1970年代にドイツに実在した連続殺人鬼フリッツ・ホンカの物語。監督は、三大映画祭で主要な賞を受賞し、前作『女は二度決断する』ではゴールデングローブ賞外国語映画賞も受賞したファティ・アキン。古き良き名曲とともに、残忍な殺人シーンを展開、おかしみある孤独な殺人鬼の日常も綴る。醜い中年のホンカ役を演じるのは、若き新星ヨナス・ダスラー。特殊メイクを施し、驚愕の変貌を見せる。何とも悪趣味でウェルメイドな実録サスペンス!
2020年2月14日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか
全国順次ブラッディバレンタインロードショー!
ロマンチックなBGMに凄惨な殺人
連続殺人鬼フリッツ・ホンカは、一見無害そうな、シケた不細工な中年男なのだが、殺人のやり口も非常に不細工。その衝動的かつ雑な連続殺人が5年間も発覚しなかったのは、身寄りのない売春婦が被害者だったせいではないか、と言われている。
欲望と寂しさから地元のバーで年増女を引っ掛けようとしても鼻にもかけられないホンカは、酒だけで釣れる身元のあやしい年配女を部屋に連れ込んで、これまた不細工な性行為に及び、最終的に怒りの衝動や勢いで殴りつけて殺してしまう。
死体をどうしたものかと考えると、服を脱がせて解体するが、すぐに力尽きる。そしてアパートの押入れに突っ込んでフタをしたり、切断した一部をそこらへんに捨てて「なんとかなった」ことにしてしまうのだ。
伝説の凶悪シリアルキラーたちは、大抵、猟奇的ながらスマートに証拠を消したり、あえて残して美学を見せつけたりするものだが、ホンカはどちらでもない。歴代の殺人鬼の手腕との落差に「ああ、ダメだよ!」と、観客もつい突っ込みを入れたくなる。
そこでかかるBGMは、古き良き時代のロマンチックなポップス。ホンカは部屋でお気に入りのレコードをかけてみたりもする。誰かを部屋に招いたり、死体の処理をするときも……。まるで耳に心地良い音楽に流されるように、ホンカは命の限り、自分の人生を生きようと悪あがきを続ける。
醜悪な殺人鬼から目が離せない“理由”
ゲスで美学のかけらもない殺人鬼の割に、観客が目を背けて終わり、とはならないのがこの作品。思い入れはできなくとも、なんとなく愛着すら感じてしまう不思議……。
そこには、ファティ・アキン監督の見事な脚本と演出力がある。さらに掘り下げれば、ハインツ・ストランク(本作にカメオ出演)の原作も素晴らしいのだろう。そしてトドメは、若さと美貌を封印し、特殊メイクと見事な演技で醜い猫背の殺人鬼を演じているヨナス・ダスラーの目の輝きだ。
アキン監督が「どうすれば、殺人鬼が主人公の物語に観客がついてくるのか」と考え「若い人の目のイノセンス」にたどり着いたのだという。それが当時22歳の俳優ヨナス・ダスラーをキャスティングした理由らしい。
殺人鬼につい興味を引かれてしまう理由としては意外かもしれないが、そこはあえて疑わない方が、モヤモヤせずに作品を思い切り楽しめる気がする。
隣人のような人間味溢れる殺人鬼、コメディ要素も
殺人鬼ホンカは残忍ながら、非常に劣等感が強い。性欲を満たす際には、劣等感や恐怖心を抱かずに済むためだろうか、背が低く歯のない年配の売春婦を好んだという。
好意を持った女性を口説くことなどもちろんできず、挙動不審になり会話もコミカルなやりとりになってしまう。一度タバコの火を貸した美少女ペトラが忘れられずに、妄想を膨らませるシーンは、笑いが漏れてしまうだろう。
しかし、ホンカはたまたま得たきっかけで、生活を立て直そうとする真面目な一面も見せる。親子代々アル中なのに酒を断ち、就職もする。すでに残忍な殺人を犯してとぼけているだけに「がんばれ!」とは言えないのだが「酷いクズなのに努力もできるのか」と少し感心させられもする。
天才的でもなく、モンスターでもない、醜男の殺人鬼ホンカ。その人物像は「もしかしたらすぐ身近にいるかもしれない」とも思わされることで、じわじわと恐怖が迫ってくるのだ。
ちなみに、実際のホンカは、10人兄弟で親からネグレクトにあっていたり、事故で鼻が曲がってしまったなど、それまでの不幸な背景もいろいろあるのだが、その辺りは全く描かれていない。ただ、70年代の分断されたドイツは波乱に満ち、ホンカにとっても女たちにとっても、生き辛い世の中だったことは、スクリーンから滲み出してくる。
作品ニュース
鑑賞券プレゼント
ツイッターの公式アカウントで、鑑賞券を抽選でプレゼント企画。2/10月締め切り。
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— 映画『屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ』2.14公開 (@FatihAkin_movie) 2020年1月30日
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『#ジョーカー』さえ生ぬるい😱?!
70年代ドイツに実在した、天才犯罪者でも、何かに取り憑かれた狂人でもない、”ごく普通”の連続殺人鬼の物語💥
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殺人鬼ホンカを演じるヨナス・ダスラーとは
フリッツ・ホンカを演じているのは、20歳以上年齢が若い俳優、ヨナス・ダスラー。その美青年ぶりは公式アカウントのツイート画像でご確認を。
\『#屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ』キャスト紹介/
— 映画『屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ』2.14公開 (@FatihAkin_movie) 2020年1月18日
🔸#ヨナス・ダスラー(フリッツ・ホンカ役)
ヴァラエティ誌の「注目すべきヨーロッパの若手映画人10人」に選ばれ、『#僕たちは希望という名の列車に乗った』(19)で日本でも注目を集めた、22歳の新鋭俳優!
詳細▶https://t.co/ftzamDpD3H pic.twitter.com/WATJVGdmPX
オススメしたい『屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ』
- 60〜70年代の大衆音楽と、容赦ない殺人描写
- 分断されたドイツで必死に生きる人物たち
- 俳優ヨナス・ダスラーのポテンシャル
- 人間味あふれる登場人物とユーモアある演出
若き美青年俳優の違和感ない怪演の素晴らしさ、そしてしっかり時代背景を感じさせる描写。キツイ場面はてんこ盛りだが、悪趣味全開でウェルメイドという稀有なドイツ映画。……それにしても、 バレンタイデーが公開初日というセンスも、また素晴らしい。
『屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ』作品情報
【あらすじ】
敗戦がまだ尾を引いていた1970年代ドイツ、ハンブルク。安アパートの屋根裏部屋に住むフリッツ・ホンカは、夜な夜な寂しい男と女が集るバー“ゴールデン・グローブ”で酒をあおっていた。醜いホンカがカウンターに座る女に声を掛けても、いつも顔をしかめられるだけ。一見、無害そうに見えるフリッツの狂気に気づく常連客は誰ひとりいなかった……。
第69回ベルリン国際映画祭コンペティション部門正式出品
監督・脚本:ファティ・アキン(『女は二度決断する』『ソウル・キッチン』)
出演:ヨナス・ダスラー、マルガレーテ・ティーゼル、ハーク・ボーム ほか
原題:Der Goldene Handschuh
英題: The Golden Glove
原作:ハインツ・ストランク著『Der Goldene Handschuh』(英題『Golden Glove』)
配給:ビターズ・エンド
<2019年/110分/ドイツ/R15>
2020年2月14日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか
全国順次ブラッディバレンタインロードショー!
©2019 bombero international GmbH&Co. KG/Pathe Films S.A.S./Warner
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(本ページの情報は2020年2月時点のものです。最新の配信状況は U-NEXT サイトにてご確認ください。)