に奉仕していた。そしてもう少しで、ささやかな幸せをつかむところだった。

しかし不運な偶然と、ある事件により、すべてが崩れ去り、世間から非難の刃を向けられることになっていく。さらに追い討ちをかけるように、身近な人物によって状況はかき乱され、市子はどん底に落とされていってまう…。

一度壊れて、以前とはまったく違う顔を見せることになる市子。彼女はどんな過程でそんなにも変わったのか? その心理の移り変わりを味わうことができる緻密な作品だ。

メタファー溢れる演出とカメラワーク

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サスペンスタッチの展開に、演出もスリリングな本作。時折、違和感を感じるカメラワークが意図的に挟まれたり、間(ま)が残されたりする。夢や幻想が織り込まれたり、市子(リサ)の髪色が状況により変化する。それらが意味することがなんであるかは語られず、ぼんやりとした異物感がそこここに溢れている。

現実の世界で私たちが体験する、夢、あるいはささやかな妄想は、説明しきれない不安定さを伴うものだ。そして本作に登場するガザガサとした違和感の数々は、その正体不明加減が絶妙だ。

少しずつ異物感が織り込まれることで、観る者の心理にじわじわボディブローのような不安感が効いてくる。何かを見過ごしてはいないか、 気づくべきことを、自分はなきことにしてはいないか、と。そして、鈍く忍び寄る不穏さが、少しずつ浸透・蓄積していく。こうした感覚が敏感である観客にとって、本作は想像力を激しく掻き立てられる作品となるだろう。

「無実の加害者」が生きていく道とは

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市子が転落するきっかけは、ある事件への意図的な関与を疑われたことにある。マスコミに騒がれ、あることないこと世間に晒される恐ろしさ。そして外部から受ける攻撃だけでなく、隠し事をしたことをきっかけに、内側からも自ら弱っていく市子を、さらに追い詰める身近な人物が現れる。

状況が整えばマスコミや世間を利用して、自分の手を汚さずとも致命的な打撃を与えることができる。愛憎ゆえの裏切りは、ある種のストーカー行為のようだが、計算づくではないだけに、当人も予期していなかった方向へと、市子を導いてしまう…。

世界は決して思い通りにならないものだ。誰もが、理不尽な目に遭い、絶望のふちに追いやられることがあるかもしれない。絶望の淵に立たされても生きていく道はあるのだろうか。遠回りし、叫び声をあげながらも、救済する力を自らに見い出す…そんな1つの道しるべのような物語だ。

作品ニュース

劇中の日本画、原画を展示

劇中に登場する日本画が、テアトル新宿にて展示される。

 


深田晃司監督インタビュー動画

深田晃司監督へのインタビューが行われた模様。配信は7月18日(木)から。どんな内容になっているのか、気になるところだ。

 

オススメしたい『よこがお』

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  • 女性の目線でとらえられた世界観
  • 「無実の加害者」とは何者なのか
  • 数々のメタファーらしき存在
  • 壮絶な展開の先に見える希望
  • キャストが新たに見せる顔

じっくりと集中して、入り込んで観られる作品だ。どの出演者もリアルな演技をみせるが、ハマり役を与えられたというより、内側から新たな顔を引き出されたかのようだ。

俳優のポテンシャルを引き出す力、そして女性の立場を深い理解で映し出す、深田監督の鋭い視点に驚かされるだろう。

また、過剰なマスコミ報道の恐ろしさ、情報に振り回される大衆の愚かさや残酷さについても描かれており、加害者のみならず、被害者やその家族たちの日常にどれだけ影響を及ぼすのかという社会的テーマも盛り込まれている。

『よこがお』作品情報

【あらすじ】
周囲から厚く信頼されている訪問看護師の市子。訪問先の中でも大石家とは特別親しく、介護福祉士志望である娘たちの勉強もみてやっていた。そんな中、大石家の次女で学生のサキが行方不明となる事件が起こってしまう。事件はほどなく解決するも、捕らえられた犯人は、意外な人物だった。

やがて事件関与を疑われた市子は、現実を捻じ曲げられ、周囲の信頼も、仕事も、大事な人間関係も失ってしまう。行き場を失った市子は、やがて”リサ”と名乗って、ある目的をもって行動を始める…。

脚本・監督:深田晃司
出演:筒井真理子、市川実日子、池松壮亮、須藤蓮、小川未祐、大方斐紗子、吹越満 ほか
配給:KADOKAWA
<2019年/111分/カラー//日本=フランス/5.1ch/ヨーロピアンビスタ>
2019年7月26日(金)角川シネマ有楽町テアトル新宿 ほか全国公開
© 2019 YOKOGAO FILM PARTNERS & COMME DES CINEMAS

yokogao-movie.jp

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(本ページの情報は2019年7月時点のものです。最新の配信状況は U-NEXT サイトにてご確認ください。)

【7/5公開】『ワイルドライフ』理性を失い壊れゆく両親を見つめる少年…俳優ポール・ダノの秀逸な初監督作!

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「夫婦とは、親子とは、家族とは何か」を問いかける、少年の成長物語。母にキャリー・マリガン、父にジェイク・ギレンホールをキャスティングし、俳優として高い評価を得ているポール・ダノ(『それでも夜は明ける』『ラブ&マーシー 終わらないメロディ』『スイス・アーミー・マン』)が初監督をつとめた。

父と母がそれぞれの立場でプレッシャーと戦い、時には愚かしい行動に走りながらも必死に生き抜こうとする姿を、14歳である息子の目を通して描くヒューマンドラマ。

2019年7月5日(金)よりYEBISU GARDEN CINEMA新宿武蔵野館ほか全国順次公開

父は家を離れ、母は精神不安定に…少年にのしかかる過酷な運命

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プライドをもって生きることは大切だ。子どもに背中を見せる親であればなおのこと。しかし、時として理想やプライドは、何より自分自身を追い詰めてしまうこともある。

14歳の少年ジョーの両親、父ジェリーにも母ジャネットにも、確固たるプライドがあった。息子の教育にも熱心、将来のこともしっかり考える理想的な両親…だったはず。しかし、ちょっとしたきっかけで狂いはじめた父と母の歯車は、どんどん噛み合わなくなっていく。

時は1960年代。古き良き父親のジェリーの失業は、一家にとって大打撃となる。プライドが仇になり、再就職を拒否したジェリーは「意義があることは何か?、自分がすべきことは?」などという”やり甲斐”に走って、残す家族も顧みずに、命がけのボランティアに出かけてしまう。

夫の再就職を無理強いしなかったのは、妻ジャネットのプライドだったのかもしれない。さらに夫が不在になっても、息子のジョーと共に健気に家計を支えようとする。しかし、不安と孤独の中でジャネットの限界はあっという間にやってくる。

そして、ジョーは14歳にして、精神崩壊していく母を目の当たりにする。何より、母のあけすけな性的言動は14歳の少年に大きな衝動を与えることに…。

30代になった演技派俳優ポール・ダノが撮った初監督作品

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数々の名演を観せて来た俳優ポール・ダノ。20代のとき『リトル・ミス・サンシャイン』で注目を集めた彼も30代になった。そして今回、初めて監督業に挑戦。脚本は、パートナーで女優の、ゾーイ・カザン(『ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ』)との共同だ。

原作はリチャード・フォードの同名小説。もともと”家族について”の映画を撮ってみたいと考えていたポール・ダノは、この小説に出会い「家族とは何か?」という問いに思いを巡らせるうちに、本作のラストシーンが思い浮かんだという。

映画化権を得る際に「自由に自分の作品を作って欲しい」という原作者の言葉にも、勇気を得てメガホンを取った。ポール・ダノの鋭い感性は演技だけでなく監督・脚本業にも見事に発揮され、本作は初監督とは思えぬ、観ごたえある作品となった。

少年ジョーの目を借りたポール・ダノの眼差し

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本作で最も大きく揺れるのは、母ジャネットだろう。凛とした母親だったのに、不安と恐れ、そして生きようという強い思いから、性まで武器にしようとする。キャリー・マリガンの表情というか目の輝き、その変化・振り幅が凄まじい。

父ジェリーには、目覚ましい活躍を見せるジェイク・ギレンホール。本作と『ゴールデン・リバー』は、両作ともジェイク・ギレンホールが出演しており、同じ7月5日(金)に日本公開を迎える。数多くの作品に出演しても、各作品にインパクトを残しながら、自然かつ雑味なく、渾身の演技を観せる。

そして、キャリー・マリガンとジェイク・ギレンホールという実力派の2人と並んでも霞まない少年の俳優、エド・オクセンボールドも見事だ。本作の主人公は少年ジョーであり、最初から最後まで、14歳の少年の眼差しを通して、両親や大人たちが描かれる。

長回しも多く、ジョーのアップの表情で終わるシーンも多い。最終的にポール・ダノは、ジョー役に思いを集中しているのだろう。そういえば、なんとなくジョー役のエド・オクセンボールドは、監督のポール・ダノに似てはいないだろうか?

作品ニュース

著名人からもコメント

本作へのコメントが続々到着している

 

上映館でパネル展開

スタンディ、と呼ばれる等身大パネルが、新宿武蔵野館に設置されている。

 

オススメしたい『ワイルドライフ』

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  • 説得力ある、家庭が崩壊していくプロセス
  • 家庭と家族の過酷な変化を乗り越えようとする少年の成長物語
  • 母ジャネットを演じるキャリー・マリガンの大胆かつ繊細な演技
  • ポール・ダノ初にして渾身の監督作

ジョーは生活のために始めた写真館のアルバイトで救われ、力を得ることに…後半、そのことが重要で象徴的なシーンへとつながっていく。

『ワイルドライフ』作品情報

【あらすじ】
1960年、カナダ国境付近モンタナ州の田舎町に移住してきた14歳の少年ジョーとその両親。生活が軌道に乗りはじめたころ、父ジェリーが突然、ゴルフ場での仕事を解雇されてしまう。さらに、山火事消火のボランティア同然の出稼ぎのために、ジョーや妻ジャネットをおいて、ジェリーは家を離れる。

家計のためジャネットはスイミングスクールで働き、ジョーまでも写真館でアルバイトを始めるが、生活は安定するわけもない。やがてジョーは、母が不安と孤独で不安定になり、生きるためにもがく姿を目の当たりにして…。

監督・共同脚本・製作:ポール・ダノ
出演:キャリー・マリガン、ジェイク・ギレンホール、エド・オクセンボールド、ビル・キャンプ ほか

音楽:デヴィッド・ラング(『グランドフィナーレ』)
共同脚本・製作:ゾーイ・カザン
原題:WILDLIFE
配給:キノフィルムズ

<2018年/アメリカ/105分/カラー/アメリカンビスタ/5.1chデジタル/PG-12>
字幕翻訳:牧野琴子

2019年7月5日(金)よりYEBISU GARDEN CINEMA新宿武蔵野館ほか全国順次公開
©2018 WILDLIFE 2016,LLC.

wildlife-movie.jp

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(本ページの情報は2019年7月時点のものです。最新の配信状況は U-NEXT サイトにてご確認ください。)

【7/5公開】『ゴールデン・リバー』豪華俳優4人が共演!ゴールドラッシュの夢と欲望が交錯する…手に汗握るウェスタン&サスペンス

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ゴールドラッシュのカリフォルニアを舞台に、男たちの夢と欲望が熱くたぎる! ジョン・C・ライリー、ホアキン・フェニックス、リズ・アーメッド、ジェイク・ギレンホールと、個性を放つ俳優4人が共演。見事な相乗効果で観応えガッツリ! 人気小説『シスターズ・ブラザーズ』を映画化。西部劇とサスペンスが融合、数々の映画賞を制した話題のハイブリッドムービー!

2019年7月5日(金)TOHOシネマズ シャンテ ほか全国公開

ウェスタンベースに、サスペンス&人間ドラマが展開!

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1851年のアメリカ・カリフォルニアは、ゴールドラッシュ。一攫千金を狙って金脈を求める男たちがあふれている時代だ。殺し屋の”シスターズ兄弟”が、ある男を始末する任務を担ってオレゴンからサンフランシスコへと南下していく。

ターゲットにされている男ウォームは、実は化学者。狙われる理由は、黄金を見分ける薬剤の作り方を見つけ出したからだ。行方を探っていた連絡役の情報屋・モリスがウォームに近づくが、徐々に賢く魅力的なウォームに取り込まれ…。

殺し屋兄弟2人。そして化学者と連絡役の2人。この2組が後半では合流し、4人になる。ゴリゴリのガンマンである殺し屋兄弟が、金脈を狙う頭脳派の男たちと運命が交わることで、西部劇がサスペンスに、そして人間の本性が現れるリアルなドラマとして展開していく。

豪華すぎるキャスト! 個性派の名優4名が共演

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本作の最大ともいえる楽しみは、ジョン・C・ライリー、ホアキン・フェニックス、リズ・アーメッド、ジェイク・ギレンホール、という名優4人の共演なのだが、それぞれのキャラクターがはっきり異なるのが面白い。

まずは殺し屋兄弟。ガンアクションも見事な、腕が立つ2人だが、兄弟の気安さ溢れる掛け合いが面白い。ワイルドで自分勝手だが、少年のような愛嬌をたたえた弟に、ホアキン・フェニックス。そして割りを食いつつも弟を支え、ロマンチストな一面もある兄に、ジョン・C・ライリー。キャラが明確な2人の、のびのびした絡みが心地いい。

シスターズ兄弟がサンフランシスコへ向かう前半は、男兄弟のロードムービーとして楽しめる部分。殺し屋という仕事に反し、中年男の可愛らしさ全開だ。ちょっとアホだなあ、というほっこりシーンは、味のあるコメディとしてたっぷり楽しめる。

一方、知的で人たらしな化学者ウォームはリズ・アーメッド、そして自分が何者であるかを隠し、ウォームに近づこうとする連絡係の情報屋は、ジェイク・ギレンホール。こちらの2人は殺し屋兄弟とはまったく異なる関係。心理戦の楽しさを味わわせてくれる。

そして4人が合流すると、よりおのおのの個性が際立ってくる。そこからがまたワクワクさせられる展開へと加速していく。

映画化権を獲得したジョン・C・ライリー

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この作品の原作は、パトリック・デウィット著の人気小説『シスターズ・ブラザーズ』。争奪戦となったこの小説の映画化権をものにしたのが、主演のジョン・C・ライリー、そして妻でプロデューサーのアリソン・ディッキー。原作に惚れ込んで、自ら獲得したのだ。

夫妻は『ソーシャル・ネットワーク』のプロデューサー、マイケル・デ・ルカとタッグを組むと、監督に『真夜中のピアニスト』 (2005年)『君と歩く世界 ((2012年)『ディーパンの闘い』(2018年)の、フランス人監督・ジャック・オーディアールを選ぶ。

西部劇をフランス人監督が演出するというのはちょっと驚きの選択だが、これが吉と出た。サスペンスと融合するハイブリッドなウエスタンを、伝統に縛られずにのびのびと仕上げたのだ。

主演級の共演者を得てなお、ジョン・C・ライリーは見事に輝いている。メインキャスト4人ともが素晴らしい。これから本作は彼らの代表作と呼ばれるのも、作品を最後まで観れば想像に難くないだろう。

作品ニュース

パネル展開催中

本作を上映する日比谷シャンテパネル展が開催されている。

 

オススメしたい『ゴールデン・リバー』

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  • 主役級の個性派俳優4人が、それぞれ魅力的キャラで共演
  • 一攫千金と理想郷を夢見る、男たち欲望とロマン
  • 外国人監督による新鮮なウエスタンムービー
  • 手に汗握る予想がつかないサスペンス的展開

豪華な出演者で、ハイブリッドムービー、サスペンス&ウエスタンを見事に叶えた。会話劇としても秀逸。

『ゴールデン・リバー』作品情報

【あらすじ】
1851年オレゴン。最強と呼ばれる兄弟の殺し屋、兄イーライ(ジョン・C・ライリー)と弟チャーリー(ホアキン・フェニックス)がいた。度胸があり、雇い主の提督から信頼を得ている弟が、リーダーとして仕事を仕切り、兄は弟のワガママをぼやきながらも、身の回りの世話も引き受けてる。

2人に与えられた新たな仕事は、連絡係のモリス(ジェイク・ギレンホール)が捜し出すウォーム(リズ・アーメッド) という男を始末すること。

サンフランシスコへ南下する兄弟が馬で山を越えていた頃、一方のモリスはマートル・クリークで、脈を求めて群れをなす採掘者の中に、ウォームを発見。

屈託なくモリスの笑顔を褒める人懐こいウォーム。旅の途中、ウォームはモリスに信じがたい話を打ち明ける。「自分は化学者で、金を見分ける“預言者の薬”を作る化学式を発見した」と…。

監督:ジャック・オーディアール(『君と歩く世界』)
出演:ジョン・C・ライリー(『シカゴ』)、ホアキン・フェニックス(『ザ・マスター』)、ジェイク・ギレンホール(『ブロークバック・マウンテン』)、リズ・アーメッド(『ナイトクローラー』『ヴェノム』) ほか
原題:THE SISTERS BROTHERS
原作:『シスターズ・ブラザーズ』パトリック・デウィット 
配給:ギャガ
<2018年/フランス、スペイン、ルーマニア、ベルギー、アメリカ/122分/カラー/シネスコ/5.1chデジタル/PG12>
字幕翻訳:風間綾平
2019年7月5日(金)TOHOシネマズ シャンテ ほか全国公開
© 2018 Annapurna Productions, LLC. and Why Not Productions. All Rights Reserved.

gaga.ne.jp

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(本ページの情報は2019年7月時点のものです。最新の配信状況は U-NEXT サイトにてご確認ください。)

【6/29公開】『ペトラは静かに対峙する』仕掛けられた負のスパイラル! 人間の濃い闇を、静寂の中に映し出す怪作

f:id:kappa7haruhi:20190624154756j:plain出生の真実を知るために、ある彫刻家に近づいた女性が巻き込まれていく、悪夢のスパイラル…スペイン北東部のカタルーニャ地方を舞台に、いくつかの秘密から生まれた負の連鎖が、ギリシャ悲劇のように人々の運命を狂わせていく。時系列が前後する中で、家族の抱える秘密が少しずつ明かされるミステリー。『マジカル・ガール』で、ゴヤ主演女優賞を受賞したバルバラ・レニーが、再び深い闇に身を投じた怪作!

2019年6月29日(土)新宿武蔵野館アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開

”秘密”が作り出す、圧倒的な負のスパイラル

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母に出生の秘密を明かしてもらえなかった、画家を志すヒロイン・ペトラ。しかし自分の実の父親が、著名な彫刻家・ジャウメである可能性を知り、ジャウメの邸宅へ、共同制作を希望する画家として現れる。ペトラの真の目的は、ジャウメが実の父親であるのかを確かめるためだが、ジャウメや家族、周りの人々にはそのことを明かさない。

秘密から始めたペトラと人々の関係。そしてこの後も物語にはいくつかの「秘密」が現れ「秘密」によって、あらゆる人の運命がかき乱されていく。すでにあった秘密、起こってしまう秘密…。そしてペトラ自身が、凄まじい負のスパイラルに巻き込まれていくことになる。

この負のスパイラルの中心には、息子からも”冷酷”と評されるジャウメが常に存在する。あるいは悲劇を作り出し、操作しているように見えるかもしれない。そんなジャウメを、ペトラは静かに受け止めるのだが…。

第2章から始まる!パズルのピースをはめるような見事な章立て

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サスペンスとミステリーの違いは、様々に論じられるかもしれないが、ジャンル分けするのには、ひとつの考え方がある。サスペンスは、真実がわかっている中でスリルある状況や展開をみせるもの。一方ミステリーは「謎解き」であって、真実を求めて観客も登場人物とともに迷宮をさまようもの、という違いだ。

本作は章立てされている。そして冒頭が「第2章」から始まる。実の父かもしれない彫刻家のジャウメに、主人公ペトラが会いにきた、という状況だ。ここでペトラは、ジャウメの厄介な人柄を知ることになる。後に、観客はペトラがジャウメに会いに来るきっかけとなるエピソード「第1章」を観る…という流れで作られている。

この「結果を先に知り、そこに至るまでの経緯を後から観る」という構成は、再度繰り返される。前出の考え方で言えば本作は「サスペンス」だ。

だが、終わりの方で、全てを踏襲するような、”ある事”がひっそりと静かにやってくる。パズルのピースが揃った時、作品全体は、つまりミステリーになるのだ。

出演者&スタッフには、不穏な空気をまとう顔ぶれが勢ぞろい

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怪作と呼ばれるにふさわしい本作は、衝撃的な出来事がいくつも起こる。まず、ペトラの父かもしれないという彫刻家・ジャウメが、やる事・言う事・考え方とも素晴らしくエグいのだ。

そして常に、作品の奥底に禍々しさが脈々と流れ続ける。「静かに対峙する」という邦題が的を射ているように、決して激しくエキサイトはしない、暗く不穏な空気だ。ジャウメというキャラクターの存在自体はもちろんだが、俳優と音楽の力も大きいだろう。

ヒロイン・ペトラ役には『マジカル・ガール』(2014年/カルロス・ベルムト監督)で、耐えることで悲劇をより増幅させるヒロインを演じた、バルバラ・レニー。今回『マジカル・ガール』とは全く違うキャラクターではありながら、挑みながらもやはり”耐える”ヒロインとして業(ごう)をまとい、存在感を放つ。

そしてジャウメの妻役には「名誉ゴヤ賞」を受賞している『オール・アバウト・マイ・マザー』(1999年/ペドロ・アルモドバル監督)のマリサ・バレデス。さらにくだんのジャウメを演じているのは、顔立ち・体つきからその悪意が匂い立つような老俳優なのだが…彼の経歴については、ここで詳細を記すのは控えておく(知りたい方は公式webをご参照ください!)。

そして音楽は『アンチクライスト』(2011年/ラース・フォン・トリアー監督)『メランコリア』(2012年/ラース・フォン・トリアー監督)のクリスチャン・エイネス・アンダーが担当。不穏な空気は音楽からもやってくる。 

作品ニュース

初日来場者にプレゼントあり

6月29日(土)初日限定で、新宿武蔵野館アップリンク吉祥寺でプレゼントがもらえます。

 

 

オススメしたい『ペトラは静かに対峙する』

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  • 彫刻家・ジャウメが元凶となる、恐るべきエピソードの数々
  • バルバラ・レニー(『マジカル・ガール』)が再び耐えるヒロイン役
  • カンヌ常連の監督、ハイメ・ロサレスが仕組むパズルのような構成
  • 哀愁と優しさに満ちたカタルーニャ地方の風景
  • 悲劇に見舞われた人々のひたむきな想いと思わぬカタルシス

ギリシャ悲劇的かつ、ホラー並にゾッとする展開があるので、美しいものだけを見つめていたい人にはおすすめできないが、逆に、闇を覗くことを厭わない人にはぜひ見届けてもらいたい。ラストまで観れば、予想外の後味が待っているかもしれない。

『ペトラは静かに対峙する』作品情報

【あらすじ】
カタルーニャ州の彫刻家・ジャウメの邸宅に、画家ペトラがやってくる。「作品制作をする」と告げるが、ペトラの真の目的は、ジャウメが実の父親なのか確かめること。ペトラはジャウメの妻マリサや、ジャウメの息子ルカス、家政婦テレサらと親交を深めるが、ジャウメが傲慢で冷酷な人物であることを悟る。そして家政婦テレサが謎の死を遂げたことをきっかけに、ペトラは一家の悲劇の連鎖に巻き込まれていく…。

監督:ハイメ・ロサレス
出演:バルバラ・レニー、アレックス・ブレンデミュール、ジョアン・ボティ、マリサ・バレデス ほか
原題:Petra
配給:サンリス
<2018年/スペイン・フランス・デンマーク/スペイン語、カタルーニャ語/107分/カラー/シネマスコープ/5.1ch/PG-12>
2019年6月29日(土)新宿武蔵野館アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開
©2018 FRESDEVAL FILMS, WANDA VISIÓN, OBERON CINEMATOGRÀFICA, LES PRODUCTIONS BALTHAZAR, SNOWGLOBE

www.senlis.co.jp

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