『善き人のためのソナタ』でアカデミー賞®外国語映画賞を受賞したフロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク監督の最新作。現代美術界の巨匠ゲルハルト・リヒターの半生をモデルに、ドイツ激動の時代に生きた、若き芸術家の数奇な運命をドラマティックに描く。ドイツの“歴史の闇”と“芸術の光”に迫ったサスペンスストーリー。第91回アカデミー賞®外国語映画賞ノミネート作品。
2020年10月2日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
ドイツの深く暗い歴史に存在する“美しい真実”とは
本作は1937年ナチ政権下のドイツ、主人公クルトの少年時代から始まる。当時は政策だけでなく「退廃芸術」と名付けられた作品の弾圧など、芸術までもがナチスの政権下にあった。やがて1945年ドイツが敗戦を迎え、状況は大きく変化。ドイツは東西に分断され、ベルリンの壁が築かれる直前に、舞台は東から西へと移る。本作は、まさに激動のドイツ史をなぞっていく形だ。
主人公クルトには子ども時代になついた芸術家肌の美しい叔母・エリザベトがいた。クルトにとって、彼女は芸術の原体験とも言える存在だ。しかし精神のバランスを崩したことにより、エリザベトは若くして殺害される。
そんな彼女からクルト少年が受け継いだのは「真実は全て美しい」という芸術的信条だ。このドイツ激動の時代において「真実」とはどんなものだったのか。残酷かつ、魂に刻むべき「真実」がどれほど多く存在したのだろう。
繊細でエキセントリックな叔母と、ナチ高官の冷酷な医師


成長したクルトは、東ドイツの美術学校で出会ったエリーに、亡き叔母・エリザベトの面影を見て、すぐに恋に落ちる。
ところが、エリーの父親ゼーバントは婦人科の医師であり、戦時中にはナチ高官だった男。ナチ政権で安楽死政策が強化された時代に、多くの精神病患者や障害者を死に追いやった過去がある。恐ろしい偶然で、ゼーバントは、1940年代にクルトの叔母、エリザベトと最悪の形で出会っていた。
しかし戦後ゼーバントが口を閉ざしたことにより、誰もがその関係に気づかないまま、クルトとエリーは結婚し、ゼーバントはクルトの義父となる(本作でもっとも“数奇な運命”に導かれるのは、義父であるゼ-バントかもしれない)。
精神のバランスをくずしていく若い叔母・エリザベトを演じるザスキア・ローゼンダール(『さよなら、アドルフ』)の美しさが、ナチスドイツの政策をより残酷に見せる。
高名な巨匠がモデルでも、真実は秘密というミステリー
芸術家を志すクルトは、ベルリンの壁が築かれる直前に、妻エリーとともに東から西へと渡る。社会主義リアリズムが台頭していた東ドイツ、そして前衛的な芸術が全盛である西ドイツ。
東西の大きな文化の隔たりに苦悩し、スランプに陥るクルト。芸術的価値観をひっくり返し、新境地に至らねばという、苦悩とプレッシャーの日々を過ごす。だが、そんな彼のなかに「真実は全て美しい」という叔母の信条は、まだ息づいていた。叔母の言葉に導かれるようにある作品を完成させる……。
本作の主人公、クルトのモデルは、現役の芸術家ゲルハルト・リヒター。作品に数十億もの値段がつくという、若者にも人気の高い現役のドイツの巨匠である。ドナースマルク監督がリヒターの著書や伝記に惚れ込み、今回の映画化となった。
本作の為にリヒターへの取材が重ねられたが、映画化に当たっては「人物の名前は変え」「何が真実であり何が真実でないかは明らかにしない」という契約が結ばれたという。そんなエピソードが、さらに本作をミステリアスに感じさせるようだ。
作品ニュース
その1 著名人からのコメントが続々
著名人から本作をオススメするコメントが多数寄せられている。配給のキノフィルムズtwitter公式アカウント、 作品公式webにて公開。
【#ある画家の数奇な運命】
— キノフィルムズ (@kinofilmsJP) 2020年9月26日
本作の上映時間の長さに及び腰になっている方へ…お気持ちとってもわかります、長いですよね。
でも、もしかしたら
<人生の中のたった3時間>
と思うくらいにかけがえのない出会いになるかも⁉
そうなったらいいなと願いながら #吉岡里帆 さんからのコメントをご紹介💁 pic.twitter.com/zs1BJndVfS
【#ある画家の数奇な運命】
— キノフィルムズ (@kinofilmsJP) 2020年9月24日
🖼主人公・クルトと同じデュッセルドルフ芸術アカデミーで学んだ 奈良美智 @michinara3 さんからのコメントをご紹介🧑🎨
そんな奈良さんには劇場販売パンフレットにもご寄稿いただいているんですが、こちらも必読です📖#ゲルハルト・リヒター#10月2日公開 pic.twitter.com/JM8ngm0nYS
その2 主人公のモデル、ゲルハルト・リヒターの作品
本作の主人公、クルトのモデルであるゲルハルト・リヒターの作品が、公式webで公開されている。本作にドラマチックに登場する写実的なフォト・ペインティングの技法で描かれた作品も、多数観られる。
ゲルハルト・リヒター(GerhardRichter)公式web
『ある画家の数奇な運命』みどころ
- 第二次戦時下〜東西分断、濃厚なドイツ史が背景
- 歴史・芸術・恋愛・人間ドラマが詰まった展開
- 個性的かつ実力派、美形のキャストが集結
- 作品全体が壮大なミステリーとなる見事な構成
ミステリーサスペンスの展開でドイツ史を体験できる。ナチ政権、優生思想問題といった社会的テーマや、芸術、愛、人間ドラマの要素が散りばめられ、濃厚で時を忘れる189分。
『ある画家の数奇な運命』作品情報
【あらすじ】
ナチ政権下のドイツ。少年クルトは叔母の影響から、芸術に親しむ日々を送っていた。ところが、精神のバランスを崩した叔母は強制入院の果て、安楽死政策によって命を奪われる。
終戦後、クルトは東ドイツの美術学校に進学し、そこで出会ったエリーと恋に落ちる。元ナチ高官の彼女の父親こそが叔母を死へと追い込んだ張本人なのだが、誰もその残酷な運命に気付かぬまま二人は結婚する。やがて、東のアート界に疑問を抱いたクルトは、ベルリンの壁が築かれる直前に、エリーと西ドイツへと逃亡し、創作に没頭する。美術学校の教授から作品を全否定され、もがき苦しみながらも、魂に刻む叔母の言葉「真実はすべて美しい」を信じ続けるクルトだったが……。
監督・脚本・製作:フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク(『善き人のためのソナタ』)
出演:トム・シリング(『コーヒーをめぐる冒険』『ピエロがお前を嘲笑う』)、セバスチャン・コッホ( 『善き人のためのソナタ』『リリーのすべて』『ブリッジ・オブ・スパイ』)、 パウラ・ベーア(『婚約者の友人』)、オリヴァー・マスッチ( 『帰ってきたヒトラー』 )、ザスキア・ローゼンダール(『さよなら、アドルフ』) ほか
原題:WERK OHNE AUTOR 英題:NEVER LOOK AWAY
配給:キノフィルムズ・木下グループ
<2018年/ドイツ/ドイツ語/189分/カラー/アメリカンビスタ/5.1ch//R-15>
字幕翻訳:吉川美奈子
2020年10月2日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー




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