東京・ミニシアター生活

主に都内のミニシアターで上映される新作映画の紹介をしています。

〔AD〕動画サイトランキング

【6/19公開】『サンダーロード』「人生なんとなくうまくいかない人」に捧げる、愛と哀愁のオフビートコメディ

f:id:kappa7haruhi:20200611221944j:plain

アメリカ映画界の新鋭、ジム・カミングスが、監督・脚本・編集・音楽・主演と5役を務め、2016年サンダンス映画祭で短編グランプリとなった12分の作品『Thunder Road』を長編化。何をやっても空回りばかりの冴えない警官ジムと、幼いおてんば盛りの娘クリスタルが織りなす、笑いと涙溢れるオフビートのハートフルコメディ。

2020年6月19日(金)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開

笑いに漂う絶妙な哀愁のバランス

f:id:kappa7haruhi:20200618020428j:plain

若干マザコンの傾向がありそうな男・ジムの母が亡くなってしまった。なのに、別居中の妻にはすでに恋人がいて何やら楽しげ。幼い娘までも奪われてしまいそう。そんな中仕事も失敗続きで、つい奇行に走ってしまい今にも精神崩壊しそうなジム。

本人にとって悲劇である状況こそ、外から見て入ればコメディに映るのはお約束。そんな調子でニヤニヤ見ていると、どこで線引きしたものか、第三者の目から見ても、これちょっとシャレにならないかも…そりゃ辛いよな、なんて笑って見過ごすことのできないエピソードや事件も織り込まれて行く。

そんな「笑いの合間に哀愁」という駆け引きをされるうちに、いつの間にか主人公ジムの魅力に引き摺り込まれてしまう。

不器用な父とおてんば盛りの娘との関係

f:id:kappa7haruhi:20200618020446j:plain

別居中の妻との子、おませな娘・クリスタルとはコンスタントに一緒に過ごす。中年男のジムには理解しがたい年頃の女の子であり、その上クリスタルはかなり個性的でエネルギッシュ。不器用かつ、ちょっと精神的に弱っているジムには、非常に手に余る。だけど、娘への愛は本物だ。

噛み合わないやり取りの中、ちょっとずつ距離を縮めて行く父と娘。親子だけど、まるで恋愛みたいにじれったく、微笑ましい関係が、観ている者の心をくすぐる。

誰かの死、家族への言えない想い……人生は切ないもので溢れてる

f:id:kappa7haruhi:20200618020506j:plain

冒頭からして、母親の葬儀のシーンである本作。感情の振り幅が激しくなっている状態で多くの人が集う「葬儀」というイベントでは、生々しい人間関係がのぞけて見えたりして現実でだって、オフビートコメディになってしまうこともある……いかに当人たちが心底悲しんでいるとしてもだ。

とはいえ、目の前に現れた「死」というものは、やはり当事者に、哀しみと痛みで強いインパクトを与える。この作品には、複数の死にまつわるエピソードが登場する。本作は、生きていれば何度も出会う「自分以外の人の死」にも、想いを馳せるきっかけになるだろう。

そしていつの間にか距離ができてしまった人たちへの思い。生きていれば伝えられる、でも死んでしまえば二度と伝えられない。偶発的に伝えることになったり、伝えられずに終わり後悔することになったり……。

ああ、人生は切なさでいっぱいだな、と観終えた後に、なぜか温かい気持ちで呟くことができる。オフビートコメディながら、そんな愛に溢れた作品だ。

作品ニュース

短編も公開中

本作のオープニングシーンの元となった、2016年サンダンス映画祭短編グランプリ受賞の12分の短編を公開中(ただし、日本語字幕はナシ)。以下のツイート内のリンクから見られる。

 

オススメしたい『サンダーロード』

f:id:kappa7haruhi:20200618021551j:plain

  • 距離を縮めていく、父と娘の微笑ましい関係
  • 全編に溢れる心地よいオフビートのセンス
  • 人生の哀愁が詰まってたエピソード

どちらかというと「今人生うまくいってない」という人にオススメしたい、ほろ苦さと愛情溢れる作品だ。

『サンダーロード』作品情報

【あらすじ】
テキサス州の警官ジムが敬愛していた母の葬儀が執り行われる。ジムはその場で母が好きだったブルース・スプリングスティーンの「涙のサンダーロード」を流そうとするが、ラジカセが壊れて曲が流れない。無音の中、口頭で曲を説明しながら涙ながらに踊り出すジム。そして日常に戻っても、警官という仕事でも空回りばかり、すでに恋人がいる妻とは別居中と、全てが冴えない。やがて「葬儀で奇行に走った」ヤバイ男として幼い娘の親権も奪われそうになりながら、壊れゆくジム。そんな中でもぎこちない関係だった娘と、少しずつ親子として距離を縮めていくが……。果たしてジムは愛する娘のヒーローになれるのか?!

監督・脚本・編集・音楽・主演:ジム・カミングス
出演:ケンダル・ファー、ニカン・ロビンソン、ジョセリン・デボアー、
チェルシー・エドマンドソン、メイコン・ブレア、ビル・ワイズ ほか

原題:Thunder Road
配給:ブロードウェイ
<2018年/アメリカ/カラー/92分/DCP>
2020年6月19日(金)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開
<公式サイト>
http:// https://thunder-road.net-broadway.com/

f:id:kappa7haruhi:20200618021737j:plain
f:id:kappa7haruhi:20200618021615j:plain
f:id:kappa7haruhi:20200618021634j:plain
f:id:kappa7haruhi:20200618021636j:plain
f:id:kappa7haruhi:20200618021639j:plain
f:id:kappa7haruhi:20200618021650j:plain
f:id:kappa7haruhi:20200618021653j:plain
f:id:kappa7haruhi:20200618021656j:plain

〔AD〕

(本ページの情報は2020年6月時点のものです。最新の配信状況は U-NEXT サイトにてご確認ください。)

〔AD〕

(本ページの情報は2020年6月のものです。最新の配信状況は U-NEXT サイトにてご確認ください。)

<