【9/15公開】『キリング・オブ・ケネス・チェンバレン』人種差別、PTSD、職場ストレス…あらゆる負の要素が絡み合った、死へのカウントダウン

医療機器の誤作動がきっかけで、無実の黒人が白人警官に殺害された事件をリアルにみせる、ノンフィクション・サスペンス。殺害までの90分間を実際の時間経過に近い「リアルタイム進行」で描く。製作総指揮は、俳優モーガン・フリーマン。主演のフランキー・フェイソンは、本作でゴッサム賞で最優秀主演男優賞を受賞、各国の映画祭で圧倒的な存在感を残した話題作。

2023年9月15日（金）ヒューマントラストシネマ渋谷ほか、全国順次ロードショー！

実際に起きた恐るべき事件

本作は、実際の事件をリアルに再現しているノンフィクション・サスペンス。黒人男性の身の上に重なったアクシデントが、通報で駆けつけた警官によって増長され、人命が失われる事態へと発展してしまう。その間わずか90分、という短さなのも恐ろしい。

製作総指揮を担ったモーガン・フリーマンは「この映画は、法執行官がいかに間違ったアプローチをしているかを真にドラマチックに描いたもの。そして、この事実を広めることが私たちにできる最善の方法だと思う」と語っている。

人種差別、PTSD、職場の人間関係…悪条件が重なり、思わぬ方向へ

悲劇的な結果を招いた事件だが、警官たちも初めはあくまでまっとうな仕事をしようとケネスの元を訪ねている。しかし、精神疾患があるケネスは、早朝とあって不調、さらにトラウマがありドアを開けようとしない。ケネスの様子に「薬でも隠しているのでは」と不信感を抱く警官たち。

ドアの内から「帰れ」と訴えるケネスと、ドアの外から「開けろ」警官たち。お互いのフラストレーションがどんどん高まっていく。

そんな彼らの状況を通し、社会問題も浮き彫りになる。戦争による後遺症、未だまかり通る黒人差別、パワハラを生む職場の上下関係……。こうした背景を明確にし、この悲劇的事件がなぜ起きたのかを緻密に分析している脚本も秀逸だ。

一縷の希望が見えるような…故に上がる心拍数

ケネスと警官たちは、ドアを挟み、膠着状態のようではあるが、状況は揺れる。複数いる警官の間でもどう行動すべきか意見は割れ、ケネスに寄り添う傾向の警官もいる。しかし、良い方向に転じるかと思えば、否、警官同士で口論となり、興奮状態に……。

この対立を見守っている人々もいる。ケネスの姪やアパートの住人、そして最初から最後まで電話でケネスとやりとりを続けたライフガードの女性、応援にやってきた黒人の警官もいて、周りの人々によって解決の糸口のような希望が見えなくもない（実際、解決できたかもしれない）。それだけに事態は揺れて、観客も気が気ではなくハラハラして見守ることになる。そして「なぜ人命が奪われるに至ったか」を目撃する。

予告編の「あなたはこの緊張に耐えられるか」というフレーズに偽りのない、一瞬も気が抜けない濃厚な作品に仕上がっている。

オススメしたい『キリング・オブ・ケネス・チェンバレン』

ドアの内側と外側、双方の状況を繊細に伝える演出
社会的背景、社会問題も浮き彫りにする脚本
主演のフランキー・フェイソンらによるリアルな人物像
エンディングでは実際の音声も聞ける

『キリング・オブ・ケネス・チェンバレン』作品情報

【あらすじ】
2011年11月19日の早朝、午前5時22分。双極性障害（躁うつ病）を患った元海兵隊員の黒人ケネス・チェンバレンは、気づかぬうちに医療用通報装置を誤作動させてしまう。まもなく白人の警官たちが到着。アパートのドア越しに叩き起こされたケネスは緊急事態ではなく間違いだと伝えるが、警官は聞き入れない。

家のドアを開けるのを拒むケネスを不信感に思った警官たちは差別的な言葉と態度で攻撃し、ケネスは次第に精神的に追い詰められていく。駆けつけたケネスの姪やアパートの住人の抗議にも関わらず、警官たちは到着から約90分後の午前7時、ドアを破壊しケネスの部屋に突入し……。

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