【6/17公開】『世界が引き裂かれる時』ロシアの国境近く、出産の時を待つ夫婦の視点で描くウクライナ侵攻の始まり

ウクライナ東部の村に住む夫婦を主軸に「親ロシア派」と「反ロシア派」対立の緊張感を描いた反戦作品。日常に食い込んでくる争いや暴力への恐怖と戦いながら、崩れかけた家に頑なに留まろうとする妊婦のヒロインが、今もウクライナで必死に生きている女性たちの姿に重なる。壁の崩壊した家屋、荒れ果てた地に広がるひまわり畑。争いの残酷さをはらみながらも美しい映像が印象的だ。

2023年6月17日（土）よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次開

ウクライナ侵攻の始まり、旅客便攻撃事件が背景に

昨年2月から現在も続くロシア・ウクライナ戦争。本作はこの戦争そのものではなく、これへと続くウクライナ・ドネツクで起こった2014年の航空便撃墜事件を背景にした作品だ。

2014年7月17日に、親ロシア派・分離主義武装勢力によりウクライナ上空で旅客便が攻撃され、300人近くの人命が奪われた。この「マレーシア航空17便撃墜事件」は、国境近くのウクライナ東部で「親ロシア派」と「反ロシア派」のすさまじい対立を招き、現在のロシアによるウクライナ侵攻へと地続きになっている。本作はこの「ウクライナ侵攻の始まり」の状況を描いている。

崩れた家に留まる夫婦

舞台は2014年のロシアとの国境近く。ウクライナ・ドネツクにある村で、ここでは親ロシア派が優勢だ。この村に住む夫婦の妻、勝気な女性イルカは妊娠中である。

ある日の明け方、夫婦が住む家に突然爆音が響き、壁に大きな穴が開いて飛び起きる。これは親ロシア派分離主義勢力の誤射だった。イルカの夫・トリクは「村を出て避難しよう」と促すが、イルカはこの家にとどまることにこだわっている。次いで航空機追撃事故が起き、壁の修繕は進まず、夫妻は穴のあいた家で生活を続けることになる。

訪れる出産の時と衝撃の展開

トリクは親ロシアではないが、あまり政治に関心がない。一方、イルカの弟・ヤリクは、激しく親ロシア派に反発する熱い性格で、姉夫婦の家に来ては、トリクのウヤムヤな態度に憤りを感じて批判し、ウクライナ語の歌を大音量でかけようとする。

夫と弟の対立、そして村で起こる不穏なイザコザのなかでも、気丈に崩れかけた家で生活を続けようとしていたイルカだったが、航空機事故で身内を亡くした人々の悲しみに触れ、心境に変化が現れる。そんなイルカに出産の時が迫るのだが、夫婦に思いがけない事態が訪れる。ラスト15分に込められた衝撃をしっかり受け止めてほしい。

作品ニュース

6/18はトークショーあり

大学教授・政治学者の廣瀬さんのトークショーが決定。世界が憂うロシアによるウクライナ侵攻、その経緯についての詳しい話を聴けそうだ。

||◤ 『#世界が引き裂かれる時』
　トークショー開催決定　◢||

📍渋谷シアター・イメージフォーラムhttps://t.co/pMhxMmrmsF
🗓 𝟔/𝟏𝟖㊐ 𝟏𝟎:𝟒𝟎 の回上映前

▼登壇ゲスト#廣瀬陽子さん
（慶応義塾大学教授/政治学者）

ぜひこの機会にご参加ください！
𝟲.𝟭𝟳㊏より全国順次公開🇺🇦 pic.twitter.com/uklsIS7csz
— 映画『世界が引き裂かれる時』6/17公開 (@sekaiga2023) 2023年6月10日

ツイッター公式アカウントで用語解説も

本作『世界が引き裂かれる時』のツイッター公式アカウント（＠sekaiga2023）で、キーワード解説が展開中。読めば、作品の理解が深まる。

||◤ 𝐊𝐞𝐲 𝐰𝐨𝐫𝐝 ◢||

◾️親ロシア派分離主義者
￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
EU加盟に乗り出す政府に反発し、ウクライナからの分離およびロシアによる合併を歓迎する勢力。主にロシアと古くから関わりの深いウクライナ南東部に多い。

𝟔.𝟏𝟕㊏『#世界が引き裂かれる時』https://t.co/Awr8LWMgkR pic.twitter.com/VsZnzJ37W1
— 映画『世界が引き裂かれる時』6/17公開 (@sekaiga2023) 2023年6月1日

オススメしたい『世界が引き裂かれる時』

現在も続くロシアのウクライナ侵攻の始まりをリアルに描く
イルカ・弟・夫、身内3人がそれぞれ明確な立場で対立
美しくも痛みが伝わってくる映像
予想できないスリリングな展開

『世界が引き裂かれる時』作品情報

【あらすじ】
2014年7月。妊娠中のイルカと夫のトリクは、ロシア国境近く、ウクライナ東部のドネツク州グラボベ村に住んでいた。ある日の明け方、親ロシア派・分離主義勢力の誤射により、家の壁に大きな穴があいてしまう。2人は壁の修繕に取り掛かろうとするが、次いで起こる航空機撃墜事故によって村に忍び寄る緊張と混乱がそれを妨げる。

友人たちから親ロシア派分離主義勢力への参加を促されているトリクと、イルカの弟で親ウクライナ派のヤリク。ある日ヤリクは、トリクの部屋で親ロシア側の証である制服を発見し、不信感を爆発させる。一方のイルカは家の修復にこだわり、ロシア側の武装勢力に占領された村からの避難を促すヤリクの説得を聞こうとしない。そんな中、出産のタイミングは刻一刻と迫り……。