劇映画からドキュメンタリーまでを手がけ、国内外で高い評価を受ける中村真夕監督の、初のスリラー作品。46歳のヒロインを演じるのは監督たっての希望でキャスティングされた黒沢あすか。中年世代である女性の愛と狂気の深さがクローズアップされた、近年の日本映画としては稀有な作品だ。
2022年3月5日(土)より、ユーロスペースほか全国順次公開
日本人特有の「母と息子」の関係
母親が自分の子ども、特に男の子に注ぐ愛情はとても濃い。
海外での生活が長かった中村真夕監督が、日本に帰ってきたとき、日本の母親の息子に対する「のみこむような」愛情の注ぎ方と執着に一番衝撃を受けたそうだ。監督曰く、日本的というよりアジア的な傾向だという。
そう言われてみれば、そんな母親の“温もり”と“おそろしさ”は、私たちの日常や、身の回りに溢れている気がする。いわゆる依存型の関係だ。
本作ではその関係にどっぷりとハマっている母親の、深い愛情や静かなる狂気、母性と女性の間で揺れ続ける姿が描かれている。
女優・黒沢あすかの魅力を堪能できる“中年女性”のヒロイン
『嫌われ松子の一生』(2006年)のハイテンションな女社長や、『冷たい熱帯魚』(2011年)の凶暴な妻など、インパクトたっぷりのキャラクターにハマり、ときには外国人の役すらも無理なく演じきってきた女優・黒沢あすか。しかし最近では「“ただのおばさん役”に当てはまることを求められている」と感じていたそうだ。
だが、本作ではステレオタイプの母やキャリアウーマンではなく、ミステリアスな中年世代のヒロインを演じている。そのため、母性、妖艶さ、狂気、少女性など、さまざまな表情を見せることになった。本作で、黒沢は、多面的な中年女性を演じられる、数少ない日本人女優であることを証明している。その目つき・声色・全身から沸き立つ匂い……。本作での繊細かつエネルギッシュな表現は、まさに彼女の面目躍如といえる。
また、映画としても、中年女性がヒロインという作品は日本では珍しいのではないだろうか。成熟した女性像を求めてきた映画ファンも、満足させてくれるだろう。
奇妙な関係を受け止める青年を演じた神尾
恵と親子のような恋人のような、不思議な関係に陥っていく青年・雄二を演じたのは、端正な顔立ちの若手俳優・神尾楓樹(ふうじゅ)。
雄二は詐欺グループに下っ端として属している青年であり、その立場からして、とうてい家族関係に恵まれてきたとはいえない、ということは誰もが予想できるだろう。ゆえに雄二は、行方知れずの息子を探し求める恵との関係に、自ら踏み入っていく。神尾は説得力ある演技でそんな経過を見せてくれる。
登場人物としての存在感が極端に立ってしまうと雄二という人物らしくなくなってしまう。一方で、黒沢演じる恵というモンスター級の存在感を受け止める「俳優としての存在感」は必要だ。そのバランスをうまく取ることができたのが、神尾楓樹だった。
また、佐野史郎と丘みつ子が、ごく短いシーンに登場して印象を残すのも心地よく計算的で、間違いのないキャスティングが叶えられている。
作品ニュース
舞台挨拶情報
ユーロスペースにて、黒沢あすか、上村侑、中村真夕監督の初日舞台挨拶1回あり。
【いよいよ明日公開!】映画「親密な他人」3月5日(土)より渋谷ユーロスペースで公開されます12:30分の回上映後には、黒沢あすかさん、上村侑さん、中村真夕監督の初日舞台挨拶があります。https://t.co/2sdwDuIA4H #黒沢あすか #神尾楓珠 #上村侑 #中村真夕 #ユーロスペース pic.twitter.com/mDgip3L5hV
— 親密な他人 Intimate Stranger (@IntimateStrang) 2022年3月4日
ユーロスペースに大看板
ユーロスペースに大看板が出ています。インパクト大!
映画「親密な他人」パンフ完成しました!神尾さんからのメッセージも入ってます。前売り券販売はユーロスペース劇場窓口で本日まで。劇場前の大看板も必見です!https://t.co/2sdwDuIA4H #黒沢あすか #神尾楓珠 #上村侑 #中村真夕 #親密な他人 #ユーロスペース pic.twitter.com/IhL66AI4zj
— 親密な他人 Intimate Stranger (@IntimateStrang) 2022年3月4日
オススメしたい『親密な他人』
- 歳を重ねた中年女性の様々な表情を見せる黒沢あすか
- 孤独な青年を演じる神尾楓珠の奥深さを感じさせる魅力
- ミステリー要素たっぷりのストーリー展開
- 人間の複雑な内面・本質に迫る描写
『親密な他人』作品情報
【あらすじ】
突然行方不明になってしまった最愛の息子・心平の帰りを待ち、日々インターネットをチェックしているシングルマザーの恵。ある日、心平の情報があると連絡をしてきた20歳の雄二に会う。雄二は「心平とはネットカフェでゲームを一緒にプレイした」という。
怪訝に思いながらも、わらにもすがる思いで、雄二を自宅のアパートに招き入れる恵。やがて心平の好きだった「青い鳥」の話に、雄二が触れたことをきっかけに、雄二への興味を深める恵。ネカフェ生活の雄二に「息子が戻るまで部屋で暮らさないか」と提案する。生活を共にし、次第に親子のような、恋愛のような不思議な関係に陥っていく二人だったが……。
監督・脚本:中村真夕
出演:黒沢あすか、神尾楓珠、上村侑、尚玄、佐野史郎、丘みつ子 ほか
配給:シグロ
<2021年/日本/カラー/96分>
2022年3月5日(土)より、ユーロスペースほか全国順次公開
© 2021 シグロ/Omphalos Pictures
〔AD〕
(最新の配信状況は U-NEXT サイトにてご確認ください。)