小説『フランケンシュタイン』の作者は、18歳の英国人女性だったという事実をご存知だろうか。
『フランケンシュタイン』の著者、メアリー・シェリーは文才だけでなく、壮絶な経験をもって、この小説を書き上げた。本作は、メアリーが怪奇小説を書き上げるまで、そして作品に完成後にも降りかかる、女性ならではの苦労まで描かれている。
メアリーを演じるのは、エル・ファニング。監督は『少女は自転車にのって』のハイファ・アル=マンスール、サウジ出身の女性監督だ。
2018年12月15日(土)シネスイッチ銀座、シネマカリテほか全国順次公開
人気女優エル・ファニングの挑戦
映画界に愛され、今や引っ張りだこのエル・ファニング。近年は数多くの作品で、主演、あるいは重要な役のオファーを受け、次々とバラエティに富んだ、重要な作品に出演を続けている。
今回は、初めて母になるヒロインに挑戦。数々の哀しみを受け止める深い心情を表現、全編にわたり物語を引っ張って、観客を惹き付ける。
壮絶な運命を背負うことで、18歳という若さで小説『フランケンシュタイン』を書き上げたメアリー・シェリーの半生を描いた本作。
過酷な出来事が次々起こる中、傷ついては立ち上がり、情熱を捨てず、毅然と前を向こうとした気高いメアリー。彼女を演じきることができたのは、若くして貫禄を備えたエル・ファニングだからだといえるだろう。
怪物=聡明な18歳メアリーの謎
小説『フランケンシュタイン』に登場する、死体から生まれた怪物。そのモデルが自分自身だとメアリーは言う。美しく聡明な、若い女性・メアリーが、なぜ容姿の醜い怪物に自分を投影させたのか、という謎は作本作の中で解ける。
200年もの長きにわたり、世界中で愛されてきた、ゴシックホラーの金字塔『フランケンシュタイン』は、映画、小説、演劇、アニメなど、多くのジャンルのクリエイターにインスピレーションを与え続けている。ティム・バートン、ギレルモ・デル・トロ、デヴィッド・リンチといった、映画界の鬼才を含む、数知れない人々だ。
『フランケンシュタイン』の怪物に人々が魅了されるのは、その背景にメアリーの存在、そして彼女の深い哀しみを感じ取るからなのかもしれない。経験を踏まえた創作が放つエネルギーというのは、圧倒的な強さがあるのではないか。
女性の権利を撮るに値するサウジ出身の監督
本作では、19世紀の英国に、女性蔑視の傾向があり、女性たちが苦しんでいたことが明確に描かれている。そんな中、逆境に立ち向かい、毅然と生きようとするメアリーの姿は力強く、多くの人に勇気を与えるだろう。この作品を、サウジアラビア出身の監督、ハイファ・アル=マンスールが撮ったことは、非常に重要だったのではないだろうか。
ハイファ・アル=マンスール監督が、2012年に『少女は自転車にのって』という作品を撮っている。この作品は、サウジアラビアに住む活発な少女・ワジダの生き生きとした日常を描きつつ、サウジの日常に、男尊女卑が強く残っていることを伝えた。
たとえば、家系図に女の子の名前は載らない、父親は外に家庭を作る。女子は自転車に乗ってはいけない、スニーカーもダメ、男の子とも気軽に話せない……。そんな環境の中でも、自由を掴みとろうとするワジダ。そのたくましくしたたかな姿に、明るい希望を見出すことのできる作品だ。
本作でも「社会的な立場を得られない者の苦しみ」は重要なテーマ。芯に「女生の苦しみ」のリアルさが根づき、一方で、あきらめずに希望の光を見出す勇気を信じられるのは、ハイファ・アル=マンスール監督による演出の力ではないだろうか。
弱者が苦しみ、女性ゆえに認められない社会は、現在もまだ世界中に残っている。その中で存在する人々は、明るい未来を夢見ようと今日も闘っているはずだ。本作は、そんな人々への賛歌とも感じられる。
作品ニュース
宇野亞喜良描き下ろしデザイン
特別鑑賞券は、イラストレーターの巨匠・宇野亞喜良氏の描き下ろしデザインバージョン、特典に同デザインのスペシャルノートも数量限定で発売中。ロマンあふれる美しいデザイン。
『メアリーの総て』のスペシャル劇場鑑賞券のイラストを描いてくださった巨匠・宇野亞喜良先生のアトリエにお邪魔して取材を行いました🌜
— 映画『メアリーの総て』12.15公開 (@maryshelley_jp) November 1, 2018
映画の感想から創作活動への思いまで様々なお話を聞いてきましたよ〜!
取材の模様は近日中に公開されるのでお楽しみに✨ #宇野亞喜良 pic.twitter.com/GXidUckwbY
吉祥寺パルコでコラボキャンペーン
吉祥寺パルコのキャンペーンで『メアリーの総て』映画鑑賞券、非売品パンフレット、文庫本のプレゼント実施中。締め切りは2018年12月9日(日)。
12/15(土)公開 映画『#メアリーの総て』キャンペーン実施中♪✨12/14(金)OPEN「#UPLINK吉祥寺 (@uplink_joji )」でも公開する映画『メアリーの総て』の劇場鑑賞券や #宇野亞喜良 氏描き下ろしデザインのオリジナルグッズが抽選で当たる!■応募方法・詳細はコチラ→https://t.co/7uz66lRHmm … pic.twitter.com/vB4KIjclpJ
— 吉祥寺PARCO(吉祥寺パルコ) (@parco_kichi) November 29, 2018
オススメしたい『メアリーの総て』
- 過酷で数奇なヒロインの運命と小説「フランケンシュタイン」の深い関連
- 若き人気女優エル・ファニングの貫禄
- 19世紀イギリスの衣装・美術、そのアンティークな美しさ
- サウジ出身ハイファ・アル=マンスール監督の説得力ある演出
- 心うたれる、意外なラスト
英国の曇った空の下、母の墓にもたれかかるヒロイン・メアリー。全編にゴシックホラーのような暗さを伴った、美しい雰囲気が流れている。
賢く可憐でありながら、過酷な運命に見舞われ、傷つきながらも、わが道を探し求めるメアリーを演じるエル・ファニングの熱演に引き込まれ、勇気を得るだろう。
また、苦しいだけの物語にならなかったところに、女性や弱者の権利に高い意識を持つハイファ・アル=マンスール監督の手腕を強く感じる。
『メアリーの総て』作品情報
【あらすじ】
舞台は200年前、19世紀の英国。母を亡くし、父を敬愛する少女メアリーは、作家になることを夢見ている。父は再婚しており、慕ってくる義妹とは仲がいいが、継母と折り合いが悪い。そんな継母と距離を置くため、メアリーはスコットランドに住む父の友人の屋敷で暮らすことに。屋敷の読書会でメアリーは“異端の天才詩人”パーシー・シェリーと出会い、惹かれ合う。しかし、パーシーには妻子がいた。情熱に身を任せた2人は、すべてを捨てて駆け落ちをするが、不安定な生活の中、メアリーは生まれて間もない子を失い、パーシーの愛さえも確かではなくなっていく。失意の日々の中、書くことを忘れなかったメアリーの中である「怪物」が誕生する……。
監督:ハイファ・アル=マンスール(『少女は自転車にのって』)
出演:エル・ファニング、ダグラス・ブース、スティーブン・ディレイン、ジョアンヌ・フロガット 、ベン・ハーディ、メイジー・ウィリアムズ、ベル・パウリー、トム・スターリッジ ほか
原題:MARY SHELLEY
配給:ギャガ
<2017年/イギリス・ルクセンブルク・アメリカ合作 //121分/カラー/シネスコ/5.1chデジタル/PG12>
字幕翻訳:牧野琴子
2018年12月15日(土)シネスイッチ銀座、シネマカリテほか全国順次公開
© Parallel Films (Storm) Limited / Juliette Films SA / Parallel (Storm) Limited / The British Film Institute 2017
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(本ページの情報は2018年12月時点のものです。最新の配信状況は U-NEXT サイトにてご確認ください。)