金に困った芸術家志望の青年が、贋作製作の腕を買われヘッドハンティングされたのは、偽札製造のエキスパート集団。そのカリスマリーダー“画家”に翻弄されがんじがらめになっていく、予測不能なクライムアクションサスペンス。貫禄増したチョウ・ユンファが、怪しくミステリアスな男を演じきり、観客までも翻弄する。
2020年2月7日(金)新宿武蔵野館ほか全国順次公開
「ミステリー性」と「香港映画らしさ」で濃厚な観ごたえ
かつて芸術家志望だった、贋作の天才である青年レイの視点で語られる本作。チョウ・ユンファ演じる“画家”と呼ばれる、冷酷でミステリアスな男に出会ってしまったレイは、暴力を伴う犯罪に深く巻き込まれ、恐怖に襲われながら身動きが取れなくなっていく。
本作は、大胆な仕掛けを孕んだ、心奪われるミステリー。作り込まれた脚本が大きな魅力を放つ。おそらく多くの人が、観終えた直後に「もう一度観たい!」と思わされるだろう。
一方で、香港映画らしい大胆さやアクションも健在。大量に投下された火薬、繰り返される爆発、ガンアクション、山積みの札束。そして香港映画黄金期を作ってきたチョウ・ユンファが、スクリーンが濃厚に彩る。還暦を迎え、演技の怪しさにも、迫力の表情にも脂がのりきっている。
本当に作れそうな、偽札の綿密な製造工程
偽札造りの工程が興味深く描かれているのも、この作品の特徴だ。贋作の天才であるレイの腕を活かし、手作業で行われる原版製作の様子、紙質・インクを選ぶ難しさ、透かしの技巧。さまざまな技術を重ねて、見事に出来上がる偽札は、芸術の域に達しているように見える。
もちろん偽札造りを実際に行うのは、タブーだ。だからこそ大胆な発想のもと繰り返される創意工夫、目の前で展開される繊細な作業につい引き込まれてしまう。美術や印刷技術に興味がある人はもちろん、そうでなくとも、むしろ本作を機に、印刷やもの作りの技術に興味を持つかもしれない。
脚本上も、最新の印刷技術に挑んでいく偽札造りの工程に、かなり重きを置いているそうだ。
恋人、挫折、出会い…“贋作の天才”レイに降りかかるめくるめく運命
本作はアーロン・クォックとチョウ・ユンファのW主演。すでに演技派の中堅俳優として知られるアーロン・クォックだが、本作では、チョウ・ユンファ演じるカリスマに対し、青年らしさを演じきる。
人生を狂わされ、追い詰められて怯えた男レイを演じるアーロン・クォックの迫真の演技には、終始引き込まれるだろう。この作品は、主人公の青年レイが振り返った自分の人生を、共に旅するような作りになっている。
冒頭で、タイ刑務所から香港警察に身柄を引き渡されたレイは「“画家”がやってくる」と怯え、彼に襲われることを妄想する。しかしやってきたのは“画家”ではなく、今や国宝級の女性画家ユン。復讐を口にする彼女は、かつてレイの恋人だったという。
そして1995年のレイとユン、恋人時代の慎ましい生活が回想される。芸術家として頭角を表し始めたユンに対し、挫折して違法な贋作に手を染めていくレイ。そして“画家”との出会いのエピソードへとつながっていく……。
オススメしたい『プロジェクト・グーテンベルク 贋札王』
- 予測不能なクライムサスペンス
- 香港映画ならでは、ド派手なアクション
- 緻密でリアルな偽札造りの工程
- 香港スターW主演による緊張感ある演技
スクリーンに釘付けにされる要素がいっぱいの本作。ミステリーファン、アクション映画ファン、香港映画ファンなど、男女問わず幅広い層におすすめしたい。
『プロジェクト・グーテンベルク 贋札王』作品情報
【あらすじ】
1995年、カナダ・バンクーバー。苦しい生活を送る恋人同士レイとユンは、共にに励まし合い、画家として名声を得ようとしていた。才能を認められ、個展を開くことになったユンに対し、生計のため有名絵画の贋作を手掛けるまでに堕ちたレイ。そんな彼の前に、“画家”が現れる。親子三代にわたり、偽札製造を家業にしながら逮捕者はないという。「何事も極めれば芸術。心をこめれば、偽物は本物に勝る」と語る彼のカリスマ性に惹かれ、レイは彼が率いるチームへの参加を決意して……。
監督・脚本:フェリックス・チョン(『インファナル・アフェア』シリーズ脚本)
出演:チョウ・ユンファ(『男たちの挽歌』『アンナと王様』『グリーン・デスティニー』)、アーロン・クォック(『風雲 ストームライダーズ』『アンナ・マデリーナ』『コールド・ウォー/二つの正義』)、チャン・ジンチュー(『オーバー・エベレスト 陰謀の氷壁』) ほか
撮影:ジェイソン・クワン
編集:パン・チンヘイ
アクション監督:ニッキー・リー
音楽:ダイ・タイ
原題:無雙
英題:Project Gutenberg
製作:Bona Film Group、Alibaba、Emperor Motion Pictures ほか
配給:東映ビデオ
<130分/カラー/広東語、北京語/2018年/香港、中国/PG-12>
2020年2月7日(金)新宿武蔵野館ほか全国順次公開
© 2018 Bona Entertainment Company Limited
〔AD〕
(本ページの情報は2020年1月時点のものです。最新の配信状況は U-NEXT サイトにてご確認ください。)