雪山の山荘で男が転落死した。 男の妻に殺人容疑がかかり、 唯一の証人は視覚障がいのある11歳の息子。これは事故か、自殺か、殺人か。やがて疑惑の妻は法廷へと引き出され、息子も証言台に立つことに…事件を解明するミステリーにとどまらず、法廷を通し、一家それぞれの人生の細部が浮き上がってくる心理サスペンス。
主演にドイツ出身のザンドラ・ヒュラー(『希望の灯り』『ありがとう、トニ・エルドマン』)。カンヌ国際映画祭パルムドール(最高賞)受賞作品であり、第96回アカデミー賞にも5部門ノミネートされている話題作!
2024年2/23(金・祝) TOHOシネマズ シャンテ他全国順次ロードショー
妻への来客中、夫は何を思い爆音の音楽を流したのか
ベストセラー作家の妻サンドラは、雪山にある山荘の自宅へ学生を招き、インタビューを受け、会話を楽しんでいた。しかし、上階で作業中の夫サミュエルが、なぜか会話を遮るほどの大音量で音楽を流し始めたためにインタビューは中断、「また改めて」とサンドラは学生を送り出す。
やがて視覚障害のある11歳の息子ダニエルが愛犬との散歩から戻ると、屋外に血を流した父が倒れていることに気づく。夫のサミュエルは爆音で流した音楽以外、何も語ることなく遺体となっての登場となる。この状況や映像から読み取れる印象で、冒頭から、家族の関係や登場人物のキャラクターにグイグイ引き込まれるだろう。
事故か、自殺か、殺人か
第一発見者のダニエルが見えていないこともあり、検死や検証の結果がスッキリしないまま、サンドラが夫を殺した容疑者となってしまう。
旧友の弁護士ヴァンサンを呼び寄せたサンドラは「私が昼寝をしている間に事件は起こった」と説明する。弁護士はこの事件はサミュエルの自殺であると裁判で主張することを決めるが、当初サンドラは「彼は子どもの前で自殺はしないからこれは事故だ」と異を唱える。しかし、過去を思い出しながらやはり自殺だろうか、ともつぶやく。
裁判では自殺かサンドラによる他殺か、という二択になっていく。複数の証言者がによってそれぞれにとっての「真実」が語られる。その中でドイツ出身のサンドラが得意ではないフランス語での証言を求められ、弁護士の発言の機会も勢い次第であったりと、あまり秩序立っていないフランス式の裁判が展開。他の法廷ものの映画とは違った雰囲気を感じさせる。
賢い人物であることを感じさせるサンドラはほとんどの場面で冷静だ。そんな中、ドイツ語、フランス語、英語と3カ国語を話すことにより、彼女のキャラクターはよりミステリアスで複雑に見えてくる。
複雑に絡みあっていくリアルな要素がたっぷり
USBに残されていたという夫婦の会話の録音が証拠として提出されると、息子ダニエルも立ち会う中、法廷には、冷静で実直な会話から徐々に思いがむき出しになっていく夫婦の会話が響きわたる。やがてダニエルは、自らの意思で再び証言することを望む。
フランスの雪山で暮らしている理由や思い、息子が視覚障害者となった事故の状況や、妻の過去の過ちやセクシャリティといった、複雑な夫婦や家庭の事情が少しずつ浮き彫りになり、観ている者も夫婦間や家族の関係に巻き込まれ、それぞれの生き様に触れることができる。
夫サミュエルの死が、事故か自殺か殺人か、という単純な謎解きでなく、人間という謎に肉薄する極上サスペンスへと展開すると、身に沁みるシンパシーのようなものが胸にじわじわと浸透してくる。
話が進むごとに謎が解きほぐされていくだけではなく、人物の細部が明かされていく人間ドラマだ。ちなみに犬も名演技を見せ、重要な役割を担っているのも見どころだ。
作品ニュース
英国アカデミー脚本賞受賞
パートナーと共同で書いた脚本が
2/28(日)に発表された英国アカデミー賞で #落下の解剖学 が脚本賞受賞!
— 映画「落下の解剖学」公式 (@Anatomy2024) 2024年2月19日
夫婦に何があったのか…を解剖していく本作の脚本は、トリエ監督と、彼女のプライベートパートナーでもあるアルチュール・アラリの共同執筆
本作鑑賞後、パートナーとこの脚本を書いたのかと思うと、ちょっとゾクッとします pic.twitter.com/ycU1AVG190
ブックカバープレゼントのキャンペーン
六本木蔦屋書店で実施中。
現在ポスター展を開催中の『#落下の解剖学』。売場写真を撮影し、SNSに投稿して頂くとその場でブックカバープレゼントのキャンペーンがスタートしました。
— 六本木 蔦屋書店 (@R_tsutaya_books) 2024年2月17日
是非ご参加下さい。
映画は来週2/23㈮公開です。 pic.twitter.com/s1HkP29Qhc
オススメしたい『落下の解剖学』
- 事件の謎解きで終わらない、人間という謎に迫るドラマ
- ザンドラ・ヒュー演じる複雑なヒロイン像
- 秀逸な脚本と計算された映像
- 「思いもよらぬ、だが納得」のあと味
『落下の解剖学』作品情報
【あらすじ】
人里離れた雪山の山荘で、男が転落死した。はじめは事故と思われたが、次第にベストセラー作家である妻サンドラ(ザンドラ・ヒュラー)に殺人容疑が向けられる。現場に居合わせたのは、視覚障がいのある11歳の息子だけ。事件の真相を追っていく中で、夫婦の秘密や嘘が暴露され、登場人物の数だけ〈真実〉が現れるが…。
監督:ジュスティーヌ・トリエ
脚本:ジュスティーヌ・トリエ、アルチュール・アラリ
出演:ザンドラ・ヒュラー、スワン・アルロー、ミロ・マシャド・グラネール、アントワーヌ・レナルツ ほか
原題:Anatomie d'une chute
配給:ギャガ
<2023年/フランス/カラー/ビスタ/5.1chデジタル/152分/G>
字幕翻訳:松崎広幸
2024年2/23(金・祝) TOHOシネマズ シャンテ他全国順次ロードショー
© 2023 L.F.P. – Les Films Pelléas / Les Films de Pierre / France 2 Cinéma / Auvergne‐Rhône‐Alpes Cinéma
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