80年代文化統制下のレニングラードを舞台に、ロシアの伝説的なロックミュージシャン、ヴィクトルとマイク、その妻ナターシャの三角関係を絡めた、半分実話・半分創作のユニークなストーリー。モノクロ映像にポップなイラストを絡めたミュージック・ビデオ風のミュージカルシーンも楽しめる。豪華なロックスターたちの名曲で彩る、青春バイオグラフィー!
2020年7月24日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開
ペレストロイカ前夜、閉ざされたソ連の“ロック・ミュージック”
80年代のソ連では、厳しい文化規制の中でも、ロシアンロックが育っていった。拠点となったのが「レニングラード・ロック・クラブ」。共産党青年部の監視のもと、観客が静かに座ってロックミュージックに耳を傾ける、という奇妙な光景だ。当時のソ連では、ロックは優れた芸術でなくてはならなかったのだ。
当時は、物理的にも満たされていない。レコードは出回っておらず、音源を聴くのはオープンリール。フリーマーケットでは手書きのデヴィット・ボウイの似顔絵が売られている。
そんな中でも優れた才能は、チャンスを掴んで育っていく。本作メインの登場人物は、80年代にレニングラードのアンダーグラウンド・ロックシーンで活躍していた「ザ・ズーバーグ」のマイク、そして国民的ロックバンド「キノ」のヴィクトル・ツォイ。どちらも早逝してしまったが、実在したミュージシャンだ。
作品では、少し年長のマイクはベテランミュージシャンとして登場し、若手のヴィクトルが世に出ていく時代が描かれている。
監督のキリル・セレブレンニコフが本作を編集したのは、ある容疑で自宅軟禁されている最中だったという。まさに”閉ざされた”生活の中で、完成された作品だ。
ミュージック・ビデオのようなキュートでポップな映像
本作には数々のロックナンバーが登場する。メインで描かれているミュージシャン2人、マイクの「ザ・ズーバーグ」やヴィクトルの「キノ」の楽曲ももちろんあるが、T・レックスやトーキング・ヘッズ、イギーポップ、デヴィッド・ボウイら、西洋のロックスターの名曲が、半ばミュージカルのように突然街中で歌われる。
それもたまたま乗り物の中に居合わせた老人がコーラスをし、歌詞も英語というユニークさ。“第四の壁”を破る狂言回しの男が現れ、抑圧された世界を開く。
これらのシーンには落書きのようなアニメーションや文字が弾け、モノクロ映像の中に突然色が現れ、ポップなミュージック・ビデオのように楽しめる。
実話じゃないけど……初恋のような淡い恋と三角関係
ベテランミュージシャンのマイクと、彼を慕うコリア系ミュージシャンのヴィクトル。マイクはヴィクトルの若い才能を理解し、世に出ていけるよう引き上げてくれる。2人は信頼しあう兄貴分・弟分で、素晴らしくいい関係だ。
しかし、やっかいなことに、マイクの妻ナターシャが、ヴィクトルと惹かれ合ってしまう……ナターシャはヴィクトルに恋しながらも、マイクへの深い愛も決して捨てられない。挙げ句の果てに「ヴィクトルとキスしたい」などとマイクに告白してしまう。
はっきりしないまま、3人が揺れ続ける恋模様。この関係がみずみずしく作品を彩っているのも本作の魅力。
ちなみに、この恋愛部分は創作であり事実ではないとのこと。マイクの妻で、存命であるナターシャことナタリヤ・ナウメンコが、本作撮影時のインタビューで「ヴィクトルとの間にあったのは、あくまでも友情」と明言しているそうだ。
作品ニュース
MV風ミュージカルシーンサンプル
ツイッター公式アカウントで、MV風シーンを公開している。「モッタイナイから初見は劇場で…」という方はクリックしないようご注意。
最高なんだ‼️
— 2020/7/24公開 映画『LETO -レト-』 (@2020_leto_movie) 2020年7月9日
とにかくキュートで最高なんだよ‼️
『#LETOレト』本編映像キター🤟#イギーポップ 「#パッセンジャー」だっ🚌
絶妙なMV感とカヴァーがとにかく最高なんだよっ😍#ヴィクトルツォイ#ユ・テオ #유태오 #イチャイチャが果てしない pic.twitter.com/XnMUEbAMo3
魅惑のカヴァー曲たち
公式webページの「ABOUT THE MOVIE」を開くと、ミュージックリストが掲載されていて、リンクから全曲サントラの一部分を聴くこともできる。以下に楽曲リストの一部を紹介する(ズーパーク、KINOのカヴァー曲もあり)。
「Broken-Hearted blues」by T・レックス
「サイコ・キラー」byトーキング・ヘッズ
「I am Waiting for the Man」by ヴェルヴェット・アンダーグラウンド
「パッセンジャー」by イギー・ポップ
「チルドレン・オブ・ザ・レボリューション」by T・レックス
「20センチュリー・ボーイ」by T・レックス
「パーフェクト・デイ」by ルー・リード
「アッシェズ・トゥ・アッシェズ」by デヴィッド・ボウイ
「すべての若き野郎ども」by モット・ザ・フープル
オススメしたい『LETO -レト-』
- 80年代、文化統制下にあった、ロシアのロックシーンを知る
- ユニークなMV調のミュージカルシーン
- ヌーヴェルバーグのような恋の三角関係
- 実在のミュージシャン、マイクとヴィクトルの友情
『LETO -レト-』作品情報
【あらすじ】
80年代前半、西側(資本主義)諸国の文化がタブーとされていたソ連時代のレニングラード。そんな中でも、西側ロックスターの影響を受けたアンダーグラウンド・ロックが花開こうとしていた。
ある日、バンド「ズーバーグ」のリーダーマイクの元に、ロックスターを夢見るヴィクトルが訪ねてくる。ヴィクトルの才能を見出したマイクは彼を助け、共に音楽活動をするようになるが、マイクの妻・ナターシャとヴィクトルの間には、淡い恋心が芽生えてしまう……。
監督:キリル・セレブレンニコフ
出演:ユ・テオ(歌、セリフは吹替)、イリーナ・ストラシェンバウム、ローマン・ビールィク ほか
原題『LETO』/英題『LETO(The Summer)』
日本語字幕:神田直美/原語監修:松澤暢子
配給:キノフィルムズ/木下グループ
後援:駐日ロシア連邦大使館、ロシア連邦文化協力庁、ロシア文化フェスティバル組織委員会
<2018/ロシア・フランス/スコープサイズ/129分/モノクロ・カラー/英語・ロシア語/DCP/5.1ch>
2020年7月24日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開
©️HYPE FILM, 2018
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