東京・ミニシアター生活

主に都内のミニシアターで上映される新作映画の紹介をしています。

〔AD〕動画サイトランキング

【4/27公開】『正義の行方』死刑執行後も深い謎に包まれた「飯塚事件」を多面的に追うドキュメンタリー

1992年2人の女児が山林で遺体として見つかった「飯塚事件」。容疑者・久間被告は起訴事実を否認、無罪を主張したが棄却され、異例の速さで死刑が執行された。翌年、冤罪を訴える再審請求が提起され、事件の余波はいまもなお続き真実は藪の中にある。

本作は、弁護士、警察官、新聞記者ら、立場を異にする事件の当事者たちへのインタビューを重ねて状況を生々しく伝え、事件を多面的に追った、文化庁芸術祭大賞受賞の傑作ドキュメンタリーの劇場版である。

2024年4月27日(土)よりユーロスペースほか全国順次公開

◆飯塚事件とは◆

1992年2月20日、福岡県飯塚市で登校中の小学1年生の女子2名が行方不明となり、翌日、自宅から30キロ離れた山林で遺体として見つかった。その後、遺留品発見現場の近くに紺色のワゴン車が止まっていたという目撃情報から、警察は同じような車を所有していた久間三千年を容疑者として捜査を続け、2年7カ月後、死体遺棄・殺人・誘拐容疑で逮捕した。

久間被告は全面的に起訴事実を否認し、弁護側はDNA型鑑定の結果は信用できないと無罪を主張したが、一審、二審、最高裁はこれを棄却。2008年10月28日に死刑執行された。

「真実は藪の中」である事件に、なぜ心を揺さぶられるのか


「飯塚事件」は容疑者の死刑が執行されたが、多くの謎が残り、冤罪も疑われている事件である。証拠や証言を改めて振り返り、新たにインタビューを重ねてみても、純然たる真実は明らかにはならない。容疑者が犯人なのか、それとも他に真犯人がいる冤罪なのかは謎のままであり、むしろその謎は深まるばかりである。にも関わらず、本作では随所に見どころがあり、ハラハラさせられる。

大きな見どころは、それぞれが信念や根拠を語る端々に、突然顔を覗かせる彼らの本音ではないだろうか。不用意な思い込みの発言に驚かされたり、あるいは染み入るような思慮深さに心を打たれもする。その都度、見る者の心情も大きく揺さぶられる。

驚愕の「早すぎた死刑執行」

事件は痛ましく、幼い被害者2人を思うと抑えがたい怒りが湧いてくる。しかし、犯人確定の決定打とされたDNA検査による証拠はあやしげであり、容疑者も一貫して否認を続けていたという。にも関わらず、異例の速さで死刑が執行されてしまったのだ。

これにより、真実がどうあろうと、問題が終われないことは明らかだ(「事件は終わっている」と明言する者も登場するのだが)。命は失われたら、取り返しがつかない。曖昧な証拠ばかりを集めた段階で、なぜ刑の執行が急がれたのだろうか。弁護団は憤る。

もしも冤罪であったらなら、あまりにも残酷すぎる。容疑者の無実を信じる遺族は、今も思い悩み、会見に出席することができず、本作でも顔にぼかしが入っている状況だ。

「それぞれの正義」そして誠実さがもたらす実り

真実は深い謎に包まれたままだが「事件の状態」はあらゆる角度からよく見えてくる。制作者によって、過去に挙げられてきた証拠や証言を端折ることなく、余さず集めようという熱意ある姿勢が強く伝わってくる本作。上映時間も2時間を超えるほどの情報量がある。

そして粘り強いインタビューにより、警察、弁護士、遺族や関係者「それぞれの主張」「それぞれの真実」が明らかになってぶつかり合い、多面的に事件を浮き彫りにする。そして全く異なる「それぞれの正義」があぶり出される。

中でも終盤、報道関係者によって語られる、新たな証言にたどり着く執念のエピソードは聴きごたえがある。そして彼らがこれまでの報道の経緯を自ら振り返り、反省を通して「報道のあるべき姿」を掘り下げる誠実さには、未来に向かう希望と実りを感じることができるだろう。

作品ニュース

本作の書籍版

オススメしたい『正義の行方』

  • 事件周りの情報を丁寧に集め、事件についてよくわかる
  • 弁護士、警察官、容疑者遺族らの生々しい本音を収録
  • 報道の倫理を新聞記者自ら掘り下げていく展開
  • 飯塚事件にとどまらず、日本の司法のあり方を考えるきっかけに

『正義の行方』作品情報

 【あらすじ】

1992年に福岡県飯塚市で2人の女児が殺害された「飯塚事件」。DNA型鑑定などによって犯人とされた久間三千年は、2006年に最高裁で死刑が確定、2008年に福岡拘置所で刑死した。“異例の早さ”だった。翌年には冤罪を訴える再審請求が提起され、事件の余波はいまなお続いている。

本作は、弁護士、警察官、新聞記者という立場を異にする当事者たちが語る。時に激しく対立する〈真実〉と〈正義〉を突き合わせながら事件の全体像を多面的に描き、やがてこの国の司法の姿を浮き彫りにしていく……。

監督:木寺一孝
制作統括:東野真 撮影:澤中淳
音声:卜部忠 照明:柳守彦
音響効果:細見浩三    編集:渡辺政男

制作協力:北條誠人(ユーロスペース)
プロデューサー:岩下宏之
特別協力:西日本新聞社 協力:NHKエンタープライズ
テレビ版制作・著作:NHK
制作:ビジュアルオフィス・善    
製作・配給:東風

<2024 年/158 分/DCP/日本/ドキュメンタリー>

2024年4月27日(土)よりユーロスペースほか全国順次公開

seiginoyukue.com

©️ NHK

〔AD〕

(最新の配信状況は U-NEXT サイトにてご確認ください。)

〔AD〕

(本ページの情報は2020年6月のものです。最新の配信状況は U-NEXT サイトにてご確認ください。)

<