『トータスの旅』の永山正史監督による、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭グランプリ次回作支援作品。出演者はクセモノぞろいで、主演は役の大小にこだわらず数多くの映画作品に出演し、レジェンドになりつつある川瀬陽太。その主人公を脅かす存在に、あらゆる特殊な役柄を難なく飲み込んできた、津田寛治。ニートな中年男が青春を謳歌する田園生活から一転、主人公が追い込まれていく後半の展開が刺激的な、ハイブリットムービーだ。
2019年3月23日(土)新宿K’s cinema ほか全国順次公開
五十路男の「子猫のような可憐さ」
都会から引っ込んで、無職のまま呑気に田舎暮らしを楽しむ、独身の中年男・タカシ。釣竿をたらしては野山に遊び、のんびり気質でお人好し。さまざまな役を演じてきた川瀬陽太だが、今回はまるで本人そのまま、とばかりにマッチしている。
目標もなくだらしなさそうではあるが、タカシは認知症の叔父の世話を嫌がらずにする、面倒見のいい一面もある。その代わりに居候させてもらって、マイペースに暮らしているのだ。
そんなタカシの田園生活を、青春へと転化させる中年仲間が2人もいる。ずけずけとモノを言う御都合主義の従兄弟・ミツアキ役には、演劇界で名を馳せてきた谷川昭一朗。スーパーの試食品を食い尽くす厚顔の幼馴染のショウ役に、やはり舞台経験を積んできた鶴忠博を配役。気が置けない五十路のオジさんトリオである。
この五十代のオジサン3人を、予告編では「子猫のようにじゃれあう」と、はばかることなく”可愛いアピール”しているのだが、そこに嘘はない。ことにタカシの寛容さ・優しさ・情けなさのバランスは絶妙で、本作は「中年男とは実はキュートな存在である」という認識を広めることになるかもしれない。
一方で津田寛治だけは、五十路の可愛さを放棄し「これぞ津田寛治」といった変態的な味わいを発揮。終始、不気味感の漂う慇懃無礼な人物像を浮かび上がらせている。
ボンゴと口笛と昭和歌謡と
本作には懐かしの歌が多く流れる。『バラが咲いた』『見上げてごらん夜の星を』『星影のワルツ』…なぜか劇中で、主人公が軽快にボンゴを叩きながら、歌い上げ口笛を披露するのだ。今まで、あらゆる作品で、ギターやウクレレで弾き語るという人の登場は、星の数ほどあっただろうが…なぜか本作の主人公はボンゴである。
ポコポコと心地よく響く打楽器、これは単に牧歌的な暮らしを彩る小道具なのだろう…と高を括ってはいけない。人から愛用された物には、持ち主の魂や念が宿ることがあるという。ことに音楽と共にある道具となれば、なおさらだろう。この楽器は後半で重要なアイテムとなっていく。
それにしても、ボンゴの響きとともにある川瀬陽太の歌う昭和の楽曲の数々が実に印象的。この歌声は、本作のイメージと共に観る者の記憶にしっかりと刻み込まれるだろう。
天然vs.天然! 外来種だって天然モノ
当然ながら本品は、タカシたちの楽しい中年の青春の日々だけでは終わらない。描かれる「天然」が、もう一つある。突如都会からやってきた一家、父(津田寛治)、母(三枝奈都紀)、娘(秋枝一愛)だ。おしゃれなナチュラルライフを実践しているこの三人家族。母はマクロビ食を愛し抜き、父は「古民家カフェをやるのが妻の夢」と熱く語り、妻と娘に依存している。不自然な闇が見え隠れしつつ、こっちの一家も「天然」派なのだ。
都会からやってきた「外来種」とも言えるこの無添加一家が、タカシの悠々自適な田園生活を少しずつおびやかす存在になっていく。「天然」対「天然」。この対立が、平和な田舎の風景を一転させ、やがて、おそらく誰にも予想できないであろう方向へと転がっていく。ジャンルすらわからなくなるスリリング展開に、多くの人が手に汗を握るだろう。
作品ニュース
ほろ酔い対談@新宿ゴールデン街」公開中
本作公開記念の、川瀬陽太&津田寛治・対談ムービーがアップされている。場所が新宿ゴールデン街なのもいい感じだ。
とつぜんですが公開!
— 永山正史「天然☆生活」3月23日〜K’s cinema (@NagayamaTds) March 8, 2019
ゴールデン街でこんな楽しいことしてました。川瀬陽太×津田寛治のほろよい俳優談議ムービー。
演技論や現場あるある等、90年代からやってきた二人だからできるお話。笑えますが「俺まだ逃げてていいのかな」という津田さんの言葉にはどきっとしました。https://t.co/cWetFCHpXb pic.twitter.com/ELlnd8lpw3
お得な前売り券発売中
東京のメイン上映館である新宿K’s cinema でもお得な前売り券が発売中。
制作・宣伝も手作り感のある本作は、通常の窓口のほか関係者の手売りも告知されている。プレゼントのステッカーは、入場時もらえるシステム。ステッカーは3種類あり、作品に登場する重要アイテムのボンゴを前面に押し出したデザインもあり。
『天然☆生活』前売り券、当日料金から500円割引の1300円で、添付のステッカーも付いてきます(入場時に1枚選んでください)。
— 永山正史「天然☆生活」3月23日〜K’s cinema (@NagayamaTds) February 3, 2019
ケイズシネマ窓口、提携劇場窓口、映画公式サイト、各プレイガイド、監督とその母(笑)、関係者、キャストから購入できますよろしくお願いします。https://t.co/eKmirQHFeR pic.twitter.com/JG4Iyz2hT2
オススメしたい『天然☆生活』
- 五十路の中年男たちがじゃれあって青春を謳歌する可愛らしさ
- 茅葺き屋根も美しい、緑いっぱいの田園風景
- ボンゴを叩きながら川瀬陽太が歌い上げる昭和の名曲の数々
- 津田寛治らが演じる、外来種ナチュラリストの侵略ぶり
- なぜか某分野のスペシャリスト・百武朋が参加する展開へ
映画界から愛される川瀬陽太主演とあって、あらゆる方向から楽しめて、仕掛けが満載な一本。「観ていない人には決して話してはいけない」顛末・結末はぜひ映画館で楽しんでほしい。
『天然☆生活』作品情報
【あらすじ】
のどかな田舎町で、認知症の叔父の介護をしながら、茅葺き屋根の古民家に居候暮らしをしているタカシ(川瀬陽太)は五十歳独身。叔父が亡くなると、その息子であるミツアキ(谷川昭一朗)が戻って来て、幼馴染みのショウ(鶴忠博)も加わり、独身中年男3人で喧嘩したりじゃれたりしながら楽しい日々を過ごすようになる。そんな矢先、東京からナチュラリスト家族が引っ越してきて、古民家カフェを開く夢や、ナチュラル思想を異様な熱意で語るり始める。やがて一家は、タカシが暮らす古民家に目をつけ…。
(ゆうばり国際ファンタスティック映画祭グランプリ 次回作支援作品)
監督・編集:永山正史
出演:川瀬陽太(『64』『菊とギロチン』)、津田寛治、谷川昭一朗(『たまゆら』『モリのいる場所』)、鶴忠博(『サムライガール21』)、三枝奈都紀、秋枝一愛、岡田亜矢、関口篤、はやしだみき、百元夏繪、才籐了介、諏訪瑞樹、木村知貴、満利江、湯舟すぴか、長尾卓磨 ほか
製作:弥富圭一郎、永山正史
製作協力:ゆうばり国際ファンタスティック映画祭
脚本:鈴木由理子、永山正史
音楽:Eriya Ishikawa
特殊造形:百武朋
配給:Spectra Film(永山正史)
<2018年/日本/96分/DCP/16:9 >
英題:BEING NATURAL
2019年3月23日(土)新宿K’s cinema ほか全国順次公開
©TADASHI NAGAYAMA
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(本ページの情報は2019年3月時点のものです。最新の配信状況は U-NEXT サイトにてご確認ください。)