東京・ミニシアター生活

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【6/29公開】『ペトラは静かに対峙する』仕掛けられた負のスパイラル! 人間の濃い闇を、静寂の中に映し出す怪作

f:id:kappa7haruhi:20190624154756j:plain出生の真実を知るために、ある彫刻家に近づいた女性が巻き込まれていく、悪夢のスパイラル…スペイン北東部のカタルーニャ地方を舞台に、いくつかの秘密から生まれた負の連鎖が、ギリシャ悲劇のように人々の運命を狂わせていく。時系列が前後する中で、家族の抱える秘密が少しずつ明かされるミステリー。『マジカル・ガール』で、ゴヤ主演女優賞を受賞したバルバラ・レニーが、再び深い闇に身を投じた怪作!

2019年6月29日(土)新宿武蔵野館アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開

”秘密”が作り出す、圧倒的な負のスパイラル

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母に出生の秘密を明かしてもらえなかった、画家を志すヒロイン・ペトラ。しかし自分の実の父親が、著名な彫刻家・ジャウメである可能性を知り、ジャウメの邸宅へ、共同制作を希望する画家として現れる。ペトラの真の目的は、ジャウメが実の父親であるのかを確かめるためだが、ジャウメや家族、周りの人々にはそのことを明かさない。

秘密から始めたペトラと人々の関係。そしてこの後も物語にはいくつかの「秘密」が現れ「秘密」によって、あらゆる人の運命がかき乱されていく。すでにあった秘密、起こってしまう秘密…。そしてペトラ自身が、凄まじい負のスパイラルに巻き込まれていくことになる。

この負のスパイラルの中心には、息子からも”冷酷”と評されるジャウメが常に存在する。あるいは悲劇を作り出し、操作しているように見えるかもしれない。そんなジャウメを、ペトラは静かに受け止めるのだが…。

第2章から始まる!パズルのピースをはめるような見事な章立て

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サスペンスとミステリーの違いは、様々に論じられるかもしれないが、ジャンル分けするのには、ひとつの考え方がある。サスペンスは、真実がわかっている中でスリルある状況や展開をみせるもの。一方ミステリーは「謎解き」であって、真実を求めて観客も登場人物とともに迷宮をさまようもの、という違いだ。

本作は章立てされている。そして冒頭が「第2章」から始まる。実の父かもしれない彫刻家のジャウメに、主人公ペトラが会いにきた、という状況だ。ここでペトラは、ジャウメの厄介な人柄を知ることになる。後に、観客はペトラがジャウメに会いに来るきっかけとなるエピソード「第1章」を観る…という流れで作られている。

この「結果を先に知り、そこに至るまでの経緯を後から観る」という構成は、再度繰り返される。前出の考え方で言えば本作は「サスペンス」だ。

だが、終わりの方で、全てを踏襲するような、”ある事”がひっそりと静かにやってくる。パズルのピースが揃った時、作品全体は、つまりミステリーになるのだ。

出演者&スタッフには、不穏な空気をまとう顔ぶれが勢ぞろい

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怪作と呼ばれるにふさわしい本作は、衝撃的な出来事がいくつも起こる。まず、ペトラの父かもしれないという彫刻家・ジャウメが、やる事・言う事・考え方とも素晴らしくエグいのだ。

そして常に、作品の奥底に禍々しさが脈々と流れ続ける。「静かに対峙する」という邦題が的を射ているように、決して激しくエキサイトはしない、暗く不穏な空気だ。ジャウメというキャラクターの存在自体はもちろんだが、俳優と音楽の力も大きいだろう。

ヒロイン・ペトラ役には『マジカル・ガール』(2014年/カルロス・ベルムト監督)で、耐えることで悲劇をより増幅させるヒロインを演じた、バルバラ・レニー。今回『マジカル・ガール』とは全く違うキャラクターではありながら、挑みながらもやはり”耐える”ヒロインとして業(ごう)をまとい、存在感を放つ。

そしてジャウメの妻役には「名誉ゴヤ賞」を受賞している『オール・アバウト・マイ・マザー』(1999年/ペドロ・アルモドバル監督)のマリサ・バレデス。さらにくだんのジャウメを演じているのは、顔立ち・体つきからその悪意が匂い立つような老俳優なのだが…彼の経歴については、ここで詳細を記すのは控えておく(知りたい方は公式webをご参照ください!)。

そして音楽は『アンチクライスト』(2011年/ラース・フォン・トリアー監督)『メランコリア』(2012年/ラース・フォン・トリアー監督)のクリスチャン・エイネス・アンダーが担当。不穏な空気は音楽からもやってくる。 

作品ニュース

初日来場者にプレゼントあり

6月29日(土)初日限定で、新宿武蔵野館アップリンク吉祥寺でプレゼントがもらえます。

 

 

オススメしたい『ペトラは静かに対峙する』

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  • 彫刻家・ジャウメが元凶となる、恐るべきエピソードの数々
  • バルバラ・レニー(『マジカル・ガール』)が再び耐えるヒロイン役
  • カンヌ常連の監督、ハイメ・ロサレスが仕組むパズルのような構成
  • 哀愁と優しさに満ちたカタルーニャ地方の風景
  • 悲劇に見舞われた人々のひたむきな想いと思わぬカタルシス

ギリシャ悲劇的かつ、ホラー並にゾッとする展開があるので、美しいものだけを見つめていたい人にはおすすめできないが、逆に、闇を覗くことを厭わない人にはぜひ見届けてもらいたい。ラストまで観れば、予想外の後味が待っているかもしれない。

『ペトラは静かに対峙する』作品情報

【あらすじ】
カタルーニャ州の彫刻家・ジャウメの邸宅に、画家ペトラがやってくる。「作品制作をする」と告げるが、ペトラの真の目的は、ジャウメが実の父親なのか確かめること。ペトラはジャウメの妻マリサや、ジャウメの息子ルカス、家政婦テレサらと親交を深めるが、ジャウメが傲慢で冷酷な人物であることを悟る。そして家政婦テレサが謎の死を遂げたことをきっかけに、ペトラは一家の悲劇の連鎖に巻き込まれていく…。

監督:ハイメ・ロサレス
出演:バルバラ・レニー、アレックス・ブレンデミュール、ジョアン・ボティ、マリサ・バレデス ほか
原題:Petra
配給:サンリス
<2018年/スペイン・フランス・デンマーク/スペイン語、カタルーニャ語/107分/カラー/シネマスコープ/5.1ch/PG-12>
2019年6月29日(土)新宿武蔵野館アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開
©2018 FRESDEVAL FILMS, WANDA VISIÓN, OBERON CINEMATOGRÀFICA, LES PRODUCTIONS BALTHAZAR, SNOWGLOBE

www.senlis.co.jp

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(本ページの情報は2019年6月時点のものです。最新の配信状況は U-NEXT サイトにてご確認ください。)

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