東京・ミニシアター生活

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【4/3公開】『在りし日の歌』一人っ子政策、改革開放…激動の中国で共に歩んだ夫婦の半生

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この数十年間で、大きく変貌した中国社会。80年前年には「一人っ子政策」の施行、国内体制の改革・対外開放政策(改革開放)の動きがあった。そんな激動の中国を背景に、共に生きてきた夫婦の、2010年代までの30年間を描く壮大なストーリー。

厳しい社会体制のなかで生きることの苦難や、中国近代史の衝撃的な場面が胸に突き刺さる一方で、シンプルな夫婦愛の尊さ、友情の温かさに包まれる感動作だ。

第69回ベルリン国際映画祭で、最優秀男優賞&女優賞をW受賞

2020年4月3日(金)より角川シネマ有楽町Bunkamuraル・シネマほか全国順次ロードショー

「一人っ子政策」が起因する衝撃的な出来事と悲劇

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教科書にも登場する、1979年から始まった中国の「一人っ子政策」。この政策は2015年と割と最近終焉を迎え、今ようやく振り返ることが許されてきた(ような、許されていないようなところもある)。

他国のことだし「兄弟姉妹がいないのは寂しいかもなあ」という程度にしか認識してこなかった人も多いだろう。しかし「一人っ子政策」には非常に多くの問題がある。2019年に『一人っ子の国 (One Child Nation)』というドキュメンタリー映画が発表され、その悲劇性や恐ろしさがクローズアップされた。

2人目の子ができないように不妊手術が行われることがあったり、2人目ができた場合にはどうするのか、という問題が発生したり。そしてそれを国が主導でコントロールするとどういうことが起きるのか?……本作には、この問題が二重三重に辛い形で登場する。 

また、80年代には多くの失業者を出した「改革開放」の流れもあり、ヤオジュンとリーユン夫婦の暮らしを通し、まるで体験するかのように、この時代の中国社会に生きた人々の、激動の人生に触れることができる。

大きな社会背景を受け、小さな家族の物語でありながら「壮大な叙事詩」と評価されていることにも頷ける作品だ。

家族ぐるみの交流。善意が裏目に出てしまって…

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 同じ工場で働き、息子の誕生日まで一緒。主人公のヤオジュンとリーユン夫婦は、世代も家族構成もそっくりなインミンとハイイエン夫婦と、家族ぐるみで付き合いをしていた。

しかし、当時の特殊な社会体制、成り行きや運命が加わったとき、インミンとハイイエンの家族は、ヤオジュンとリーユン夫婦に悲劇をもたらす存在になってしまうことも。しかも、そこには悪意がないどころか、善意すらあるという皮肉。本作は、一夫婦の関係だけでなく、この夫婦同士の友情も描いている。

その交流の中で、何度も口にされるのが中国版「蛍の光」だ。もともとスコットランド民謡であるこの曲には、友情を思う内容の歌詞がついていて、本作では何度もこの曲で変わらぬ友情を思うシーンが登場する。中国語版の歌詞の最後は「友誼地久天長」。これは「永遠の友情」を意味し、原題にも使用されている。

「蛍の光」と言えば、我々は日常で“閉店の曲”として耳に馴染んでしまっているが(失礼!)、本作の中では友との関係を喜び、あるいは古き友情に思いを馳せており、その心情がじんわり染みるように響く。きっと改めて素晴らしい曲だと感じるだろう。

悲しく辛い日々も、振り返ると美しく心に響く

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この10年、わが国を振り返っても、大きな災害・国を揺るがす大事件は、数多くあった。そういった出来事を含めて、人生に打ちのめされるほどの大きな悲劇が起きると「家族」という関係は壊れてしまうことも。一家離散に結びつくこともある一方で、それぞれが苦難を乗り越え、関係を継続する家夫婦もある。

そして人生で最も辛い出来事を、いつか思い出として語れるようになったころ振り返れば、辛く悲しい出来事の合間合間に、誰かの優しさや人の温もりが垣間見えることがあるだろう。

この作品には、そんなヤオジュンとリーユン夫婦の人生を内側から生きたような、驚くほどの瑞々しさとリアルさに満ちている。

作品ニュース

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養子の少年役に注目

中国版ジャニーズとも言われる人気アイドルグループ「TFBOYS」のワン・ユエンくんの出演にも注目が集まっている。

 

オススメしたい『在りし日の歌』

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  • 80年代の驚くべき中国社会をリアルに感じる
  • 激動の30年間を共に生きた夫婦の心情を味わえる
  • 映画賞も受賞、夫婦役主演2人の心打つ演技
  • 時間を遡る構成で、謎が解き明かされる仕掛けも

どことなくユーモアラスで直情的な夫役のワン・ジンチュンと、控えめながら情熱を内にたぎらせる妻役のヨン・メイの演技は素晴らしく、観ている間中、常に心を動かされるだろう。

また時代を行き来する構成も効果的で、ミステリーのように謎が解き明かされる。そのたびに、観る者の胸にも様々な思いがよぎる。

『在りし日の歌』作品情報

【あらすじ】
1994年の中国の地方都市。国有企業の工場で働くヤオジュンとリーユン夫婦は、インミンとハイイエン夫婦という親しい友人家族もいて、幸せに暮らしていた。しかしある日事故で、たった1人の愛息シンシンを失ってしまう。

やがて悲しみを抱えたまま、住み慣れた故郷を離れることになったヤオジュンとリーユンは、見知らぬ港町へと移り住むが、そこではあの幸せな日々を取り戻すことのない暮らしが待っていた……。

監督:ワン・シャオシュアイ
脚本:ワン・シャオシュアイ、アー・メイ

出演:ワン・ジンチュン、ヨン・メイ、チー・シー、ワン・ユエン、ドゥー・ジャン、アイ・リーヤー ほか

撮影:キム・ヒョンソク
音楽:ドン・インダー

原題:地久天長 英題:SO LONG, MY SON
配給:ビターズ・エンド
<2019年/中国/185分/カラー/1.85:1>
2020年4月3日(金)より角川シネマ有楽町Bunkamuraル・シネマほか全国順次ロードショー

www.bitters.co.jp

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© Dongchun Films Production

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