東京・ミニシアター生活

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【10/30公開】『芸術家・今井次郎』知る人ぞ知るアーティストJIROXの表現したものとそれを愛する人々の記録

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今井次郎って誰だろう? と思う方も多いだろう。今井次郎は別名「JIROX(ジロックス)」とも名乗っていた表現者である。2012年還暦になった年、悪性リンパ腫の治療に専念するも、惜しくも亡くなってしまった知る人ぞ知る存在だ(ちなみにウキペディアページは存在する)。闘病中亡くなる直前まで楽曲、イラスト、回文のほか独自の「ミールアート」などの作品を作り続け、自らを作品にした画像も残している。これは芸術家・今井次郎の魅力がたっぷり詰まったドキュメンタリー映画だ。

2021年10月30日(土)よりユーロスペースほか全国順次公開

トリビュートライブに集結した今井次郎を愛する人々

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このドキュメンタリー作品には、今井次郎の作った作品の写真や生前のパフォーマンス映像のほか、本人の逝去後に行われた、1日限りの「今井次郎トリビュートライブ」の映像も収録されている。

この「今井次郎トリビュートライブ」には、彼と縁の深かったミュージシャンやパフォーマーが集結。ユニットで一緒に演奏していた、あるいは今井次郎が作った楽曲を演奏、さらには彼のパフォーマンスを再現するコーナーもあり、大団円では、出演者全員で今井次郎の愛嬌溢れるパフォーマンスを演じ、ゆるくも圧巻という不思議な空気が漂っている。

この日のライブ出演者は、長きにわたり共に表現活動をしてきた劇団「時々自動」メンバー、元「たま」で今はパスカルズやソロで活躍するミュージシャン石川浩司、串田和美や栗山民也演出の舞台音楽も手がける音楽家の国広和毅ら。ほかにもテニスコーツや近藤達郎、向島ゆり子、佐藤幸雄ら熟練のミュージシャンが登場。

こうした顔ぶれの表現者と、今井次郎は多くのパフォーマンスを演じ、作品作りをしてきた。またトリビュートライブには出演していないが、UAがヴォーカルを務める今井作曲の楽曲を作品のなかで聞くことができる。

日常生活と表現の曖昧な境界線

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今井次郎の作品やパフォーマンスに初めて触れた人の多くは、おそらく直感で“プリミティブ”あるいは“超オリジナル”といった印象を受けるだろう。キャベツに本物の狂気をぶつけるパフォーマンスも、歌い踊りながらマッコリのペットボトルで1時間頭を叩き続けるような演奏スタイルも、全て本人の中から天然で湧き出していている“何か”だ。そのとき今井次郎がやっていることが何なのかと問われれば「表現」あるいは「パフォーマンス」ということになる。

そんな風に、生前の今井次郎は、日常生活と表現の境界が曖昧だったのではないだろうか。

本作の中で、今井次郎は青年になってから「芸術家」という雰囲気を漂わせるようになったのだと語られていた。表現に100%の力で取り組むうちに、寝ていようと食事をしていようと、ぼんやりしていようと、今井次郎の人生が丸ごと表現とイコールになったのではないだろうか。

作り続けたのは「やくにたたないたいせつなもの」

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かわいらしさ、狂気、高尚さ、美しさ、愛情、残酷さ…芸術のあらゆる要素が込められているにも関わらず、今井次郎の作品は「やくにたたないもの」ばかりだ。

造形物や絵画の材料も買ってきたりしない。ダンボールや針金など、ほとんどが「そこらへんにあるもの」「拾ってきたもの」だったりする。そんな材料で、徹底して「決してやくにたってはいけない」という佇まいの作品ばかりを描き、作った。

そうやって作品を作ることは、おそらくとても楽しかったのだろう。魅力溢れる「やくにたたないたいせつなもの」を作り続けた。闘病中も病院食を作品化する「ミールアート」を毎日のようにツイッターにアップし続けた。そうして命の続く限り、芸術家という人生を遊び楽しんだのだ。

作品ニュース

初日と翌日は全員プレゼントあり

公開初日の10/30(土)と翌日10/31(日)にユーロスペースで作品を観た方には、今井次郎作品をプリントした缶バッジがプレゼントされる。

毎回トークと生演奏付きの上映

 

 

オススメしたい『芸術家・今井次郎』

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ようやくコロナ感染者が減少してきたとはいえ、景気の悪い昨今。日々「不要不急」だの「コスパ」だのという言葉が耳に入ってくる。そんなうんざりするような日々とささくれ立つ心は「今井次郎」で潤せばいい。

クライマックスで流れる彼の作った楽曲と怒涛の“ミールアート”のコラボレーションは胸が熱くなる。大切なのは「死ぬまで楽しいこと」だと思わせてくれる。今井次郎ファンになったら「幸せになっちゃおう」と口ずさんでその通り幸せになってしまえばいいのだ。

『芸術家・今井次郎』作品情報

 【作品概要】
2012年に惜しくも亡くなった、知る人ぞ知る唯一無二の芸術家・今井次郎。またの名を「JIROX」。1980年代初頭から音楽による表現を始め、やがて作曲家、ミュージシャン、造形作家、パフォーマーと、さまざまな顔を持つようになり、仲間とのユニットやソロでの活動を続け、独自の世界観を展開。2012年に悪性リンパ腫であることがわかると、闘病しながら数多くの作品を作った。曲や詞を薬の袋に書きつけたり、病院食を「ミールアート」にしたり、入院生活そのものをアートにするかのように半年を過ごした。

本作は、2018年2月に今井の関わったミュージシャンやパフォーマーたちによって行われた「今井次郎トリビュートライブ」の映像を主軸に、今井本人のパフォーマンスの映像、入院生活での作品画像、関係者へのインタビューなどをリミックスした、今井次郎の魅力をたっぷりと味わえるドキュメンタリーである。

監督・撮影・編集:青野真悟 大久保英樹

出演:今井次郎 ほか
ライブ出演:時々自動、佐藤幸雄とわたしたち、ユニマルカ、石川浩司、オジュデュイイルフェボー(国広和毅、河崎純)withモモンガ・コンプレックス、テニスコーツ、とんぷくユニット(向島ゆり子、近藤達郎、久下惠生、いしかわともこ)

企画:桐山真二郎
制作・配給:ドキュメンタリージャパン
<2021年/94分/日本>

imaijiro.com

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(本ページの情報は2020年6月のものです。最新の配信状況は U-NEXT サイトにてご確認ください。)

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