東京・ミニシアター生活

主に都内のミニシアターで上映される新作映画の紹介をしています。

〔AD〕動画サイトランキング

【4/29公開】『私、オルガ・ヘプナロヴァー』1973年チェコ最後の女性死刑囚、その孤独な半生

1973年、トラックで群衆に突っ込み、多くの死傷者を出した実在の人物、チェコ最後の女性死刑囚オルガ・ヘプナロヴァーの半生を描く。ポーランド出身のミハリナ・オルシャニスカ(『ゆれる人魚』『マチルダ 禁断の恋』)主演で2016年に制作された本作が、日本で7年越しにファン待望の公開となる。殺人犯となる若い女オルガが、精神を病みながら、家族、集団、恋人に踏みにじられ、心を殺され、孤独を募らせていく経緯を的確に綴る。監督・脚本はチェコ出身のトマーシュ・ヴァインレプとペトル・カズダ。

2023年4月29日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開

家族、集団、恋人…連鎖する孤独

1973年、22歳の女、オルガ・ヘプナロヴァーは意図的に路面電車を待つ群衆に、仕事道具としてきたトラックで突っ込み、8人を死亡させ、12人を負傷させる。事件後、逮捕されても、反省する態度を見せることは決してなかった。

裕福でありながら親から冷たく突き放され、スパルタかつ半ばネグレクト状態の中で、鬱状態に陥った少女時代。自殺を図るも失敗し、精神病棟に入院することになるオルガは、そこでも入院患者たちから辛い目にあわされることに。

それでも精神病院は「知らなかった世間を知る」きっかけにはなったのだろう、さまざまな人々の関係を見聞きしたオルガは、退院後、親元を嫌い、自ら生計を立てて自立しようと行動し職を得る。

 

新たな生活で出会ったイトカとの恋に落ち、同性愛を通し自分を解き放つも、オルガはあっさり捨てられてしまう。時代的にも世間の理解を得られるわけもなく、彼女にとって、レズビアンという目覚めが、また1つ孤独を募らせる条件が増えたという事実のみが残された。彼女は「性的障害者」と自らを貶めるような表現を使うようになっていく。

精神を病んだサイコパスに宿る才能

行動派ではあるが、他者と言葉を交わすことが少ないオルガ。書き綴った日記として彼女の心の内が語られる。その内容はひどく身勝手な思考が含まれつつも、文学的でもあり、本作を暗く盛り上げる。

この作品は大量殺人を行なったオルガを美化するものではないが、彼女が孤独に追いやられていく経緯が、観る者の身にまで染みるように綴られていく。

文才があり、運転手という当時の女性には狭き門である職業を得て、孤独ながらなんとか生きようとしていたオルガ。内なる怒りを蓄積させず、大量殺人へと突き進んでしまわなければ、何らかの才能を開花させたかもしれない。しかし希望を与えてくれるような出会いは、彼女の人生には訪れなかったことが、寂しく胸に残る。

オルガと一体化したポーランド女優ミハリナ・オルシャニスカ

本作の魅力は、何と言ってもオルガを演じるミハリナ・オルシャニスカの説得力と美しさにあるだろう。すでに彼女の出演作は何本か日本で公開されてきているが、いずれの作品も、プライドが高く、エキセントリックで妖艶な人物を演じている。しかしイコール本人の人物像ではない。

「東京★ミニシアター生活」では、2018年12月『マチルダ 禁断の恋』公開時にミハリナ・オルシャニスカにインタビューをしている。その際、まだ未見の本作がチェコ語の作品であったので、チェコ語ができるのかと尋ねたら「音として覚えました。私は音楽をやってきたので、耳がいいのです」とはにかんだように答えてくれたのが印象的だった。

www.minithea.tokyo

▲素顔のミハリナさんは、はにかみ屋で柔和で女性でした!ギャップ萌え!

作品ニュース

初日入場者プレゼントあり!

シアター・イメージフォーラム初日に、美しいオルガ表情を一瞬を捉えたポストカードプレゼント。2種類のデザインのどちらも素敵です。

オススメしたい『私、オルガ・ヘプナロヴァー』

  • 実在の「チェコ最後の女性死刑囚」を描く
  • オルガが孤独を募らせた経緯をムダなく的確に辿る
  • 美しいミハリナ・オルシャニスカの存在感

『私、オルガ・ヘプナロヴァー』作品情報

 【あらすじ】

つねに不機嫌で自分の殻に閉じこもり、本を読み日記をつけているオルガ。13歳のときから深い鬱病に悩まされていた彼女は、精神安定剤を過剰摂取し、自殺を図るが未遂に終わり、精神科の病院に入る。そこで初めて同性同士のカップリングや未成年者の喫煙に直面。病院でも異質な存在として見られたリンチを受けたオルガは、退院後は家族から距離を置くようになる。

煩わしい親元を離れたオルガは、目立たないように頭を下げ、タバコを吸いながら、ガレージでのトラック運転手として働く。職場で出会った美しいイトカとの蜜月の日々は長く続かず、捨てられたオルガは、孤独のどん底に突き落とされ、以前にも増して自暴自棄となる。やがて、オルガの内なる怒りが時間をかけて蓄積されて……。

監督・脚本: トマーシュ・ヴァインレプ、ペトル・カズダ
出演者: ミハリナ・オルシャニスカ(ミハリナ・オルシャンスカ)、
マリカ・ソポスカー、クラーラ・メリーシコヴァー、マルチン・ペフラート、
マルタ・マズレク ほか

原題:Já, Olga Hepnarová

提供:クレプスキュール フィルム、シネマ・サクセション
配給:クレプスキュール フィルム

<2016年/チェコ・ポーランド・スロバキア・フランス/105分/B&W/5.1ch/1:1.85/DCP>
日本語字幕:上條葉月

字幕監修:ペトル・ホリー

2023年4月29日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開

公式web http://olga.crepuscule-films.com/

〔AD〕

(最新の配信状況は U-NEXT サイトにてご確認ください。)

〔AD〕

(本ページの情報は2020年6月のものです。最新の配信状況は U-NEXT サイトにてご確認ください。)

<