東京・ミニシアター生活

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【6/5公開】『ルース・エドガー』オバマの再来と賞賛される、完璧な高校生ルースは何を望むのか

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文武両道、同級生からの信頼も篤い黒人高校生のルース。しかし課題のレポートから、同じアフリカ系黒人である女性教師ウィルソンと対立。そこからルースとその養父母の順風満帆だった日常が大きく揺らぎ出す。一方で教師ウィルソンの身にも、奇妙な出来事が次々と降りかかるように……。果たしてルースは過激な思想を持つ危険人物なのか? 不幸な身の上を乗り越えたヒーローなのか? 2019年サンダンス映画祭でプレミア上映で絶賛され、数々の映画賞にノミネートされた注目作。サスペンスフルではあるが、ヒューマンドラマ。

2020年6月5日(金)ヒューマントラストシネマ渋谷 ほか全国順次公開

自慢の息子に翻弄される養母

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優等生でスピーチも討論も得意な高校生ルース(ケルヴィン・ハリソン・Jr.)は、養父母エイミー(ナオミ・ワッツ)とピーター(ティム・ロス)の自慢の息子だ。そんな彼がほころびを見せたのは、女性教師ウィルソン(オクタヴィア・スペンサー)が出した歴史政治学の課題レポートがきっかけだった。

突然ウィルソンから「ルースは危険思想を持っている疑いがある」と突きつけられた母・エイミーは、ただ真実を知ろうとルースの友人らに話を聞こうとする。

もちろん思春期の少年、誰しも大人の理想通りの優等生であるわけがない。問題はその振り幅だ。……やがてエイミーはルースへの信頼と疑いの間で大きく揺れることになっていく。静かなる葛藤を演じるナオミ・ワッツとティム・ロスの繊細な演技は本作の大きなみどころだ。

信念をもつ教師vs天才高校生

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一方、ルースが危険な顔を持っているのでは、と疑いを持った教師のウィルソンは、奇妙な出来事に襲われるようになる。この出来事がルースと関係があると思えばなんとも恐ろしい。しかも学校の自慢生徒で人望もあるルースを敵に回すとなれば、ウィルソンは孤立無援。

ウィルソンの戦いは「静」のエドガー夫妻とは対照的で、本作の核となる熱のある「動」の演技。ノリにノッたオクタヴィア・スペンサーだからこそ演じられる、その説得力を堪能できる。もちろんそんなオクタヴィア・スペンサーを迎え討つ、ルース・エドガー役の若き才能ケルヴィン・ハリソン・Jr.の存在感は、大きな注目を集めるだろう。


これはサスペンスフルなヒューマン・ドラマ

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本作は「謎は全て明らかになり、真実が解明されてオシマイ!」というエンターテイメント作品ではない。サスペンスフルな展開が満載ではあるが、人間の謎めいた本質を探っていく「ヒューマン・ドラマ」なのだ。

人は、生きていく中で自分自身をミステリアスな存在と感じるような局面がある。そしてレッテルを貼られ、シンボル化されることに少なからず違和感・嫌悪感を感じるものだ。怪物であれヒーローであれ、自他からの期待やプレッシャーに抗いながら生きていれば葛藤はつきもの。

また本作で、本質を観客から探られるのは優等生であるルースだけではない。ルースから人間性を試される大人、あるいはルースという存在に影響を受ける同級生ら全ての登場人物が、微妙な変化や不安定な心の奥をのぞかせる。そして人間誰もがみな、不可解な行動をとる可能性のあることを思い出させる。

また、ルースの出自の設定も興味深い。戦火の国・エリトリアで幼いころ暴力的な体験をしており、そこから養父母に救い出されてトラウマを克服している、という身の上。幼児期の体験がその後の人生に与える影響や、今でも世界のどこかで戦争に巻き込まれる子どもたちがいるということについて、少なからず考えるきっかけになるだろう。

作品ニュース

新たな公開日決定

当初、日本公開は5/15予定だった本作。映画館再開後、直ぐの公開となったため、劇場の新しい対応・対策に戸惑うこともあるかもしれない。しかし、ここは映画ファンの気概の見せどころ。事前にしっかりチェックし、お互いが困らないよう準備と心づもりをして出かけよう。

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オススメしたい『ルース・エドガー』

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  • オクタヴィア・スペンサーvsケルヴィン・ハリソン・Jr.の「動的」バトル
  • 対するナオミ・ワッツとティム・ロスの「静的」(だが強い!)葛藤
  • ルースと同級生たちが全編に散りばめている思春期の不安定さ
  • 養子縁組やエリトリアの国の歴史など、背景で描かれる社会的テーマ

 『ルース・エドガー』作品情報

【あらすじ】
バージニア州アーリントンの高校に通うアフリカ系アメリカ人のルース・エドガー(ケルヴィン・ハリソン・Jr.)は、文武両道の模範的な優等生。戦火の国エリトリアで生まれ、7歳の時にアメリカへ渡ってきた彼は、養父母となったエイミー(ナオミ・ワッツ)、ピーター(ティム・ロス)のエドガー夫妻から現在の名前を授かり、幼少期に戦場へ駆り出された悲惨なトラウマを克服した。今や若きバラク・オバマを彷彿とさせる聡明な若者に成長し、将来を嘱望されるルースは、人種のるつぼであるコミュニティの希望の星となっていた。
 そんなある日、エイミーはベテランの歴史教師ハリエット・ウィルソン(オクタヴィア・スペンサー)から学校へ呼び出される。息子のルースが歴史上の人物をテーマにした課題のレポートで、アルジェリア独立運動の革命家フランツ・ファノンを取り上げ、彼の過激な思想について記したというのだ。そして、その内容を問題視したウィルソンはルースのロッカーを捜索し、危険な違法の花火を発見したという。息子のプライバシーを無視して調査を行ったウィルソンに反発するエイミーだったが、不安に駆られ夫のピーターに相談することに……。

監督・製作・共同脚本: ジュリアス・オナー
出演: ナオミ・ワッツ、オクタヴィア・スペンサー、ケルヴィン・ハリソン・Jr.、ティム・ロス ほか

原題:LUCE
配給:キノフィルムズ/東京テアトル
提供:キノフィルムズ

<2019年/アメリカ/英語/カラー/SCOPE/5.1ch/110分/ PG12>

2020年6月5日(金)ヒューマントラストシネマ渋谷 ほか全国順次公開

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