妻を殺され、無実の罪により投獄された男の復讐劇。『シン・ゴジラ』の助監督を務めた大庭功睦監督の自主制作による作品だ。フランスの画家オディロン・ルドンによる、単眼の巨人を描いた絵画『キュクロプス』にモチーフを得ているという。主演には、英国で演技を学んだサラブレット俳優・池内万作を迎え、ハードボイルドの味わいたっぷりに仕上がった。「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2018」にて2冠受賞、以降ドイツ、オランダなど世界の映画祭で上映されている話題作!
2019年5月3日(金)テアトル新宿ほか全国順次公開
骨太な復讐劇は、ノワール映画の味わい
本作は主人公は、妻を殺害されたうえ罪を着せられ、14年間も服役してた男・篠原。心の拠り所を失い「生きる原動力は復讐」といった孤独な男だ。池内万作演じる篠原は、登場から、他者に反応を読ませず、心を覗かせない頑なな無表情を通し、鬱々とした重みを感じさせる。
余分な生活感をフレームに入れない、温かみを排除した無機質な背景、寒々とした埠頭の風景により、主人公・篠原の孤独が際立つ。フィルム・ノワールファンにも、馴染みある感触が得られるだろう。
斉藤悠、杉山ひこひこら、存在感を放つ俳優たち
本作は、登場する俳優たちにも注目したい作品。テレビドラマやCMでも活躍中の俳優・佐藤貢三をはじめ、大庭監督が惚れ込んだという顔ぶれが揃った。
拳銃も扱える情報屋・西を演じているのは、斉藤悠。今回尖ったキャラクターを演じているせいか若手風にも見えるが、モデルから映像・舞台俳優と、キャリアを積み幅広く活躍している俳優で、斉藤洋介の実子でもあるという。
非情なヤクザの若頭を演じているのは、杉山ひこひこ。杉山は、富永昌敬監督映画の常連キャストでありながら、Eテレの人気ミニ番組で歌を担当するという異色な俳優だが、その杉山を、今回は異色のキャスティング。体格の大きな池内を、小柄な杉山が痛めつけるバイオレンスシーンはかなり不気味だ。
また、ミステリアスな表情を浮かべる紅一点の女優・あこは、本作で2役を演じ、ハードボイルド作品に欠かせない「美しくも薄幸の女」を体現している。
最後まで目を離せない、加速するストーリー
雰囲気たっぷりに、ハードボイルドらしいストーリーで突き進んでいくと思いきや、半ばから展開は一気にミステリー要素が加速していく。幻想であった妻の姿が、実体として現れる、瓜二つの女性が登場するあたりだろうか。
ルドンの絵画『キュクロプス』は、劇中にも登場する。ルドンの描いたのは、恋い焦がれる精霊の娘を、岩陰からそっと見守っている一つ目の巨人。シュールながら哀しい優しさが伴う油彩画だ。
謎の女性・ハルの登場により心乱された篠原の変化、そして明らかになっていく真実。自主制作で本作を撮りきった大庭監督の、熱のこもった勢いあるストーリーに振り落とされぬよう、しっかりと結末まで見届けてほしい。
作品ニュース
お得な前売り券発売中!
現在、テアトル新宿などの窓口で、前売り券を1,200円で発売中。
チラシの解禁と前後してしまいましたが、テアトル新宿の窓口に前売券が並びました。前売券は1,200円と、通常よりお求めやすい価格になっております。鑑賞予定の方は是非、お得な前売券のお買い求めをどうぞ。 pic.twitter.com/3kvAQodvtM
— 映画『キュクロプス』5/3公開@テアトル新宿 (@cyclops0503) March 23, 2019
館山市で行われた撮影
海の近く、千葉県・館山市で主要なシーンを撮影している本作。『2001年宇宙の旅』モノリスのイメージに合っている、という理由でチョイスされたロケ現場の1つは、独特な雰囲気イタリアンレストラン「オステリアベッカフィーコ」。
FBF11『2001年 宇宙の旅』
— 映画『キュクロプス』5/3公開@テアトル新宿 (@cyclops0503) April 23, 2019
『キュクロプス』には「ガラテア」という名前のバーが登場します。その外観がビジュアルとして重要でしたが、この映画に登場するモノリスのような佇まいを求めていました。ロケーションは、館山市にある「ベッカフィーコ」というイタリアンレストラン。パスタ美味いです。 pic.twitter.com/LacpIScJza
オススメしたい『キュクロプス』
- 近年の邦画に久しいフィルムノワールの味わい
- 監督が惚れ込んだフレッシュなキャスト
- 後半には、展開の読めないミステリー要素が
- 自主制作による強い作家性
幻想的な名画をモチーフにするという点も含め、監督の作家性を強く反映している。また、出演しているのも、商業映画やテレビドラマなどで日々活躍している俳優陣ではあるが、意外なタイプのキャスティングを含め「どこかで観た」「見飽きた」という印象が全くない、オリジナリティを感じる作品だ。
『キュクロプス』作品情報
【あらすじ】
妻とその愛人を殺害した罪により、14年間服役していた篠原(池内万作)は、妻を殺し自分に罪を着せた真犯人への復讐のため、事件の起きた町に戻ってきた。刑事・松尾(佐藤貢三)と情報屋・西(斉藤悠)の協力の元、真犯人がヤクザの若頭・財前(杉山ひこひこ)であることを知る。ある日篠原は、たまたま立ち寄ったバーで亡き妻にそっくりな謎の女性(あこ)に出会い、それ以降、事態は思わぬ方向に転がり始め…。
監督・脚本・製作:大庭功睦
出演:池内万作(『寄生獣』)、斉藤悠(『凶悪』)、佐藤貢三(『ルームロンダリング』)、あこ(『あゝ荒野』)、杉山ひこひこ(『素敵なダイナマイトスキャンダル』)、島津健太郎、山中良弘、中野剛、新庄耕 ほか
プロデュース:石塚紘太
撮影:川野由加里 照明:中村晋平 美術:矢野浩加
録音:加来昭彦 衣裳:白石敦子 ヘアメイク:金森麻里 アクション指導:江澤大樹
編集:松本健作 音響効果:大河原 将・楳内日呂睦
VFX:田中貴志 制作部:澤井克一、佐藤大輔 助監督:桜井智弘
音楽:永島友美子
配給・宣伝:アルミード
<2018/日本/108分/カラー/シネマスコープ/ドルビーデジタル5.1ch>
2019年5月3日(金)テアトル新宿ほか全国順次公開
©Norichika OBA
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(本ページの情報は2019年4月時点のものです。最新の配信状況は U-NEXT サイトにてご確認ください。)