東京・ミニシアター生活

主に都内のミニシアターで上映される新作映画の紹介をしています。

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【4/19公開】『愛がなんだ』依存・執着・こじらせ愛…いつまでも片思いの5周先回りする恋

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直木賞作家・角田光代による同タイトル小説を、今泉力哉監督(『サッドティー』『たまの映画』)が見事に映像化。「なんとなく始まった恋」に執着するこじらせ女子のヒロインを、岸井ゆきのがリアルかつ、愛らしく演じる。恋の相手には、旬の若手俳優・成田凌。細身の猫背体系で、モテオーラを封印しつつ、つかみどころのない魅力で役にハマった。いわゆるラブストーリーのようには想いが”交錯しない”稀有な恋愛映画だ。

2019年4月19日(金)テアトル新宿ほか全国公開

ストーカーを超える”恋するヒロイン”は純度100%!?

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マモルへの恋にどっぷりハマったことで、彼が生活の、人生の全てになってしまうアラサーOLのテルコ。しかし徹底的に「さりげなさを装う」態度で、マモルへの気遣いを忘れない。だからマモルの方も「彼女」として認めないながらも、テルコにあれこれかまってみせ、家にも泊める。つまりテルコはマモルの”都合のいい女”にされてしまうのだ。

「社会的に自分がダメになる恋愛」を経験したことがある人には、ぐいぐいと刺さるヒロインだろうが、それ以外の人にとってはかなりイタイ存在。そんなテルコを、人気急上昇中の女優・岸井ゆきのが、ちょっとコミカルに、愛らしく演じることで共感を誘う。

思考も行動も「大人失格」だが、テルコには、一本筋が通ったピュアな想いがあることに気づかせてくれ、観るものを作品に引き込んでいく。

唯一の親友・葉子の隣りには”都合のいい男”ナカハラが

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男に100%夢中になっている女には、女友だちは寄ってこないもの。なぜなら男最優先だから、約束をドタキャンされたり、話かけても上の空。友だちとして大事にしてもらえないからだ。

しかしマモルに夢中になっているテルコにも、唯一友だちと言える存在、葉子(深川麻衣)がいる。母子家庭の複雑さの中で育ったせいか、男に夢中にならない質の葉子。彼女のそばには「都合のいい男」にされてしまっている、ナカハラ(若葉竜也)という年下の男の存在が…。テルコは葉子には気を許し頼りながらも、葉子を女版マモルのようにも見ているのだ。

テルコとマモル、葉子とナカハラ。歪んだ関係のまま対峙している2つのカップルは、似ているようで微妙に違う。ゆえにテルコとナカハラは、共感しあったりお互いをやんわりディスり合ったりもする関係。この2人のコミカルなやりとりも見どころの1つだ。

理解不能の恋敵・すみれ役に江口のりこ

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テルコにとって、まったく相容れないタイプの恋敵が登場する。タバコを吸い、奇抜なファッションで、まわりに気遣いを一切しない年上の女性・すみれだ。4周も5周も先を読み、マモルの負担にならないよう気を使いまくるテルコとは正反対のすみれ。しかも、自分を振り回してきたマモルが、すみれに夢中で振り回されて一喜一憂しているのだ。

演じているのは、唯一無二の存在となりつつある個性派女優・江口のりこ。性格が悪いわけではないが、気の向くまま、奔放に振舞うすみれに、声や姿も含め、江口のりこは適役だ。

動かざること山の如し、というほどのテルコのマモルへの揺るぎない想い。そんなテルコにとって、このすみれが、起爆剤的な存在になっていく。すみれの登場、そしてすみれに恋心を抱くマモルの変化に触れ、テルコはやがてある決断をすることになる。

作品ニュース

ラジオ・TOKYO FMにキャスト出演中

TOKYO FMの「LOVE CONNECTION」に、メインキャストが出演中。

 
斎藤工イチオシ映画に選出

WOWWOW映画情報番組「映画工房」でMCを務める斎藤工&板谷由夏が、映画解説者・中井圭とともに劇場公開作品のトークを繰り広げるシネマトゥデイとのコラボ企画「はみだし映画工房」。ここで、斎藤工が本作をイチオシ映画に選出した。トーク動画は現在配信中。

 

オススメしたい『愛がなんだ』

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  • こじらせ女子を好演する岸井ゆきの魅力
  • 非モテキャラにして魅力を放つ成田凌
  • 原作を大事に味付けした今泉監督の作風
  • 「恋」「愛」「執着」「依存」の複雑さ

ヒロイン・テルコを見て「まるで自分のよう」という人にも「私はこうはならない」という人にも、恋・愛・執着・依存について考えるきっかけが、作品の中にぎっしりと詰まっている。

『愛がなんだ』作品情報

【あらすじ】
友人の結婚式二次会で知り合った、手が綺麗なだけの、猫背でひょろっとしたさえない男・マモルに恋をして、気付いたらどっぷりハマっていたOLのテルコ。しかし半年経っても彼女にはなれず、いつの間にか都合のいい女になってしまっている。マモルに呼び出され、家で手料理を振舞っても、深夜に突然追い出される始末。唯一の友人・葉子からは「そんな男やめておきな」と助言されるが、葉子は葉子で年下のカメラマン・ナカハラを都合よく使っており、そんなナカハラにテルコは自分の姿を重ねていた。マモルに振り回されるうち、会社をクビになったテルコだったが、ある日を境に、突然マモルからの連絡も途絶えてしまう。そして3ヶ月後、久しぶりに来たマモルからの連絡に、いそいそと出かけるが、マモルはすみれという年増女性を連れていて…。

監督:今泉力哉
出演:岸井ゆきの、成田凌、深川麻衣、若葉竜也、穂志もえか、中島歩、片岡礼子、筒井真理子、江口のりこ ほか
原作:角田光代「愛がなんだ」(角川文庫刊)
脚本:澤井香織、今泉力哉
配給:エレファントハウス
<2019年/日本/123分/カラー/ヨーロピアンビスタ/5.1ch/デジタル>
2019年4月19日(金)テアトル新宿ほか全国公開
©2019『愛がなんだ』製作委員会

aigananda.com

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(本ページの情報は2019年2月時点のものです。最新の配信状況は U-NEXT サイトにてご確認ください。)

 

【4/12公開】『芳華-Youth-』(ほうか)70年代の中国。戦線の傍らで音楽、舞踊、そして恋に生きた青春の日々

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70年代、文化大革命後の中国。軍歌劇団「文工団」で青春時代を過ごした若者たちを描く、美しく切ない青春ラブストーリー。初恋、友情、嫉妬、孤独、若さゆえの過ち、そして戦争。珠玉の踊りや音楽の表現も心を打つ、観応えたっぷりの青春群像劇。アジア・フィルム・アワード作品賞受賞作。

2019年4月12日(金)新宿武蔵野館ヒューマントラストシネマ有楽町YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開

 

芸能の才能に長けた若者たち

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今から約50年前の中国で、軍人に音楽や踊りを披露する軍歌劇団「文工団(文芸工作団)」に所属した、若者たちを描く本作。寮生活をする男女が暮らし、あちらこちらで密かに恋の花が咲く、青春ラブストーリーだ。キャラの強い美少女や若者が、多数登場する群像劇で、学園もののように楽しめる。

物語は、ダンスの才能を認められた17歳の少女、シャオピンが新人としてやってきたところから始まる。入団生活への期待に胸膨らませていたシャオピンだったが、先住のメンバーに受け入れらず、いじめにあって孤独を募らせていく。そして恋する青年が、唯一心の支えとなる。

しかし、初恋というのはなかなか叶わないもの。本作でも例外ではなく、多くの少女や若者が、恋に傷つくことになる。ある者は恋愛をきっかけに文工団を去ることになるのだが…。ただサヨウナラ、で済まないのがこの物語の大きな特徴とも言える。

孤独、そして前線への出征

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文工団は軍の部隊。つまり、軍に所属しているという扱いになる。つまり文工団を去れば、所属先が変わるのだ。ときには、退団となり傷ついたまま、いきなり前線の戦火の中に放り込まれてしまうこともある。

舞踊や音楽に打ち込み、華やかなステージに立つ日々から一転、砲弾が鳴り響く戦場へ向かうことになるのだ。

物語は戦地まで広がっていく。迫力ある、戦火飛び交うシーンも本作の見どころ。1テイク6分間にも及ぶ長回しの戦闘場面は、手に汗握る激さで緊張感が走る。戦争の悲惨さも、また本作の大きなテーマにもなっている。


心情が表れる、見事な演奏と舞踊

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ズラリと並ぶ、文工団の美少女や見目麗しい青年たち。しかし出演者たちは、容姿だけではなく、芸能の実力もしっかり兼ね備えている。舞踊学校で肉体と表現力を磨いてきた俳優やダンサーが、美しい踊りで作品を盛り上げる。

戦意高揚が目的である楽曲を苦々しく感じる人もいるだろうが、歌劇部分の仕上がりはミュージカルもの以上に素晴らしい。クラシックバレエの基本を押さえつつ京劇を融合させたという、情緒的かつ躍動的な舞踊は、美しく新鮮。心情をリンクさせた踊りの場面では、グッと熱いものがこみ上げてくる。

余談ではあるが、本作のメインキャストオーディションの条件には「美容整形をしていないこと」が加えられていたという。それゆえ少女たちはナチュラルな美しさをもった、本来の個性をしっかりと感じられるキャストが揃っている。

作品ニュース

Tweetでオリジナルトートプレゼント!

本作の公式アカウントで、ツイッターとインスタをツールにしてトートバッグがもらえる「拡散プレゼントキャンペーン」が行われている。気軽に応募できるので、参加してみては。

 


初日から3日間、ポストカードプレゼント

各館で、公開から3日間にわたり、来場者に先着で作品のポストカードをプレゼント。

 

オススメしたい『芳華-Youth-』

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  • 美少女たちのキラキラした青春群像劇
  • 迫力ある戦争最前線の描写
  • 孤独な少女の切ない初恋と過酷な運命
  • 1970年代の中国の情勢や文化に触れる
  • 実力派キャストによる華麗な歌と舞踊

時代を感じる演出として、作中にテレサ・テンの楽曲が登場。当時中国では禁歌扱いだったので、密かにテレサ・テンの歌声に聴き入るのだ。若者にはさもありなんだが、その歌詞と己の恋とを重ね合わせてしまったりも。

また作品終盤では、登場人物の戦後の人生も描かれている。過ぎ去った青春の日々を思い出し、再会する彼女たちが、どんな人生を選択し、どう変化していったかを、ぜひ見届けて欲しい。

『芳華-Youth-』作品情報

【あらすじ】
文化大革命が起こり、毛沢東が亡くなり、中越戦争があった激動の1970年代、中国。戦意高揚と兵士を慰労する為の「文工団」という、軍に属する舞踊団があり、そこには音楽や踊りの才能を買われた若者が集められていた。複雑な家庭の事情から逃れた17歳の少女・シャオピンは、ダンスの才能を認められ、憧れの文工団に入団するが、仲間や寮生活になじめず、いじめの対象となってしまう。そんなシャオピンの唯一の心の支えは、公明正大な模範兵リウ・フォンの存在と励ましだった。だが、時代が大きく変化する中、リウ・フォンが起こした事件がきっかけで、2人は過酷な運命の岐路をたどることになっていく…。

監督・製作:フォン・シャオガン(馮小剛)
脚本・原作:ゲリン・ヤン(厳歌苓)
出演:ホアン・シュエン(黄軒)、ミャオ・ミャオ(苗苗)、チョン・チューシー(鐘楚曦)、ヤン・ツァイユー(楊采鈺) ほか

原題: 芳華 Youth
配給:アット エンタテインメント
<2017年/中国/中国語/135分/カラー/ドルビー/シネスコ/PG-12>
字幕:樋口裕子

2019年4月12日(金)新宿武蔵野館ヒューマントラストシネマ有楽町YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開

© 2017 Zhejiang Dongyang Mayla Media Co., Ltd Huayi Brothers Pictures Limited IQiyi Motion Pictures(Beijing) Co., Ltd Beijing Sparkle Roll Media Corporation Beijing Jingxi Culture&Tourism Co., Ltd All rights reserved

www.houka-youth.com

 

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(本ページの情報は2019年4月時点のものです。最新の配信状況は U-NEXT サイトにてご確認ください。)

【4/5公開】『希望の灯り』ままならぬ人生が輝きを放つとき…素朴で風変わりな仲間と働く穏やかな日々

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旧東ドイツ出身、文壇の異端児クレメンス・マイヤーの短編を映像化。巨大スーパーで働く人々を通し、どんな人生にも輝く瞬間があることを教えてくれるヒューマンドラマだ。切なく美しい映像と、じわじわと温もり押し寄せる繊細な演出と機微な表現に、心震わされる良作。

2019年4月5日(金Bunkamuraル・シネマほか全国順次公開

無口な青年が得た新しい職場、そしてロマンス

巨大スーパーマーケットで、27歳の青年クリスティアンが、深夜の倉庫係として採用されるところからドラマは始まる。首や腕のタトゥーをユニフォームで隠す無口なクリスティアンは、なんとなく物悲しそうな雰囲気をたたえている。

素朴な職場の人々はだれもが、若いクリスティアンにさりげなく温かく接する。ここでは仲間同士、お互いに静かな肯定があり、淡い友情でゆるやかに結びついているのだった。

クリスティアンが、年上の女性マリオンに恋心を抱くと「彼女は既婚者だ」と忠告はしつつ、みんながその恋を見守り、あるいは応援する。そうした反応の根底にあるのは、傷ある者だけが持ち得る優しさだ。

一方、クリスティアンは口下手だが、マリオンには積極的にアプローチ。サプライズを用意し、話しかけ、彼女の心に触れていく。そんなクリスティアンを、憧れの人マリオンは静かに受け入れる。

虐げられてきた香りがする青年・クリスティアンを好演しているのは、ドイツアカデミー賞主演男優賞も受賞している、フランツ・ロゴフスキ。ドイツの旬な俳優で、舞台でダンサーや振付師も務めているという。

年上のミステリアスな女性、マリオンを演じるのは『ありがとうトニ・エルドマン』の娘役で強い印象を残したザンドラ・ヒュラー。2人の演じるロマンスは、とても情緒があり奥深い。

ドイツの東西再統一が人々の胸に残したものは

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本作を撮ったのは「アキ・カウリスマキ監督の寂しさとユーモアを愛している」というトーマス・ステューバー監督。原作は、”東欧版トレインスポッティング”と評されたベストセラー小説を生んだ1977年生まれのクレメンス・マイヤー。2人はとてもウマが合うそうで、すでに何度かタッグを組んで映画を制作してきている。

2人とも旧東ドイツ生まれ。本作に「再統一」という言葉が何度も出てくる通り、ベルリンの壁崩壊の1990年は、すべてのドイツの人々にとって激動の時代だったという。東ドイツの産業後退は失業者を生んだが、一方で生活が豊かになった人もいる。しかし、この時代を経験した人は、東西再統一について、単純には語れないという。

そもそも人が時代を懐かしむのは、一般的な”いい時代”とは限らない。自分が若く勢いがあったころならば、むしろ楽でない時代を懐かしむことだってあるだろう。労働者なら、自分が元気に働いた自分を懐かしく思うかもしれない。クリスティアンの父親のような上司、50代のブルーノも、若き日に過ごした旧東ドイツ時代に郷愁を抱く。

旧東ドイツ時代の若き日を思いながら働く人、職場にしか所属せず漠然とした孤独と不安を抱いたまま働く人。さまざまな労働者の立場や気持ちを映している本作は「働く人々へのリスペクト」が1つのテーマになっている。そして、時代に取り残され、ともすれば忘れられた存在になってしまう社会の片隅に生きる人々…彼らの小さな幸せを、美しく切なく浮かび上がらせる。


叙情的な空気とユーモアとがないまぜに

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美しい映像もこの作品の魅力であり、冒頭のシーンから引き込まれる。監督が「フォークリフトバレエ」と名付けた、スーパーマーケットのバックヤードを優雅に観せる場面では、夜間の倉庫がまるで小宇宙や波立つ海のように描かれている。

主人公クリスティアンの夜勤明け、その薄明るい時間帯に、長距離トラックだけが通り過ぎるアウトバーン(速度無制限の高速道路)の荒涼とした雰囲気も心にしみる。

そんな風景のバックに流れるのは、バッハやヨハン・シュトラウスなどのクラシック音楽、そして労働者の音楽ブルーズだ。聖なるクリスマスミュージックも、クリスティアンとマリオンの関係を美しく彩る。

風景も音楽も人々のやりとりも、とても叙情的な美しい作品だが、もちろんユーモアも忘れていない。職場の仲間同士の悪ふざけ、ウィットに富んだ会話。さらに悪趣味な「フォークリフト研修用映像」は、最低で最高。 人生を楽しむには、ユーモアが必要だと教えてくれる。

哀愁とユーモアがないまぜになっている本作には、さらに、後で胸がキュッとなるような伏線がそこここに組み込まれている。そのサインを受け取った時に、泣くか笑うかは、観るものに委ねられているのだろう。 

作品ニュース

4月6日初回にドイツ菓子をプレゼント

公開日翌日の土曜日、Bunkamuraル・シネマでは、午前中の初回上映を観に行くと、なんと来場者全員に、ドイツのお菓子をプレゼントしてくれる。ドイツ風味の味で、より映画の世界観にハマれるかも。


谷川俊太郎や加藤登紀子のコメントも

著名人のコメントを集めたフライヤーが完成している。作品を観る前でも観た後でも、フライヤーを見かけたら手に取って読んでみては。あなたが共感するのは誰の言葉だろう?

 

オススメしたい『希望の灯り』

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  • スーパーマーケットを小宇宙に変える見事な映像
  • すべての働く人へ捧げられた賛歌
  • ドイツ再統一の哀愁に満ちた、美しい東ドイツ近郊の風景
  • 旬な俳優によるユーモアとロマンス
  • 小さな幸せ、切ない孤独…目配せのような伏線がいっぱい

宝石のようなアイディア、隅々まで行き渡った心温まる演出、無名な人々をほのかに照らし出してくれる優しさと、踏み込むほどに味わいが深まる美しい作品だ。


『希望の灯り』作品情報

【あらすじ】
タトゥーのある内気な青年、27歳のクリスティアンは、旧東ドイツ・ライプツィヒ近郊の巨大スーパーマーケットで、在庫管理係として働き始める。クリスティアンに仕事を教えるのは50代の男性ブルーノ。働く人だれもが、無口なクリスティアンに素朴ながら暖かく、親切に接してくれた。職場は、クリスティアンの居心地のいい場所となっていく。あるとき、クリスティアンは、ミステリアスな女性に目を留める。菓子担当の年上の女性マリオン、彼女に一目惚れをした。そして、コーヒーマシンのある休憩場所で、クリスティアンはマリオンに声をかけられ…。

監督・脚本:トーマス・ステューバー
原作・脚本:クレメンス・マイヤー

出演:​フランツ・ロゴフスキ(『ハッピーエンド』『未来を乗り換えた男』)、ザンドラ・ヒュラー(『ありがとう、トニ・エルドマン』)、ペーター・クルト、アンドレアス・レオポルド、ミヒャエル・シュペヒト、ラモナ・クランツェ=リブノウ ほか
原題:In den Gängen/英題:In the Aisles
配給:彩プロ
<2018年/ドイツ/125分/カラー/ヨーロピアンビスタ/5.1ch>
2019年4月5日(金Bunkamuraル・シネマほか全国順次公開

© 2018 Sommerhaus Filmproduktion GmbH

kibou-akari.ayapro.ne.jp

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(本ページの情報は2019年3月時点のものです。最新の配信状況は U-NEXT サイトにてご確認ください。)

【3/23公開】『天然☆生活』かわいい中年男たちの田園暮らしから、衝撃の展開へ!

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『トータスの旅』の永山正史監督による、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭グランプリ次回作支援作品。出演者はクセモノぞろいで、主演は役の大小にこだわらず数多くの映画作品に出演し、レジェンドになりつつある川瀬陽太。その主人公を脅かす存在に、あらゆる特殊な役柄を難なく飲み込んできた、津田寛治。ニートな中年男が青春を謳歌する田園生活から一転、主人公が追い込まれていく後半の展開が刺激的な、ハイブリットムービーだ。

2019年3月23日(土)新宿K’s cinema ほか全国順次公開

五十路男の「子猫のような可憐さ」

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都会から引っ込んで、無職のまま呑気に田舎暮らしを楽しむ、独身の中年男・タカシ。釣竿をたらしては野山に遊び、のんびり気質でお人好し。さまざまな役を演じてきた川瀬陽太だが、今回はまるで本人そのまま、とばかりにマッチしている。

目標もなくだらしなさそうではあるが、タカシは認知症の叔父の世話を嫌がらずにする、面倒見のいい一面もある。その代わりに居候させてもらって、マイペースに暮らしているのだ。

そんなタカシの田園生活を、青春へと転化させる中年仲間が2人もいる。ずけずけとモノを言う御都合主義の従兄弟・ミツアキ役には、演劇界で名を馳せてきた谷川昭一朗。スーパーの試食品を食い尽くす厚顔の幼馴染のショウ役に、やはり舞台経験を積んできた鶴忠博を配役。気が置けない五十路のオジさんトリオである。

この五十代のオジサン3人を、予告編では「子猫のようにじゃれあう」と、はばかることなく”可愛いアピール”しているのだが、そこに嘘はない。ことにタカシの寛容さ・優しさ・情けなさのバランスは絶妙で、本作は「中年男とは実はキュートな存在である」という認識を広めることになるかもしれない。

一方で津田寛治だけは、五十路の可愛さを放棄し「これぞ津田寛治」といった変態的な味わいを発揮。終始、不気味感の漂う慇懃無礼な人物像を浮かび上がらせている。 

ボンゴと口笛と昭和歌謡と

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本作には懐かしの歌が多く流れる。『バラが咲いた』『見上げてごらん夜の星を』『星影のワルツ』…なぜか劇中で、主人公が軽快にボンゴを叩きながら、歌い上げ口笛を披露するのだ。今まで、あらゆる作品で、ギターやウクレレで弾き語るという人の登場は、星の数ほどあっただろうが…なぜか本作の主人公はボンゴである。

ポコポコと心地よく響く打楽器、これは単に牧歌的な暮らしを彩る小道具なのだろう…と高を括ってはいけない。人から愛用された物には、持ち主の魂や念が宿ることがあるという。ことに音楽と共にある道具となれば、なおさらだろう。この楽器は後半で重要なアイテムとなっていく。

それにしても、ボンゴの響きとともにある川瀬陽太の歌う昭和の楽曲の数々が実に印象的。この歌声は、本作のイメージと共に観る者の記憶にしっかりと刻み込まれるだろう。 

天然vs.天然! 外来種だって天然モノ

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当然ながら本品は、タカシたちの楽しい中年の青春の日々だけでは終わらない。描かれる「天然」が、もう一つある。突如都会からやってきた一家、父(津田寛治)、母(三枝奈都紀)、娘(秋枝一愛)だ。おしゃれなナチュラルライフを実践しているこの三人家族。母はマクロビ食を愛し抜き、父は「古民家カフェをやるのが妻の夢」と熱く語り、妻と娘に依存している。不自然な闇が見え隠れしつつ、こっちの一家も「天然」派なのだ。

都会からやってきた「外来種」とも言えるこの無添加一家が、タカシの悠々自適な田園生活を少しずつおびやかす存在になっていく。「天然」対「天然」。この対立が、平和な田舎の風景を一転させ、やがて、おそらく誰にも予想できないであろう方向へと転がっていく。ジャンルすらわからなくなるスリリング展開に、多くの人が手に汗を握るだろう。

作品ニュース

 ほろ酔い対談@新宿ゴールデン街」公開中

本作公開記念の、川瀬陽太&津田寛治・対談ムービーがアップされている。場所が新宿ゴールデン街なのもいい感じだ。

 
お得な前売り券発売中

東京のメイン上映館である新宿K’s cinema でもお得な前売り券が発売中。

制作・宣伝も手作り感のある本作は、通常の窓口のほか関係者の手売りも告知されている。プレゼントのステッカーは、入場時もらえるシステム。ステッカーは3種類あり、作品に登場する重要アイテムのボンゴを前面に押し出したデザインもあり。

 

オススメしたい『天然☆生活』

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  • 五十路の中年男たちがじゃれあって青春を謳歌する可愛らしさ
  • 茅葺き屋根も美しい、緑いっぱいの田園風景
  • ボンゴを叩きながら川瀬陽太が歌い上げる昭和の名曲の数々
  • 津田寛治らが演じる、外来種ナチュラリストの侵略ぶり
  • なぜか某分野のスペシャリスト・百武朋が参加する展開へ

映画界から愛される川瀬陽太主演とあって、あらゆる方向から楽しめて、仕掛けが満載な一本。「観ていない人には決して話してはいけない」顛末・結末はぜひ映画館で楽しんでほしい。 

『天然☆生活』作品情報

【あらすじ】

のどかな田舎町で、認知症の叔父の介護をしながら、茅葺き屋根の古民家に居候暮らしをしているタカシ(川瀬陽太)は五十歳独身。叔父が亡くなると、その息子であるミツアキ(谷川昭一朗)が戻って来て、幼馴染みのショウ(鶴忠博)も加わり、独身中年男3人で喧嘩したりじゃれたりしながら楽しい日々を過ごすようになる。そんな矢先、東京からナチュラリスト家族が引っ越してきて、古民家カフェを開く夢や、ナチュラル思想を異様な熱意で語るり始める。やがて一家は、タカシが暮らす古民家に目をつけ…。

 

(ゆうばり国際ファンタスティック映画祭グランプリ 次回作支援作品)

監督・編集:永山正史
出演:川瀬陽太(『64』『菊とギロチン』)、津田寛治、谷川昭一朗(『たまゆら』『モリのいる場所』)、鶴忠博(『サムライガール21』)、三枝奈都紀、秋枝一愛、岡田亜矢、関口篤、はやしだみき、百元夏繪、才籐了介、諏訪瑞樹、木村知貴、満利江、湯舟すぴか、長尾卓磨 ほか
製作:弥富圭一郎、永山正史
製作協力:ゆうばり国際ファンタスティック映画祭
脚本:
鈴木由理子、永山正史
音楽:
Eriya Ishikawa
特殊造形:
百武朋
配給:
Spectra Film(永山正史)
<2018年/日本/96分/DCP/16:9 >
英題:BEING NATURAL
2019年3月23日(土)新宿K’s cinema ほか全国順次公開
©TADASHI NAGAYAMA

www.tennen-seikatsu.com

 

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【3/9公開】『たちあがる女』アイスランドの自然と音楽を愛し、弓を片手に戦うミステリアスなヒロイン

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たっぷりな皮肉とユーモアに愛嬌を盛り込んだ作風で、アキ・カウリスマキやロイ・アンダーソンに続く北欧の才能として注目を浴びる、ベネディクト・エルリングソン監督。その最新作はコメディードラマであり、音楽と自然に彩られた、強さと優しさについての物語。音楽講師と活動家、2つの顔をもった魅力あふれる新たなヒロイン像が誕生。彼女はアイスランドから世界を救う!

2019年3月9日(土)YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開

 

土にまみれて弓を引く、ハットラの孤高の戦い

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アイスランドの自然を強く愛するため、環境を破壊する工場に対し、過激な戦いを挑み続けるコードネーム”山女”と呼ばれる謎の存在…それが地元合唱団の指導をしているヒロイン・ハットラの、決して知られてはならないもう1つの顔だ。

美しい風景を背景に、1人奮闘するハットラの戦いはヘビーでハード。泥にまみれ、川に突っ込み、荷物を背負って大自然の中をかけ抜ける姿は、戦場の兵士のよう。弓を絞りながら、固い意志が浮かぶ表情は、狩りの女神・アルテミスのようなタフな美しさもたたえている。

正体を知られぬように、ハットラは体力とともに頭脳も使う。その賢さと抜かりなさもかっこいい。そして大胆な作戦には、ときおりクスッと笑わせるようなユーモアのセンスも光っていて、私たちを楽しませてくれる。

ハットラの決心を彩る楽隊

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「音楽に満ちた作品」との評判も高い本作は、劇判が特徴的。演奏するブラスバンドの楽隊とウクライナ合唱隊が、実体化して映像の中に登場する。

劇伴ミュージシャンが劇中に登場、というと『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督・2014年公開)を思い出す人もいるだろう。

ドラマーが劇中に現れることで、現実と幻想が錯綜する主人公の状況を表した『バードマン』に対し、本作は、楽隊たちが戦うヒロイン・ハットラの前向きな決心や心情を表しているかよう。

ハットラが何かを成し遂げる背後で見守るように演奏していることもあれば、スッと音もなく楽隊が登場すると、何か大きなことが起こる前兆であったりもする。彼らが登場することで、何かしらワクワクさせてくれるのだ。

ハットラは愛と優しさに溢れた女性

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とびきり過激な行動で度肝を抜くハットラは、強くはあるが無骨な戦士ではなく、音楽が好きで、愛に満ちた女性。自然を愛する気持ちが強く、環境を守るために、もう1つの顔をもつようになったのだ。

そんなハットラには、夢があった。それは、養子を受け入れて母親になるということ。だが、なかなか養子縁組の申請は受け入れられずに、時が過ぎていた。そしてついに、その申請に許可が下り、養子を迎えられることになるとハットラは焦る。

活動家としての行動し続けることは、身を危険にさらすことになる。もし正体が公になれば逮捕は免れず、当然夢は破れることになる。

しかし、これからの子どもたちのためにも、自然を守らねば、という思いは本物。1人の女性にのしかかる重すぎる責任感…。本作は環境破壊、地球温暖化という現実への警鐘を、強く鳴らしている作品なのだ。

作品ニュース

ヒロインは双子の姉妹

本作のヒロイン・ハットラは、双子の姉妹がいるという設定。だから女優・ハルドラ・ゲイルハルズドッティルは、2つの顔もつハットラ役を演じながらも、さらに見た目も中身も正反対という姉アウサ役、もう1役を演じ分けるという大役を担っている。

 

劇中歌をアイスランド大使館で披露

本作の試写会がアイスランド大使館で行われた際、国立音楽大学出身の3人組ボーカル”あされん”が、劇中歌「Vorvisa」を見事な歌声で披露した。その動画が配信中だ。

 

オススメしたい『たちあがる女』

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  • アイスランドの自然の美しさ
  • 頭脳と体力を絞り出す”山女”の戦いっぷり
  • 母親になる夢と危険な責務にゆれるハットラの葛藤
  • 2つの顔+姉役を演じる分ける演技力
  • 画面に登場する劇伴奏者が奏でる音楽

脚本や演出、ストーリー性も素晴らしいが、なんといってもアイスランドの美しい自然があってこそ映える作品。風景の素晴らしさも、ぜひ堪能してほしい。

ハットラ役(さらに姉役も)は、演じ分けが必要で演技力を要する難役。だからこそか、ジョディ・フォスターが惚れ込み、自ら監督・主演でハリウッドでリメイクが決定しているそうだ。小柄なジョディ・フォスターは、また別のヒロイン像を生むだろう。

『たちあがる女』作品情報

【あらすじ】
風光明娼なアイスランドの田舎町で、謎の環境活動家”山女”として、地元のアルミニウム工場に対し、孤独な闘いを繰り広げている女性がいた。その正体は、自然と音楽を愛するセミプ口合唱団の指揮者である女性・ハットラ。”山女”は周囲に知られざる、もうーつの顔なのだった。そんな彼女の元に、養子申請受け入れの知らせが来る。長年の願いだった母親になるという夢のため、ハットラはアルミニウム工場との決着をつけるべく、最終決戦の準備に取り掛かる…。


 監督:ベネディクト・エルリングソン(『馬々と人間たち』)
出演:ハルドラ・ゲイルハルズドッティル、ヨハン・シグルズアルソン、ヨルンドゥル・ラグナルソン、マルガリータ・ヒルスカ、ビヨルン・トールズ、ヨン・グナール ほか
音楽:ダヴィズ・トール・ヨンソン
英題:Woman at war
配給:トランスフォーマー
<2018年/アイスランド・フランス・ウクライナ合作/101分/カラー/5.1ch>
日本語字幕:岩辺いずみ
後援:駐日アイスランド大使館

2019年アカデミー賞®アイスランド代表作品/2018年カンヌ国際映画祭 批評家週間 劇作家作曲家協会賞受賞/2018年 モントリオール・ニューシネマ映画祭 最優秀女優賞受賞/2018年 バリャドリッド国際映画祭 最優秀女優賞/2018年 ラックス賞 最優秀作品賞受賞/2018年 ハンブルク映画祭アートシネマ賞 最優秀作品賞受賞/2018年 ノルディック映画賞 受賞/2018年 セヴィル・ヨーロッパ映画賞 観客賞受賞


2019年3月9日(土)YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開
©2018-Slot Machine-Gulldrengurinn-Solar Media Entertainment-Ukrainian State Film Agency-Köggull Filmworks-Vintage Pictures

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(本ページの情報は2019年3月時点のものです。最新の配信状況は U-NEXT サイトにてご確認ください。)

【3/1公開】『岬の兄妹』障碍、貧困、犯罪…禁断のテーマの奥から、たくましい生命力がほとばしる意欲作!

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貧困、障碍(しょうがい)、性、犯罪、暴力と衝撃的な要素をてんこ盛りにした話題作。「一切の妥協なし」という片山慎三監督の言葉通りではあるが、いや、むしろそれ以上…鬼のような不動の覚悟だ。どうしようもないやるせなさを、生きることへの執着に昇華するような、凄まじいエネルギッシュな衝撃作。

2019年3月1日(金)よりイオンシネマ板橋ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次ロードショー

障碍ゆえの貧困、貧困ゆえの犯罪…躊躇なく暗部に切り込んでいくf:id:kappa7haruhi:20190222005459j:plain

映画に禁断のテーマなど存在するのか? と思う方もいるだろうが、タブーにタブーが重なっていく本作には「えっ、大丈夫か…」と及び腰になる人も多いだろう。その上で、どんどん作品の持つ力に引き込まれ、目が離せなくなってしまう。

自閉症で社会に出たことのない妹をかかえた、片足が不自由な兄。先の見えない生活でも、懸命に働き自分なりに妹を守っている。しかしそんな兄が突然、リストラされてしまうのだ。

食べ物に困るほどの貧困に追い詰められた兄は、知らぬ間に妹が行きずりの男に体を許し、1万円を受け取っていた、つい最近の出来事を思い出す。妹はわかっているのか、いないのか「冒険にいく…」と嫌がる様子もない。「そうだな、冒険に行くか」と、兄は妹を連れて町へと出かけていくのだった。

想定内の展開から、やがて予想外の展開へ

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こうして、兄は妹の売春斡旋を始めるが、最初はなかなか上手くいかない。自閉症の妹は、どうやってもプロの売春婦のようには振舞えないし、お約束の「勝手に商売しやがって」というヤカラが登場。ここまでは想定内の展開と言えるだろう。

だが少しずつ兄妹のそんな生活に、偶然の選択、出会い、出来事が重なっていくことで、新たな心の変化が起こる。そこから徐々にこの作品独自の世界へと繋がっていく。多くの人が、今まで知らなかった”何か”をそこに見るだろう。

本作の撮影は約2年がかりで行われ、監督が主演キャストと撮影をしながらディスカッションし、展開を考えていったという。そんな中で、人物やストーリーがここまで生きている脚本が作り出されたのだろう。


暗さや悲惨さを凌駕する、登場人物の生存本能!

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本作のテーマを聞いて「暗澹たる気分になりそう」という予測のもと、劇場へ行くことを躊躇する人もいるだろう。しかし、実際に作品を観れば、受け取るものは全く想像もしていなかったものになるだろう。例えば、それは、生きる力への感動、障碍をかかえた人生への共感、生きねば! という勇気…かもしれない。おそらく、それは人それぞれだ。

この作品が規格外に素晴らしいのは、テーマに逃げがないだけでなく、”取り扱い注意”のテーマへ、繊細なリアル、ユーモア、生命力を盛り込み、観ている者を”とんでもない場所”へと連れ出してしまうことだ。

そう、これが決して自分の物語ではないと、誰が言えるのだろうか?

作品ニュース

「注目の問題作」として取材殺到

片山監督は、ポン・ジュノ監督(『母なる証明』)や山下敦弘監督(『苦役列車』)の助監督という経歴がある。そして本作が初長編監督作だというから驚きだ。2年間の制作期間で、脚本も編集も自ら手がけている。

本作を観たポン・ジュノ監督からは「君はなんてイカれた映画監督だ。(中略)それでも映画は力強く美しいんだから驚いた…」という熱いコメントが寄せられている。

本作は業界激震の問題作として、多くのメディアが片山慎三監督へのインタビューを希望したという。そんな日のツイートがこちら。

 さぬき映画祭で上映、集まる賞賛

うどん県こと香川県で開催された「さぬき映画祭」で『岬の兄妹』が2月10日に上映された。鑑賞した多くの人の感想もツイートに流れている。

また、菊地成孔、ピーター・バラカン、尾崎世界観、呉美保監督、犬童一心監督、瀬々敬久監督、池松壮亮、高良健吾らから寄せられた、熱いレビューコメントを『岬の兄妹』公式サイトで読むことができる。

  

オススメしたい『岬の兄妹』

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  • 俳優たちの体からほとばしる、圧倒的な生命力
  • 禁断のテーマを扱いながらも、散りばめられた抜群のユーモア
  • 悲劇の果てに見えてくる、人間賛歌の不思議
  • 追い詰められた人にも優しさやおかしみを見出す視点

この作品がこんなにも力強いものに仕上がったのは、片山監督による妥協知らずの粘りに加え、主演俳優たちの力も大きいだろう。

兄・良夫を演じる、お人好し感あふれるキャラをもちながら、エネルギッシュな松浦祐也。そして妹・真理子を、無邪気かつ艶やかに、そして障碍を持つ人のちゃっかりした面まで演じている和田光沙。

この2人の「人物像を浮き彫りにする役者力」がすさまじい。今後の日本映画に大きな力を与えるであろう、注目していきたい存在だ。

『岬の兄妹』作品情報

【あらすじ】
とある地方の港町、自閉症の妹・真理子と、兄・良夫は2人きりで賃貸ボロ屋に住んでいる。兄が仕事に行く間、監禁状態にされている真理子は、ときどきうまく家を抜け出しては放浪している。ある夜、やっと見つけ出した妹が、町の男に体を許して1万円を受け取っていたことを知り、良夫はきつくしかりつけるのだった。

足の障碍を理由に、良夫が突然リストラされてしまうと、あっという間に食べ物は尽き、電気は消えた。唯一の友人で警察官の肇くんにももはや頼れず、困り果てた末、良夫は、妹の売春斡旋で金銭を得るようになってしまう。

そんな日々の中、良夫は今まで知り得なかった、真理子の中にある本当の喜びや悲しみに触れ、戸惑いを感じるのだった。そしてやがて起こる新たな展開に、良夫はまた追い詰められていく…。

監督・製作・プロデューサー・編集・脚本:片山慎三

出演:松浦祐也(『ローリング』)、和田光沙(『菊とギロチン』)、
北山雅康、中村祐太郎、岩谷健司、時任亜弓、ナガセケイ、松澤匠、芹澤興人、杉本安生、松本優夏、荒木次元、平田敬士、平岩輝海、日向峻彬、馬渕将太、保中良介、中園大雅、奥村アキラ、日方想、萱裕輔、中園さくら、春園幸宏、佐土原正紀、土田成明、谷口正浩、山本雅弘、ジャック、刈谷育子、内山知子、万徳寺あんり、市川宗二郎、橘秀樹、田口美貴、風祭ゆき(特別出演) ほか

配給:プレシディオ
<2018年/シネマスコープ/89分/5.1ch SURROUND SOUND/R15+>

2019年3月1日(金)よりイオンシネマ板橋ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次ロードショー

misaki-kyoudai.jp

© SHINZO KATAYAMA

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(本ページの情報は2019年2月時点のものです。最新の配信状況は U-NEXT サイトにてご確認ください。)

 

【3/1公開】『天国でまた会おう』美しくユーモラス、かつ痛みを伴う寓話!仮面の青年と運命を共にした友情の日々

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第一次世界大戦直後のフランスを舞台に、めくるめく魔術のような美しい映像と、先の読めないストーリーで心を掴まれる、5部門のセザール賞を受賞した話題作!  戦争のおろかさ、父と息子の確執、年の差を超えた友情など、普遍的なテーマを描きつつ、観たこともないエンタテイメントが展開する。

2019年3月1日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー

戦火をくぐる迫力の戦闘シーンから始まる物語

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本作は冒頭から激しい戦火のシーンが展開する。悪意たっぷりな上官・プラデルのせいで、せっかく休戦目前だというときに大量の死者を出す銃撃戦に…。のっけから迫力いっぱいで、観ているだけで、戦地の恐怖を体感したような気分になる。

この戦いで、中年男アルベールはすんでのところで芸術家肌の青年、エドゥアールに命を救われる。2人の間に固い絆が生まれるが、同時にエドゥアールは、美しかった顔の下半分吹き飛ばされるという悲劇に襲われる。

この描写は「PG-12」部分なのだろう、エドゥアールが重症を負った姿はおそろしく、痛々しい。戦争の悲惨さが、なんのオブラートにも包まれずどっしりとのしかかってくる。

歓迎されない帰還兵としてのパリ暮らし

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命の恩人の回復を願うアルベールだったが、九死に一生を得たエドゥアールは、自分の顔を見て驚愕する。御曹司のエドゥアールは「こんな姿で家に帰れない」と訴え「自分は死んだことにしてほしい」と願う。エドゥアールは、もともと父親と不仲だったのだ。

アルベールはほかの兵士の屍を代用したり、書類をごまかしたりして、エドゥアールの望みを叶えてやろうと奮闘する。戦後のどさくさの中では、実際に偽装ができたかはともかく、兵士の生死を取り違えられるといことは、世界中の戦地で起こっていることだろう。

こうしてエドゥアールは青年らしい美しさを失っただけではなく、存在しない人間となってしまった。さらに声も失い、痛みと戦う後遺症に苦しむようになる。

パリに戻ったアルベールは、エドゥアールのため、手段を選ばず痛み止めのモルヒネを運んでやるが、仕事も金もない2人の生活は行き詰まり、追い詰められ、お互いにやるせなさをぶつけ合うようになってしまう…。

美しい仮面をはじめ、味わい深い美術をが次々と

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身も心も傷ついていたエドゥアールは、身寄りのない少女、ルイーズと心を通わせるようになる。喋れないエドゥアールが言いたいことは、ルイーズが通訳のようにアルベールに伝えることができた。

また、芸術の才能あふれるエドゥアールは、崩壊した顔を隠しながら装える、自作の美しい仮面を被ることで、わずかに立ち直っていく。

ここで登場する数々仮面がすばらしい。ユーモラスな仕掛けがある仮面、有名な絵画を思わせる仮面など、魅惑の芸術品となっている。ここから、次々現れる仮面を楽しみに、作品を観てくことができる。味わいある家具や小道具の美術にも、目を引かれる。

やがてエドゥアールは、帰還兵に冷たく、戦没者を勇者扱いする風潮を逆手に取って、国を相手に金をだまし取る詐欺を思いつく。しかし一方で、このころ実家では、エドゥアールが知り得なかった、とんでもない変化が訪れていた…。

作品ニュース

公開記念の「デコレーション仮面作りワークショップ」を開催

芸術の才能あふれるエドゥアールが作る、数々の美しい仮面もみどころのひとつ。そんな本作にちなんで、仮面作りにチャレンジできるワークショップが2019年3月2日(土)に開催され、参加者を募集している。

講師は幅広い活動で人気のイラストレーターで、仮面創作家の顔ももっている”白ふくろう舎”さんだ。

 


さまざまなコメントをツイートにて発表

『天国でまた会おう』公式アカウントでは、文化人や著名人の作品感想コメントを次々ツイート中。

作品エピソードも併せてつぶやかれているので、追いかけてみると作品への理解が深まる。こちらでは、俳優でもあるアルベール・デュポンテル監督が主演もつとめることになった経緯を紹介している。

 

オススメしたい『天国でまた会おう』

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  • ユーモラスな雰囲気の中で描かれる"戦争の悲惨さ"
  • "父と息子の確執"という普遍的なテーマも
  • 仮面をはじめ、美しいビジュアルがいっぱい
  • コメディ要素もいっぱいのエンタテイメント
  • 青年と中年男そして少女の、世代を超えた愛と友情

シンプルなタイトルからは想像できないほど、さまざまな要素が絡まり合い、ぎっしりと詰まっている本作。繊細で奇妙な仮面をはじめとした美しいビジュアルに満たされながら、戦争の悲惨さも伝え、家族や友情について描き、軽快な笑いも満載。

洒落ていながら、古き良き映画のエッセンスを感じさせ『スティング』のような冒険活劇であり、チャップリン作品のように社会問題提議やロマンスが両立され、クストリッツァ作品のような寓話性まで兼ね備えている。そして、最後には切なくもハッピーになれる、感性にも贅沢な感動作なのだ。

『天国でまた会おう』作品情報

【あらすじ】
1918年、第一次世界大戦・休戦目前の西部戦線。戦争好きな上官のせいで、戦火の中で生き埋めにされた中年男・アルベールを救った良家の青年・エドゥアールは、そのとき顔に重傷を負ってしまう。

パリに戻った2人を待っていたのは、戦没者を称え、帰還兵に冷たい世間。エドゥアールは後遺症をかかえ、生還を実家にひた隠しにする。一方アルベールは仕事も恋人も失いながら、エドゥアールを支えて生きようとする。そこに、声を失ったエドゥアールの想いを“通訳”する少女が加わり、人生を巻き返すため、国を相手にひと儲けする大胆な詐欺を企てる。だが、そこには隠された本当の目的があった…。

© 2017 STADENN PROD. – MANCHESTER FILMS – GAUMONT – France 2 CINEMA

監督:
アルベール・デュポンテル
脚本:アルベール・デュポンテル、ピエール・ルメートル
出演:
ナウエル・ペレーズ・ビスカヤート(『BPM ビート・パー・ミニット』)、アルベール・デュポンテル(『ロング・エンゲージメント』)、ロラン・ラフィット(『エル ELLE』)、ニエル・アレストリュプ(『真夜中のピアニスト』)、エミリー・ドゥケンヌ(『ロゼッタ』)、メラニー・ティエリー(『ザ・ダンサー』) ほか仮面制作:セシル・クラッチマー


原作:
ピエール・ルメートル『天国でまた会おう』
原題:Au Revoir Là-Haut 英題:SEE YOU UP THERE
配給:キノフィルムズ、木下グループ
<2017年/フランス/フランス語/117分/カラー/シネマスコープ/5.1ch/PG-12>
日本語字幕:加藤リツ子
©Jérôme Prébois / ADCB Films(スチール)

2019年3月1日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー

tengoku-movie.com

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