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【1/1公開】『Swallow/スワロウ』異食症にとらわれた孤独な女性がたどり着く先、そして彼女を待ち受けるものとは

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経済的に恵まれたハンサムな夫と結婚し、誰もが羨むような暮らしをしている女性が、その実孤独に悩み、ストレスから異食症に陥っていく。小さな丸いガラスのビー玉を口にして飲み下し、初めて甘美な快楽を覚えてから、徐々に“より危険なものを飲み込みたい”という欲望に取り憑かれてしまう。美しくも恐ろしいスリラー、だが感動的ですらある結末へと続く逸品。

2121年1月1日(金)新宿バルト9ほか 全国ロードショー

異食症をテーマにした稀有なストーリー

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タイトルになっている「swallow」は、名詞だと鳥の「ツバメ」だが、動詞だと「飲み込む」という意味。本作の主婦であるヒロイン・ハンターが陥るのは、食べ物ではないものを口に入れ、飲み込んでしまう「異食症」。実際にある症候だ。

異食症は、ストレスや強迫観念が原因だと言われていて、子どもや妊娠中の女性がかかりやすい傾向があるという。食べてしまうものの例としては、土・紙・粘土・毛・氷・木炭・チョークなどが挙げられている。時折、ハンターは氷をガリガリと食べたり、土をむさぼったりもしている。

監督のカーロ・ミラベラ=デイヴィスは、自身の祖母が強迫性障害により手洗いを繰り返すようになったというエピソードから本作を撮ろうと思い立ったという。

 

孤独を深める主演ヘイリー・ベネットの鬼気迫る演技

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ヒロインのハンターは、日常の些細なことで、少しずつ傷ついていく。食事の席で、夫から求められたエピソードを話している最中なのに、突然話題を変えられたり、義理の父や母から、いかにもないがしろさにしているような態度を見せられたり……。心細そうなハンターは、見るからに「孤独なお嫁さん」だ。「いつまでたってもよそ者」のような疎外感と居心地の悪さが、ヒシヒシと伝わってくる。

実際、女性蔑視はそこここに転がっているし、パートナーが抱えた心の闇や隠れDVの本質を、やんわり感じている人もいるだろう。「生きづらさ」や身の回りで暗いものを感じている人には共感できるシーンが多い。

いずれ精神的にまいってしまうのでは、という状況で、ハンターは初めてビー玉を口に入れ、恐る恐る「飲みこむ」ことで充足感を得る。これによって精神のバランスを取り戻し、以前以上に生き生きした表情を見せ始める。

そして味をしめてしまったかのように、ハンターは、傷つくたびにより危険なものをチョイスするようになっていく。そして、喜ばしいと感じるはずの妊娠が、さらに彼女を追い詰めていく。

ハンターの状態が進行すると、多くの人にとって理解しがたい状況担っていくのだが、脚本のうまさ、そしてヘイリー・ベネットの表情や声色、その鬼気迫る演技に説得され、他人事ではいられず、ハンターの目線まで引きずりこまれてしまうだろう。


意外な展開、そしてカタルシス

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本作の半ばまでは、ハンターがより危険なものを飲み込もうとエスカレートしていく姿が描かれる。やがて、ハンターの異食症は、夫や義父母の知るところとなって、そのことでハンターはさらに傷つく方向へとこじれてしまう。

そして、ここ半ばから思わぬ方向へ物語が転がり始める。本作は、異食症を描くことで完結する作品ではなく、あっと驚く展開へと広がっていく。ハンターが抱えていた秘密、孤独の深さ。そして深まる闇から、感動的なクライマックスを迎える……。

半ばから始まるスリリングな展開に、ご期待ください。

作品ニュース

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本作は数々の賞を受賞している。詳細は以下の通り。

★トライベッカ映画祭 最優秀女優賞
★ファンタジア映画祭 監督賞・脚本賞
★ヌーシャテル国際ファンタスティック映画祭 国際批評家賞・最優秀演技賞
★ブルックリン・ホラー映画祭 観客賞・主演女優賞・脚本賞・美術賞
★ウッドストック映画祭 最優秀女優賞
★デンバー映画祭 アメリカン・インディペンデント・アワード 作品賞
★プロヴィンスタウン国際映画祭 ジョン・シュレシンジャー賞
★ドーヴィル・アメリカン映画祭 特別賞
★コーク映画祭 スピリット・オブ・フェスティバル賞 

『Swallow/スワロウ』観どころ

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  • 「異食症」をテーマにした稀有な映画
  • ヒロインを演じるヘイリー・ベネットの迫力と繊細さ
  • 驚きのストーリー展開と脚本の上手さ
  • 感動的なクライマックス

『Swallow/スワロウ』作品情報

【あらすじ】
完璧な夫、美しいニューヨーク郊外の邸宅、ハンターは誰もが羨む暮らしを手に入れたが、孤独で息苦しい日々を過ごしていた。そんな中、ハンターの妊娠が発覚。待望の第一子を授かり歓喜の声をあげる夫と義父母であったが、ハンターの孤独は深まっていくばかり。

ある日、ハンターはガラス玉を呑み込みたいという衝動にかられ、導かれるままガラス玉を口に入れ、呑み下すと、痛みとともに得も言われぬ充足感と快楽を得る。異物を“呑み込む”ことで多幸感に満ちた生活を手に入れたハンターは、次第に「より危険なものを口にしたい」という欲望に取り憑かれて……。

監督・脚本:カーロ・ミラベラ=デイヴィス
出演:ヘイリー・ベネット、オースティン・ストウェル、エリザベス・マーヴェル、デヴィッド・ラッシュ、デニス・オヘア ほか

音楽:ネイサン・ハルパーン 撮影:ケイトリン・アリスメンディ
編集:ジョー・マーフィ

原題:SWALLOW
配給:クロックワークス
<2019年/アメリカ・フランス/シネマスコープ/95分/英語/R15+>
字幕翻訳:平井かおり
2121年1月1日(金)新宿バルト9ほか 全国ロードショー

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