東京・ミニシアター生活

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【8/15公開】『この世の果て、数多の終焉』1945年、仏領インドシナの密林に満ちていく静かな執着と葛藤

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第二次世界大戦末期、フランス領インドシナ。クーデターによる残酷な一斉攻撃を受け、たった1人生き抜いたフランス人兵士・ロベールは、隊列への復帰に見せかけ、密かにベトナム解放軍将校への復讐を果たそうとする。さまようロベールの魂が行き着く先は……。地獄のような戦地のリアリズムに、幻想性が入り混じった残酷な映像美。観る者に委ねる余白を残しつつ歴史の闇をあぶり出す、フランス人監督による戦争映画だ。

2020年8月15日(土)より、シアター・イメージフォーラム他にて全国順次公開

第二次世界大戦とインドシナ戦争の間

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ベトナム戦争(1955年〜1975年)を描いた映画作品は『ディア・ハンター』『地獄の黙示録』『プラトーン』『フルメタル・ジャケット』など数々ある。鬱蒼としたジャングルをさまよう、死と狂気に満ちた名作揃いだ。

そして本作で描くのは、もっと以前、第二次世界大戦末期である1945年3月からの10カ月。フランス領であった"インドシナ(現在のベトナム・ラオス・カンボジアを合わせた領域)が舞台になっている。しかし、重苦しい湿気を孕んだジャングルや戦地特有の禍々しさは、数々の名作映画を生み出したベトナム戦争と酷似している。

物語は、現地に駐在していた日本軍がクーデター”明号作戦”により、フランス軍を一斉攻撃する場面から始まる。

たった1人生き延びるというトラウマ

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クーデターによる大殺戮された死体の下から、1人の青年兵士が抜け出す。大けがを負いながらもたった1人生き延びたロベールは、森をさまよっていたところを地元の農民に救われ、美しい自然の中で回復。しかし本国に帰ることなく、連隊への復帰を希望する。それはただ復讐を遂げるために他ならなかった。

もはやロベールが求めるのは、日本軍の蛮行を見て見ぬ振りをして兄や仲間の虐殺を許したベトナム解放軍の将校ヴォー・ビン・イェンの命だけだった。再び隊列に戻ったロベールは、武装したゲリラに襲われまたも大けがを負い、死と隣り合わせの日々を過ごすことになる。

軍にも従わず、周りの助言にも耳を貸さず、ロベールは、ひたすらヴォー・ビン・イェンへの憎しみを募らせ、彼の姿を追い続け、敵か味方かもわからない現地のベトナム人を引き入れながら、さらなるジャングルの奥へと身を投じていく……。

観客に委ねられる余白

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将校ヴォー・ビン・イェンへの復讐にだけ異様に執着し続けるロベールだが、武装したゲリラが潜む密林で死と隣り合わせに過ごしながらも、完全に狂うことはない。

心を寄せる娼婦、親身な老作家との出会いがあり、軍隊で友人関係を築いたりもする。ただ誰も、傷ついた魂を抱えたロベールの考えを変えたり、従わせることはできない。

一方でさまざまな出来事や出会いにより、ロベールの自ら内部に葛藤を抱えるようになっていく。そのうえ、ヴォー・ビン・イェンは幻のようになかなかその姿を現さない。この葛藤と幻に執着する状態そのものが作品の本質といえるのではないだろうか。そこには観客に委ねられる余白が存在している。

そしてこのあと、時代はボトナム戦争以前の、インドシナ戦争(1946年12月〜)へとなだれ込んでいくことになる。

 

オススメしたい『この世の果て、数多の終焉』

  • 1945年仏領インドシナ、闇の時代
  • 大虐殺を1人生き残るトラウマ体験
  • 戦地での、1人の兵士の内的葛藤を描く
  • 余白を委ね、枠にとらわれない戦争作品

『この世の果て、数多の終焉』作品情報

【あらすじ】
1945年フランス領インドシナ。ベトナム人民はフランスの植民地支配に反発し、ベトナム解放軍の将校ヴォー・ビン・イェンは反乱を主導していた。3月9日、それまで協力関係にあった日本軍がクーデター”明号作戦”に踏み切る。フランス兵士が一斉攻撃され、大殺戮が行われた。このとき、フランス青年兵士・ロベール(ギャスパー・ウリエル)は、兄が殺害されるのを目撃、大けがを負いながらただひとり生き延びる。

やがて部隊に復帰したロベールは、ジャングルでのゲリラとの戦いに神経をすり減らしながら、将校ヴォー・ビンへの復讐心と執着をますます募らせていく。悪夢のような戦いの日々の中、ロベールは、ベトナム人娼婦・マイ(ラン=ケー・トラン)を愛し、老作家サントンジュ(ジェラール・ドパルデュー)と交流しながらも、フランス軍にも従わず、私怨を晴らすためにジャングルのさらに奥へと身を投じていく……。

 監督:ギョーム・二クルー
出演:ギャスパー・ウリエル、ギョーム・グイ、ラン=ケー・トラン、ジェラール・ドパルデュー ほか

原題:LES CONFINS DU MONDE/英題:TO THE ENDS OF THE WORLD
配給:キノフィルムズ・木下グループ

<2018年/フランス/仏語・ベトナム語/カラー/SCOPE/5.1ch/103分/R18+>
日本語字幕:手束紀子

2020年8月15日(土)より、シアター・イメージフォーラム他にて全国順次公開

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