東京・ミニシアター生活

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【1/17公開】『東京パラリンピック 愛と栄光の祭典』1964年の東京パラリンピックを記録した貴重なドキュメンタリー

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1964年の東京パラリンピックの様子を記録した、幻のドキュメンタリー映画『東京パラリンピック 愛と栄光の祭典』が、1965年の公開から55年の時を経て発掘され、オリンピック・パラリンピックイヤーである2020年、デジタル修復して再び公開される。単純な記録映画ではなく、故人の名優・宇野重吉がナレーションを務め、美しい音楽に彩られた、芸術性と完成度の高い、観応えある作品となっている。

2020年1月17日(金)よりユナイテッド・シネマ豊洲にて公開

56年前のパラリンピアンたち

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ご存知の通り、今年2020年はオリンピックに引き続き、もう1つのオリンピックとも言えるパラリンピック、障がいをもつアスリートが驚くべき活躍を観せる競技大会が、日本で開催される。今年の東京開催では、多くの日本人にとって、パラスポーツがグッと身近に感じられるいいきっかけになるだろう。

オリンピック同様、4年に1度開催され続けているパラリンピック。その原点とも言える、世界で初めて「パラリンピック」という愛称が使われた、56年前の「東京パラリンピック」を記録したのが本作だ。

大会当日の模様だけではなく、パラアスリートたちに行ったインタビューや取材により、その暮らしぶりやスポーツに取り組む様子もわかる。正直驚くことばかりだろう。

それは「現在のパラアスリートたちと、いかに立場や考え方が違うのか」ということと、一方では逆に「56年も経つのに、いまだに変わっていないことがかなりある」という、両面への気づきが端々に見つかるからである。

ちなみに、現在ならば自主的に規制されがちな表現がそのまま活かされ、時折登場することにもハッとさせられる。

パラリンピックの父、前天皇・前皇后両陛下の登場も

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 2019年はNHK大河ドラマで、第58作『いだてん〜東京オリムピック噺〜』が1年間放送された。1912年のストックホルムオリンピックから、1964年東京オリンピックまで52年間を中心に描かれ、視聴率は低かったと言われる一方で熱烈なファンが多かったことでも話題になったドラマだ。この番組中で流された実際のオリンピックの映像には、オリンピックに向けられた、当時の人々の熱をリアルに感じることができ、ドラマに彩りを添えていた。

本作ではその直後、引き続きパラリンピックという大掛かりな国際競技大会開催に、歓喜に溢れる1964年の日本の様子を、丸々1時間あまりたっぷりと楽しむことができる。まるでタイムスリップしたかのようだ。しかも絵葉書を切り取ったように美しい映像ばかりである。デジタル修復された映像も音声も、ノイズ1つ気にならないようきれいに仕上げられ、レトロファンに歓迎されるような当時のファッションや街の風景も鮮やかに楽しめる。

大会を見守る前天皇、前皇后両陛下の姿、そして日本人のみならず、選手村での外国人選手の陽気な振る舞いや、東京を訪れた外国人客の様子、さらに「失われたものを数えるな、残されたものを最大限に生かせ」という(パラスポーツ漫画等にもよく登場する)名言を残した、パラリンピックの父と呼ばれるルートヴィヒ・グットマン博士の姿までも映っている。まさに他では観られない映像がたっぷり収録されている。

映画人による、芸術性の高いドキュメンタリー

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音楽もつけられ、解説は名優の宇野重吉が務め、本作は非常に丁寧に作られている。劇映画のように計算し尽くされたカメラワークで、生き生きとした選手たちの表情を捉え、当時の映画人たちの技術を集約されており、日本映画史に触れるような驚きまで詰まっている。

おそらくこの作品は、仕事として依頼された責任感によるものではなく「東京パラリンピック」という、新しくも、今後歴史的なものとなるであろう一大イベントを「しっかり記録して残そう!」という人々の情熱に支えられたものなのだろう。

当時の映画関係者たちの気概を受け取るような熱意に、磨き上げ洗練された美しさ、その両方を味わうことができる。

オススメしたい『東京パラリンピック 愛と栄光の祭典』

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  • 1964年「東京パラリンピック」にかけた様々な立場の人たちの情熱
  • 当時の日本人・外国人の、生き生きした表情
  • 懐かしい風景、レトロなファッション、社会の構造で時代を感じる
  • 著名人も多数登場する貴重な場面をノイズなしで楽しめる

今このタイミングで観ておくことで、今年これから行われる2020東京パラリンピックをも、より楽しむことができるだろう。

『東京パラリンピック 愛と栄光の祭典』作品情報

【内容】

今では誰もが知る名称となった“パラリンピック”は、「パラブレジア」(下半身麻痺)と「オリンピック」を組み合わせた愛称で、1964年の東京パラリンピックで初めて用いられ、この大会は、下半身麻痺だけでなく身体障がい者全体の国際スポーツ競技会を周知する役目を担った大会でもあった。

本作は、1964年の東京パラリンピックの様子を捉えただけでなく、参加した日本人選手たちの視点や、当時の彼ら・彼女らを取り巻く社会環境や立場を浮き彫りする。1964年の東京パラリンピックに、それまで人目を忍んで生活せざるをえなかった選手たちが社会的脚光をあびるとともに、大会を通じて前向きになっていく姿を捉えている。

監督・脚本・撮影:渡辺公夫
解説:宇野重吉
音楽:團 伊玖磨
製作:〈日芸綜合プロ〉上原 明
配給:KADOKAWA
<1965年/日本/63分/白黒/モノラル>
2020年1月17日(金)よりユナイテッド・シネマ豊洲にて公開

cinemakadokawa.jp

 

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